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コラム

商業施設の仕掛け人の顔ぶれが変わった!

駅ビル、百貨店、都市型商業ビル、そして郊外型ショッピングセンターを問わず、商業施設のテナントの顔ぶれがこのところかなり変わってきた。その舞台裏には、リーシングの仕掛け人たちの役割交代劇がある。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


私は日本ショッピングセンター協会発行の『SCジャパン TODAY』で一年間連載記事をもち、数々の商業施設の舞台裏を取材してきた。長年、利権 構造ともいえるディベロッパーと大手設計施工会社とのもたれあい、そしてその合間で暗躍する“リーシングフィクサー”についても言及したことがあるが、飲 食業界が激変し、高感度顧客を取り込まなければならない高度MD時代に入って、「単にテナントを埋めればいい」という時代から、「施設の価値を上げ、その エリアを活性化するためにテナント選別を超えた“プロデュース型”リーシング」が求められるようになった。いまや、ディベロッパー側がそのエリア、その施 設のマーケットに合ったテナントを誘致するだけでなく、テナントのMDづくりに踏みこんだ提案、業態創造をしなければならない。 先日、大阪から「阪急阪神ビルマネジメント」のリーシング担当者が私のところに訪ねてきた。「阪急西宮スタジアム」跡に11月下旬に開業する西日本最大のショッピングセンター「阪急西宮ガーデンズ」の 飲食フロアを担当した人物だ。勉強不足で、そのような巨大なSCが関西でオープンすることは知らなかったが、その担当者からテナントリストを見せられて、 かなり驚かされた。関西初はもちろん、兵庫初、さらには“西宮初”の新業態にこだわり抜いていたからである。「西宮にしかないオンリーワンをもってきた かった」という。ダイヤモンドシティーのようなどこにでも出店する金太郎飴的な業種業態ではなく、初ものというリスクはあるものの、長い目で見て施設の価 値を創造するようなテナントに自ら声をかけ、既存店を見て、本部を訪ねてトップを口説いて誘致に成功した。まわりからは「もっと安全な企業を揃えればいい のに」と冷ややかに見られながらも、初志を貫いた。 関東圏でも、先日オープンした横浜岡田屋の「横浜モアーズ」も、 岡田社長が前面に立ち、自らプロデューサーとなって、ユニークな飲食テナントを誘致した。最上階の「the MOST」はゼットンの稲本健一氏に企画プロデュースを委ね、稲本氏のネットワークでダイヤモンドダイニングなどの“飲食第二世代”や名古屋の新興企業を リーシングした。このようなトップダウンやテナントオーナーを巻き込んだキャスティングによるリーシングの例は今後増えてくるだろう。JR系でいえば、ル ミネやアトレも自社プロデュースによるかなりクリエイティブなテナントミックスを実現している。これからのディベロッパーは、まさに映画や音楽をつくるク リエーター感覚をもった価値創造型のリーシングを心がける時代に入ったといえよう。それが、公共空間やまちづくりを担う商業施設の責任でもある。

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