■「ブランド価値」が問われる現場
私はいま、飲食店のM&A仲介や、商業施設へのリーシング、FC展開支援といったコンサルティング業務にも携わっていますが、そこで感じるのは「ブランド」の有無が、その店や企業の未来を決定づけているという事実です。
M&Aの買い手は、単なる売上や利益ではなく、そのブランドに込められた哲学、文化、歴史を見ています。商業施設も同様に、流行よりも“長く続く理由”を持ったブランドを求める傾向が強まっている。FC展開においても、単なる再現性だけでなく、ブランドをどう広げるか、育てるかが問われる時代です。
■「ブランド」は哲学であり、文化である
では、ブランドとは何か。それはロゴや店名ではなく、「なぜこの店をやっているのか」「誰にどんな体験を届けたいのか」といった創業者や現場スタッフが持つ“思想”や“熱”の積み重ねです。
例えば、私は最近、目黒で42年続く「こんぴら茶屋」という老舗のカレーうどん店のFC展開を支援していますが、その背景には、長年愛され続けた味と、家族のような接客、そして地域とのつながりといったストーリーがある。これがブランドです。
■今こそ、「ブランドの時代」
流行は風のように移ろいますが、ブランドは積み上げるものです。そして、いまの消費者もメディアもマーケットも、それに気づき始めている。
私自身、これまで「外食トレンド」の取材・分析を軸に歩んできましたが、これからの時代は「トレンドからブランドへ」と視点を移すべきだと確信しています。
飲食店が単なる流行りで終わるか、それとも文化として残っていくか。その分かれ道に立たされているのが、今この瞬間ではないでしょうか。