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コラム

飲食店デザイナーたちの「今昔物語」

10月19日オープンの「渋谷SEDE」地下1階の「CRYSTAL BEE HOUSE」。久しぶりに街場レストランをデザインした森田恭通氏がレセプションに現れ、テレビや雑誌の取材攻勢にあったという。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


全テレビ局、25の女性誌が押し掛け、森田氏を“質問攻め”した。話題は店のデザインのことではなく、新妻・大地真央との“ハニーライフ”につい て。隣には“友人”石田純一。さっそくその光景は夕方のテレビニュースに流れた。まさに、森田氏はいまや“時の人”である。その彼をデザイナーに起用した渋谷SEDE「CRYSTAL BEE HOUSE」のオーナー、NKG&ASSOCIATESの 根本和彦社長の仕掛けもたいしたものだ。飲食業界から見れば、森田氏の“芸能界入り?”は業界及び他の店舗デザイナーたちの地位を大いに押し上げる功績を 担ったといえよう。さる建築専門誌の編集者が取材を森田氏に頼んだところ、秘書から「事務所を通してくれ」と冷たくあしらわれたとこぼす。「その事務所は 芸能プロダクションだったんです。昔は直接、電話で話せたのに…」と、その編集者。それだけ“大物”に登りつめたということである。 飲食店デザイナーといえば、名古屋出身の神谷利徳氏(KAMIYA DESIGN INC.代 表取締役)が「20th Anniversary Reception」を10月11日、帝国ホテルで開催した。参加者が200名を超える盛大なパーティーだった。そこで“盟友”ゼットンの稲本健一氏はこ う挨拶した。「神谷さんが偉大なのは、今日、本来はライバルである森田恭通をはじめとするデザイナーの方々が出席していただいていることです」。この日 は、森田氏、小坂竜氏、橋本夕起夫氏、塩見一郎氏、兼城祐作氏など錚々たるデザイナーが参加していた。顔を見せなかった佐藤一郎氏、杉本貴志氏など、“大 御所”たちは三菱地所、三井不動産など大手ディベロッパーが手掛ける商業施設のみならず、海外のホテル・レストランの仕事もこなす存在になった。 東京レストランマーケットで“デザイナーズ・レストランブーム”を引っ張ったのも彼らである。建築の世界ではその“作品性”で一定の評価を受けた彼 ら。しかし、飲食店のデザインは実は彼らにとってすべてではなかった。あくまで自分の作品を発表する“場”であった。私はその彼らの“仕事”を彼らの生き 様から照らし、それをリスペクトした。『ARIgATT』誌に「デザイナーの仕事」の連載ページを設け、彼らをフューチャーした。彼らの手掛ける飲食店を “作品”ではなく“仕事”として取り上げた。まさに、そこから“デザイナーズ・レストランブーム”が巻き起こった。彼らが手掛けるレストランはことごとく 話題になり、客を集めた。 それが、東京の都市開発、商業施設ブームに取り込まれ、街場のレストランより数倍、数十倍のギャラになる商業施設デザインに彼らはこぞって走った。 ディベロッパーたちもサラリーマンだから、彼らに仕事をふっていれば安心である。その結果、どんな現象が起きたかというと、彼らに仕事が集中し、彼らに続 く若手デザイナーが育たなくなったのだ。建築専門誌の編集者たちの中には「彼らが仕事を分け合って、若手に仕事を回さない。それどころか、若手の育つ芽を 潰している」と言う者さえいる。ただ「若手も“作品”と呼べるレベル達しない連中が多いんですが」と付け加える。かつて、このコラムでも「“次世代デザイナー”はどこにいる?」という原稿を書いたが、ここにきて“若手デザイナー待望論”をあえて打ち上げたい。このままでは“デザイナー格差問題”が飲食業界の発展を阻害しかねない。まずは発注者側のディベロッパーさんや飲食店経営者の意識を変えてもらいたいと思うが、どうか。

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