コラム

「低価格居酒屋」最終戦争の行方は?

「低価格居酒屋ブームは2011年も続くのか?その競争先に何があるのか?」。昨日も某テレビ局から、このような取材が入った。そろそろ飽きられてきたとも見られる低価格居酒屋マーケットはどこへ行くのか?

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。


 12月2日のTV東京「カンブリア宮殿」に、均一低価格ブームを仕掛けた三光マーケティングフーズの平林実社長が登場する予定だが、それが証券アナリストたちから注目されているように、外食業界の転換点として、「低価格居酒屋のこれから」が大きな焦点になっている。12月1日付の「日経MJ」紙には、三光の「金の蔵 Jr.」がランチ時にドリンクバーを置いたり、コロワイドの「うまいもん酒場 えこひいき」がメニューを頻繁に変えたりと、価格以外の切り口で集客アップを図り始めた例を取り上げていた。三光の仕掛けが始まってから1年、ワタミの「仰天酒場 わっしょい」やレインズの「ぶっちぎり酒場」など大手チェーンの追随も増えて競争が激化し、すでに「低価格居酒屋」は飽和状態になっており、客離れ現象が始まったという見方が増えている。 「低価格居酒屋」は「オペレーションの効率化」と「値段なりの品質」で成り立っており、これが強みだった半面、客から飽きられやすいという弱みに変わってきたのではないか。結局、顧客にサプライズを与えるためには、より低価格で品質を上げるという手法しかなく、その戦いの中で抜け出したのは、客単価1,600円を打ち出した養老乃瀧の「一軒め酒場」であり、創業以来、まったく軸がぶれない280円均一の「鳥貴族」である。こうした大手居酒屋チェーンの低価格競争の一方で、2011年はバイキングスタイルが流行るという見方も出てきている。その究極の業態が横浜・関内に10月、登場した。プライム・リンクの「バイキング居酒家  おだいどこ酒場」がそれで、なんと“15分375円で食べ放題・飲み放題”。料理は約60種類のラインナップから常時約30種類という。 時間制のバイキング居酒屋では、7月にオープンした高田馬場の「酔って食」がある。「すたみな太郎」の江戸一の経営で、1,980円飲み放題・食べ放題、完全セルフサービス式だ。また、サービスを行うオーダーバイキングの居酒屋などが広がる動きも出てきており、飽きられ始めた均一系の低価格居酒屋から客が流れる現象が起きるかもしれない。ただ、それが大きなトレンドになるかどうかは不明。いずれにしても、低価格居酒屋のマーケットはいわば“核分裂”現象が起き、多様化していくことは間違いない。ある意味、デフレ下における消費者の生活防衛ニーズが底流にあるだけに、このマーケットはそうした核分裂を繰り返しながら定着していくと見ていいだろう。来年、どのようなスタイルが主流になっていくか、アウトプットの形はいろいろ出てくるだろう。もう、「安いだけでは客は来てくれない」のだから。 

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