昨年末、筆者はこの欄に次のように書いた。<2006年はどんな年になるのだろうか。経済、社会背景としては、株価の上昇と金利の上昇が予 測され、景気回復に伴って個人消費をリードする飲食ビジネスはさらに追い風を受けることになるだろう。しかし、業界としては全体が潤うというのではなく、 より顧客主義に立ったコンセプトを展開でき、感性高度型消費志向に対応できるセンスとホスピタリティを発揮できるところが集中勝ちする時代が幕開けするの ではないだろうか。供給側の論理、経営優先の論理にこだわる旧世代発想は時代に取り残される。いわば「感性演出の時代」の到来。ポイントは演出家としての プロデュースと経営(資本)の役割分化だろう。> いま業界は、“物件逼迫”下でのレストラン供給過剰という“超競争時代”(単なる供給過剰下の大競争時代よりも厳しい)を迎えている。人材争奪戦も 激しい。そんな時代にあって、さらに顧客は「感性高度消費志向」にシフトしている。この競争を勝ち抜くには、業態を進化させるパワーとスピード、そして短 期にリピーターになり得る上客を呼ぶプロモーションの“仕掛け”が欠かせなくなってきている。メディアの影響力もすでにメジャー雑誌から、ニッチな口コミ サイトやグルメブログ、SNSに移っている。飲食店がオリジナルなHPをもち、オーナーや料理長、店長がブログを発信するのが当たり前になるだろう。多店 舗化している企業も、店ごとにHPをもつ時代が来るに違いない。ブログ技術の進化がそれを後押しするだろう。 先端的な飲食店はIT技術を導入した顧客管理システム(CRM)を導入し始めている。しかし、技術に溺れることが馴染まないのもこの業界の特質だ。 逆にミステリーショップリサーチのような“属人的”手法で顧客に媚びるのもどうかと思う。では、この超競争時代に有効な顧客対策とは何か?まさにこの課題 が2007年のレストランビジネス最大のテーマになるのではないか。ONE TO ONEの「“ごまかし”が効かない時代」にITシステムをどう取り込んでいくか。いまは同じ客が客単価1,500円の立ち飲みにも、3,000円の居酒屋 にも、そして7,000円のファインダイニングにも通う時代である。自店のファンさえつくれば、業態多様化(マルチコンセプト化)によって顧客囲い込みが できる面白い時代でもあるのだ。2007年は飲食業界“CRM元年”が到来するかもしれない。
コラム
2006.12.28
レストランもメディアも主役が変わる!
いざなぎ景気"を上回る戦後最長の好景気とされた2006年だったが、東京のレストラン・マーケットのこの1年を振り返ると、経済環境とは関係なく"顧客重視"のイノベーティブ、クリエーティブなチームやリーダーがヒット店を生み出し、新しい主役に躍り出てきたといえる。さて、2007年はどんな年になるのだろうか?"
佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。