三軒茶屋駅前に「でこ(凸)」というオール500円の串焼き立呑ができたときは、立ち飲みブームに便乗したのかとそれほど気にもとめなかった。当っ ていると聞いたときも、駅前好立地だからだろうとタカをくくっていた。だが、今年3月に駅から少し離れた茶沢通りに「VOCO(凹)」というワイン&ピザ のスタンディングバーをオープンして話題だと聞いて気になっていた。凸に凹、面白いではないか。元々は釜焼きピザの宅配からスタートし、凸が飲食店参入へ の第一歩。 最初はベタな串焼き立ち飲みで三茶デビュー、常連客がついたところで今度は一気にオシャレ路線のバルスタイルへ。フードの客単価は変えず、ワインを 中心としたドリンクで単価アップを目指す。さらに本業の宅配ビジネスのノウハウを活かし、周辺の富裕層をターゲットにケータリングビジネスにも参入、その 拠点としても機能させる。社長の附田国造さんはまだ30歳前だという。柔軟な発想としたたかな戦略、それに凸凹というネーミングに象徴される遊び心。3店 舗目はどんな店名になるか、期待せざるを得ないではないか。 今週の17日(土)、千葉の本八幡駅前にスペイン風バルクラブ「Orench(オレンチ)」がオープンする。私がプロデュースを手伝った店だから、 あまり宣伝したくはないのだが、ここのオーナーの武長太郎さん(一家ダイニングプロジェクト)もまだ30歳前半でしなやかな発想の持ち主だ。地元で「こだ わりもん一家」をはじめ居酒屋やラーメン店を展開している。「居酒屋甲子園」実行委員の1人として、ボランティアで各地を走り回りながら、新業態を立ち上 げた。 私に話が持ち込まれたとき、すでに武長さんは「オレンチ(俺ん家)」というネーミングを決めていた。なるほど、居酒屋「一家」の延長線で業態を考え ればいい。「居酒屋をベースにスペインバルのエッセンスを取り入れる」。これがコンセプトである。スペインバルといっても、本場スタイルの店や突き抜けた スタイリッシュ空間を作ってもこの地元では空振り必至。居酒屋×スペインバルというズラシの手法。近くにお越しの際は是非お立ち寄りください(結局、宣伝 くさくなってしまった)。
コラム
2006.06.15
「改良」と「模倣」と「遊び心」
毎日、「何か面白い業態はないか」「新しいコンテンツはないか」と鼻を鳴らしながら歩いていると、ヒット業態を上手く改良したもの、明らかにフェイクと思われるものを見抜くのも一つの楽しみである。どちらにしても、その立地、物件を活かして当てている店には「遊び心」のセンスがある。
佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。