コラム

外食上場企業の使命とは…

大阪証券取引所が運営する新興企業向け市場のジャスダック、ネオ、ヘラクレスを統合した新「ジャスダック」市場が12日発足し、取引を開始した。それを機に、外食ベンチャー上場企業の株価や時価総額を調べてみたが、低迷を極めている。この先、どうなるのか?

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。


新ジャスダック市場は、上場企業数1005社、時価総額8兆8108億円(9月末現在)と、新興市場としては韓国の新興市場コスダックと並ぶアジア最大級の規模。しかし、マーケットの実力の目安となる売買代金は、統合される3市場の合計で年間4兆強と、韓国の新興市場コスダック(上場数は1011)をヒト桁も下回る。ライブドア事件を景気としたITバブル。不動産ファンドバブル崩壊や話題企業の業績不振による相次ぐ上場廃止など、新興市場低迷の要因は根深く、この不振はかれこれ5年以上続いている。大証は今回の統合で新興市場を活性化しようと必死だが、統合初日もIPO銘柄が公開株価を下回るなど、低調なスタートとなった。低調なのは、東証マザーズ、名証セントレックスも同じ。いっそ、3市場統合で、アジア勢に対抗するべきかとも思うが、いまのままでは外食企業の日本での上場意欲はますます落ちてしまいかねない。今回の新ジャスダック誕生で、大証ヘラクレス市場から鞍替えしたのが、ダイヤモンドダイニング、きちり、アスラポート・ダイニングなど。新市場誕生効果で、株価が勢いづくかと思ったが、市場の関心はいまのところ低いようだ。個人投資家が新興市場離れを起こしているうえ、海外からのは円高が嫌気されて日本市場への投資を敬遠しているのだろう。東証マザーズや名証セントレックスも同じ。これらの新興市場の上場している主な企業の株価は低迷を続け、肝心の時価総額も“どんぐりの背比べ”と言っていい。100店舗を達成し、次のステージに向けて大きな戦略を発表したダイヤモンドダイニングが30億円、それを下回る企業を並べると、WDI24億円、一六堂23億円、ワイズテーブル・コーポレーション22億円、アスラポート・ダイニング21億円、ジェイプロジェクト18億円、東京一番フーズ17億円、ゼットン10億、きちりに至っては5億円である。さみしい限りである。株式市場は生き馬の目を抜く弱肉強食の戦場だ。これでは、いつ買収されてもおかしくない。あるいは、株価低迷で市場を退場せざるえなくなる。2010年に入ってからも、なか卯、大和フーヅが3月に、テンコーポレーション、チムニー、ワンダーテーブルが4月に、ステーキのどんが7月に上場廃止となっている。こうしたなかで、ひらまつが8月東証一部に昇格し、株価も堅調に推移している。デフレ下にもかかわらず、高級業態を展開するひらまつが好調なのは、ブランドへの信頼性にあるとされるが、出店を絞った高付加価値戦略が高い収益性アップにつながっているようだ。IR好感度を高め、株価を維持するためには、投資家を裏切らない出店戦略がベースになければならない。いたずらに店舗を増やすしたりM&Aに走るよりも、ブランド力を上げ、軸をぶらさずに一店一店、確実に収益性をキープしていくことだ。それが上場する企業経営者のミッションではないか。 

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