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コラム

「銀座三越」レストラン街の読み方

銀座三越が9月11日リニューアルオープンし、大きな話題となっている。レストラン街も一新、百貨店というより、銀座の新しい商業施設内飲食テナント街として見たとき、どんな位置付けができるのだろうか。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


レストランフロアは11~12階の「ギンザ ダイニング」。“日本初”“関東初”“百貨店初”の新規店舗ばかり18店舗(11階11店舗・12階7店舗)が出店した。企画・リーシングを担当したのは三菱地所関係の商業施設内飲食テナントを手がけてきたグループとされるが、三越側はそれを公表していない。全館テーマの“新しい価値を スタイルとして創造し 時代の扉を開ける”というコンセプトに沿って、このレストランフロアの誘致店舗の顔ぶれや店舗デザイン、料理の打ち出し方が決まった。今回の最大の特徴は、各店舗に核となる売りもの、ストーリー性があること。そして、何と言っても、料理の値決めのリーズナブルさにある。バラつきはあるものの、ディナーセットを3,800円からと低く設定し、アッパーイメージの三越のレストラン街という既成概念を打破し、5,000~8,000円のディナーマーケットの新しい提案を打ち出したことだ。その意味で、まさに「新しい価値をスタイルとして創造した」と言える。既存の三越ユーザーのマダム族には、「まあ、なんと安いの!」という驚きを与え、ファストファッション店からの買い物帰りの若いOLには、「世界の一流の味が手の届く値段で食べられる」という来店動機を印象付ける作戦だ。よりカジュアルなレストランが並ぶ11階には10店舗が入った。エリックカイザージャポンのピザ生地を使用したピッツァ&ドルチェの「マエストロ ケイズ」、米国歴代3大統領の晩餐会を取り仕切った山本秀正シェフのパスタ&アンティパストの「セスト センソ」、シンガポール発のモダン飲茶専門店の「ディムジョイ」の新業態、日本初進出の店がお目見え。渋いところでは、昔、渋谷で食通たちを唸らせた讃岐うどんの名店「長徳」が復活、箱根湯本ホテル直営の蕎麦屋「箱根暁庵」、神戸・六甲の独創的な鉄板焼で知られる「ぎゅんた」、さらには食肉の小川畜産が「レストラン大宮」の大宮シェフと組んだ洋食・ハンバーグ「銀座サンジューシー」、“上州豚とことん”を使った福岡のとんかつ名店「和心あんず」、創業80年の築地の魚問屋と寿司屋の三代目がタッグを組んだ「築地青空三代目」など、ストーリー性に富んだ店舗が並ぶ。食欲よりも、その店への“知欲”を刺激するラインナップといえる。12階は、ややアッパーな7店が出店した。といっても、最注目のフレンチ「レ ロジェ エギュスキロール」はディナーコース4,800円から。経営はユニマットグループから独立し、さまざまな飲食店を手がけている金井伸作氏。「最近の低価格に流れる飲食マーケットに危機感を抱き、自ら新しいスタンダードとなるようなカジュアルリッチ店をつくった」と金井氏は語る。仏バスク地方の一ツ星「レ ロジェ」の女性シェフ、アンドレ・ロジェを現地で口説き、日本初進出をプロデュースした。一方、三菱地所系の商業施設で実績のあるアキナイの三宅茂幸氏が経営るする「ル・ブール・ノワゼット」も注目店だ。シェフはまだ30歳の若さだが、MOF(フランス国家最優秀職人章)を世界最年少で取得した実力者で、フィガロスコープ誌で「2008年パリ最高のネオビストロ」第二位に輝いた。シンガポールからは26年地元で人気店として続いているフカヒレ土鍋煮込み料理専門店「サイアミーズ フィン」が日本初上陸。2,800円の土鍋フカヒレランチは、早くも銀座名物になりつつある。中華は代々木上原の名店、井桁氏の四川料理「老四川 飄香」が出店。そして地方からは、沖縄で女性スタッフだけで運営する鉄板焼レストランの「碧」、沖縄料理名店「うりずん」が沖縄県物産公社、オリオンビールと組んだ「琉球料理 御茶屋御殿」、京都の老舗名料亭「美山荘」四代目中東氏による独創的な京料理「京都花背 石楠花(しゃくなげ)」の4店舗が出店した。このように、銀座三越の新しいレストラン街「ギンザ ダイニング」は、既存の百貨店との競合というよりも、銀座エリアの既存の商業施設内飲食テナント街と比較してみると、私がこれまで言い続けてきた“バリュー・パフォーマンス”(価格効果ではなく価値効果)が具現化されたラインナップである。これから爆発しそうなアジアからの観光客のスポットとしても注目されそうな銀座三越、これまでの百貨店内レストラン街から一つ頭が抜け出すことは間違いない。 

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