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コラム

外食業界を襲う「二次災害」に負けるな!

「3.11ショック」から1ヶ月が経とうとしているが、首都圏の外食マーケットを「二次被害」が襲っている。恒例行事の花見や祭りまでをとりやめる「過度な自粛」に加え、福島第一原発事故が引き起こす「風評被害」。飲食店はそれにどう対処すべきか。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


夏までは「計画停電」がなくなる見通しとなり、少しは街に人が戻り、積極的に「外食をしよう」という動きが出てきたものの、飲食店の売り上げが震災前のレベルに戻ってくることは難しい。震災前から飲食店の経営環境は厳しいものがあった。今回の震災によって、表現は悪いが「人々から必要とされる店とそうでない店」がふるいにかけられたのではないだろうか。ここ10年を振り返ってみると、BSE、リーマンショックによる2度の淘汰の嵐が過去にあったが、今回の「3.11ショック」はそれを上回る規模で倒産、廃業が出ることは間違いないだろう。とくに、福島第一原発の状況が予断を許さないことが傷を深くしている。「過度な自粛」ムードに加え、原発事故が引き起こす“疑わしくは食せず”といったような「風評被害」は長期化、深刻化しそうである。こうした「二次災害」に対し、飲食店がとるべき防衛策とは何だろうか。 一つは、後ろ向きだが、思い切ったスクラップ&ビルドを行い、小さいながら強い組織に生まれ変わって、この難局を乗り切っていくことだ。不採算店は整理し、贅肉を切り落とすいい機会だと割り切ることが重要だ。もう一つは、自分たちのもつ「強み」を活かして、軸をぶらさず、いまのお客さんの期待に応える努力を怠らないこと。例えば、神田の「ヴィノシティ」は、震災後も予約で満席を続けている。オーナーの藤森さんほか、ソムリエ仲間が三人で開いた店だが、震災後も朝の5時までオーナー自ら店に立ち、接客に手を抜かない。また、築地と青山でレストランをやっているデリシーの藤田さんは、「風評被害に負けるな」と福島県産野菜に力を入れている。震災前から取引のあった現地の野菜農家まで出向き、問題のない野菜を直接仕入れ、「福島の野菜農家を救おう」というキャンペーンを張って顧客から支持を得ている。この二人のオーナーとも、「お客さんに喜んでもらう、できるだけ普段どおりの営業をすることが常にベスト」と言っている。 もちろん、大きな話をすれば、個人消費を戻さないと日本経済がダメになる。個人消費を担っている「外食」を元気にしなければ、「経済」は回らない。経済が回らなければ、復興支援にも寄与できない。「経済を回すためにも外食を!」ということだが、大事なのは「人々の心を明るく、前向きにする」ことではないか。そのための「場」として飲食店、レストランの役割をを見直すべきなのだ。HUGEの新川社長が言っているように、「レストラン」の語源は、ラテン語のレスラーレで、「良い状態にする」「修復する」という意味。人々の心が明るく、前向きになり、活気か回復してくれば、おのずと経済が回り始める。人が外食して元気になれば、店もよくなるし、街も活性化する。人、店、街を元気にする好循環こそが、「二次被害」を食い止める唯一の道ではないか。そのためには、一つひとつの飲食店が、普段どおりに笑顔を絶やさずお客さんを迎えることである。

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