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コラム

“外食家”と”外食屋”

先週のメルマガで「政治の世界に政治家"と"政治屋"がいるように、外食業界も、"外食家"と"外食屋"に分かれている」と書いたところ、各方面から反響をもらった。政治の季節だからだろうか?店も経営者も"本物"が求められている。 "

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


麻生太郎“選挙管理内閣”が誕生した。新大臣たちの就任会見を一人ひとり聞いていると、誰が“政治家”で誰が“政治屋”かが、なんとなく分かる。も ちろん、スピーチや演説だけで、政治家の真贋を完全に見抜くことは不可能だが、継続してその人物の発言や行動を見ていると、たいてい想像がつく。麻生太郎 は昔、私が『プレジデント』編集者のとき、作家の保坂正康氏と徹底取材、本人にロングインタビューし、地元九州飯塚市の関係者や夫人にも会い、人物像を描 きあげたことがある。彼の良さは麻生セメント社長時代の徹底した効率経営を学んだこと、政治家として小派閥の辛惨をなめ続けたことだ。もともと閨閥の育ち の良さと天真爛漫さがある。まさに“遅れてきた宰相”と言うべきだが、下積みでは生かされなかった部分がリーダーになったとたん開花する可能性が大きい。 彼の「日本を明るく元気にしたい」という所信表明は、今の国民が求めている空気に合っている。総選挙に突入しても、意外と好戦するのではないだろう か?“太郎VS一郎”の一方の民主党の旗手、小沢一郎は逆に権謀術数の人で、正直言って“暗い”。そこが心配だ。小沢氏にも自民党幹事長のときインタ ビューしたが、私が移動電話電波割り当ての外資への利権提供について聞いたとたん、「君は失礼な記者だ!もうインタビューは終わりだ」と激怒された経験が ある。とはいえ、太郎氏も一郎氏も決して政治屋ではない。共に背水の陣、ある意味、命を懸けている点で、政治家の部類に入ると言えるだろう。今回の総選挙 は政治家同士の“天下分け目の戦い”である。逆に言えば、それを余儀なくされるほど、日本の政治、経済、社会状況は極限状況にあるということだろう。 外食業界にも、“外食家”と“外食屋”がいる。“外食家”とは、業態の形や展開のビジネスモデルから外食に入るのではなく、経営者の生き方として、 客に対してはもちろん、スタッフに対して、社会に対して、「自分はなぜ飲食の道を追究しているのか」を堂々と発言でき、その言葉通りに行動できることだろ う。厳しい時代になればなるほど、軸をぶらさないで自分の決めた道を究めること。そして、そのスピリッツを会社と店に吹き込むことだろう。居酒屋甲子園の 第4回発表会に出たが、甲子園活動の目標も「居酒屋から日本を元気にしたい」ということ。それは理解できるが、問題はそれを掲げる幹部(理事や実行委員) たちが、自分の店の経営について、どれだけの本気と覚悟があるかが問題だ。“壇上プレゼン”を果たした参加店舗の経営者の中には「居酒屋甲子園に参加した ことで売上げが上がった」と発言していた人がいたが、それは本末転倒だろう。甲子園は“ノアの方舟”であってはならないのではないか。 昨日、宮崎「地頭鶏」業態で急成長しているAPカンパニーの米山 久社長にインタビューした。私は彼が「わが家」を展開していた数年前に会ったことがあり、「店を見て欲しい」というので、川崎店をチェックし、「Bクラス のCレベル」と酷評したことがある。私はそれを忘れていて、昨日、米山氏から「佐藤さんの厳しい評価は忘れていません」と言われて思い出し冷や汗をかい た。その後の米山氏の成長はすごい。ただ単に店を増やし、売上げを上げているだけではない。彼は、地頭鶏業態を産直的発想でつくるだけでなく、生産者と一 緒になり、地元行政の日南市長のお墨付きをもらって、直営養鶏場までつくる。まさに生産地に根を張って、「地頭鶏(じとっこ)」のブランド化=自社業態「塚田農場」開発=ライセンス展開と川上から川下まで一貫した仕組みを確立した。 ブームに乗って、形だけの産直ブランド展開でごまかしている店がいかに多いことか。それを謳い、ぐるなびで販促をかけても、本物かどうか、今の客は 見抜く。ましてや接客や内装づくりだけで今の客を満足させることはできない。米山氏は言う。「生産者のために働き、、第一次産業を活性化し、大きく言えば 食糧自給率を上げ、食料危機を救う、そうしたミッションをもって飲食という仕事に取り組んでいきたい」。アイデンティティとミッション、そして覚悟とそれ を証明する行動力…。いま“外食家”に求められているのは、そうした要素ではないだろうか。

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