コラム

二人の業界デビュー”と「伝説への扉」”

東京ミッドタウン開業に話題が集中しているが、その膝元の街場で二人の飲食人が業界デビュー"している。その現場に立ち会った。 "

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。


一人は、大阪の未知インターナショナルを率いる水本弥知秀さん。4月10日、六本木ヒルズからすぐの西麻布3丁目に“和田アキ子の店”「お菜屋  わだ家」を オープンする(一般オープン11日)。経営は和田さんが関係する製作会社だが、物件探しからコンセプト作り、メニュー開発、キャスティング、オープン後の 運営まですべてプロデュースした。昨日、水本さんにオープン前の「わだ家」でお会いし取材した。詳しくはヘッドラインを参照していただきたいが、単なるタ レントの店ではない。和田さん側から「飲食店をやりたい」と企画を持ち込まれたのは1年半前。ようやく和田さん誕生日の4月10日オープンに漕ぎ着けた。 和田さん当人もメニューから器、空間、音楽、トイレまですべてに細かくこだわったという。「とにかくみんなに喜んでもらう、楽しんでもらうと気持ち すごく強く、料理は一品1,000円を超えてはいけないとか、トイレは1回ごとに掃除しなさいとか、細かいチェックが入りました」。あの“アキ子節”がお 客さん代表の視点でビシバシと飛んでくるのだ。それを現場に落とし込み、しかもこの業態をパッケージ化し、FC展開しようという試みである。タレントを冠 した店舗展開で成功している例としては、「ちゃんこダイニング若」「つるとんたん」などがあるが、それに続くヒットとなるかどうか。大きな話題を呼ぶことは間違いない。 もう一人は、まさにミッドタウンのすぐ近くでワインの店「BANQUE(バンク)」をオープンした横川毅さん(【INTERVIEW】参照)。「ぼちぼち」「紅とん」などを傘下に収め拡大一途のヴィア・ホールディングス社長の横川紀夫氏(すかいらーく創業4兄弟の4男)の次男である。兄は「ディーン&デルーカ」立ち上げにも関わり、家具・雑貨ショップを展開しているジョージズ・ファニチュアの 横川正紀社長である。すかいらーく創業家のファミリーは社是ですかいらーくには入れない。しかし、フードビジネス創業者のDNAは毅氏の中に強く存在す る。「美味しい物、本物をゆっくりと味わい、楽しんでいただく。それがフードサービスの原点です。私はそのことに徹底してこだわりたい。それを分かってい ただけるお客さんに通ってもらいたい」と熱く語る口調が印象的だった。 水本さんは30代後半、横川さんはまだ30代前半。こうした若い世代の新しい才能が、閉塞した飲食業界に風穴を開けるかも知れない。そういえば、飲食業界マッチングサイトを運営するアクシュネット(代表・島田明彦氏)が、“飲食店チャレンジャー発掘企画”として「伝説への扉」を打ち上げる。企画の合格者には最大1億円を投資するという。中島武さん、西川りゅうじんさんに加えて、最近業界で“M&A旋風”を巻き起こしているユニマットグループでレストラン事業を統括する業態開発と事業再生のプロフェッショナル、ユニマットキャラバン取 締役の金井伸作さんが発起人をつとめる。筆者が2000年、『アリガット』を創刊したときのブレーンが中島さん、西川さんだった。“時代は回る”という が、また業界が新たなステージに入ったということか。「伝説への扉」がその舞台回しの役割の一端を担うことができるかどうか…。

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