3月14日にはJR東日本グループ・東京圏駅ビル開発の「アトレヴィ五反田」、4月には東急電鉄の「remy gotanda」 という“駅ビル型”商業施設が相前後してオープンするからだ。五反田といえば、駅前よりも少し街中に入った界隈に飲食店が集中している。それも、どちらか といえば新橋のようにサラリーマン男性相手の店が多く、風俗街があることから、これまで女性客には敬遠されがちだった。それでも、少しずつ「お洒落系」 「ガストロ系」が増え、“ミニ恵比寿”的な香りも漂い始めてはいた。 そんな五反田に、JRと東急電鉄は“20代、30代の女性”中心のターゲットのテナントを集めた商業施設をもってくる。まず先行してオープンする「アトレヴィ五反田」は2階にカフェカンパニーが「ワイアード カフェ」が登場。昨年7月に「上野アトレ」に出たから、“アトレ族”のターゲットがカフェカンのコンセプトに合致するとアトレ側が考えているのだろう。上野アトレでは「buri」「バニュルス」もアトレ側の希望で出店したというから、かなりデベ主導でMDが決まっているようだ。 3階以上は3階が式会社サンケイ会館が鮮魚・郷土料理の「瀬戸内」。4階はジェイプロジェクトの「芋蔵」。5階はラムラの 新業態「キッチン ギャラリー」。いずれも、オペレーション力と業態開発力を活かした展開で地力をつけてきた“ニューチェーン”勢である。業績も安定しており、アトレ側から すれば、本音はもう少し旬の企業を誘致したかったのだろうが、“安全運転”を優先したかに見える。「秋葉原アトレ」で躓いた「シェフズV」の教訓が効いて いるのかもしれない。結果として秋葉原を超える魅力はない。五反田エリアの今後のポテンシャルを考えれば、もう少し“未来志向”のリーシングを期待した かった。 一方、「remy」のほうはどうか。東急電鉄が“初の女性ターゲットブランド”として打ち出す商業施設だ。ダイニングゾーンは最上階8階。情報では、ダイヤモンドダイニングのイタリアン業態、サムカワフードプランニングの鉄板業態「TEPPAN 200℃」、渡邉明イートウォークの 「やさい家めい」などの名前が挙がっている。ダイヤモンドダイニングはたまプラーザの「BRASSERIE EMBRASSER」で東急との縁ができた。 サムカワはスペインバルでアトレ出店を狙っていて果たせなかった“駅ビル進出”への執念が実った。渡邉明ブランドは新丸ビル、六本木ヒルズと続く最近の “モテモテブランド”である。アトレに比べたら銘柄選定のセンスはいいかもしれない。 さて、五反田駅ビル開発をめぐるこの“女性客争奪 戦”、肝心の女性客は果たしてどんな反応を示すのだろうか。ベタな街のイメージを変えることは果たしてできるか? いずれにしても、少しずつ変わり始めて いた五反田が、さらに変貌をとげるきっかけにはなるだろう。駅周辺の街場がどう変化していくかということも注目され、今後の出店立地候補として検討してみ る価値があるかもしれない。目黒と大崎が“聖”とすれば、ここはそれに挟まれた“俗”であり、飲食の街としての磁力はあるのだから…。
コラム
2008.02.07
東急VSJRの五反田駅ビル戦争”勃発へ”
1月はJR浜松町周辺に二つの新しい商業施設が誕生して話題を呼んだが、3月から4月にかけて今度は五反田駅周辺が熱くなりそうだ。
佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。