コラム

「ネオエスニック業態」がブレークの兆し!

メキシコ料理の代名詞「タコス」を手軽に食べられる米国の専門店「Taco Bell(タコベル)」が渋谷道玄坂に4月21日、オープンした。連日、長い行列ができるほどの人気。29日には、オーストラリアで人気のファストカジュアルスタイルのメキシカンダイナー「Guzman y Gomez(グズマンイーゴメズ)」が日本1号店をオープン。にわかにメキシカンフードの進出ラッシュに沸く東京マーケットだが、「ネオエスニック業態」の大きな波がじわじわと来ていることは確かだ。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。


「タコベル」は、全米を中心に世界で6000店舗以上を展開する有名ブランド。同店の「タコス」は、トルティーヤにたっぷりの野菜と肉、そしてソースなどを挟む。肉やソースの辛さは3種類から選べるほか、セットメニューのドリンクは飲み放題。1980年代に一度、日本進出を果たしたが撤退、今回は外食大手のアスラポート・ダイニングが業態を輸入した。日本進出を発表した3月、同社の株価がストップ高を付けたことでも話題を呼んだ。ラフォーレ原宿のリニューアルに合わせてオープンする「GYG(グズマンイーゴメズ」は、メキシカンフードの中でも、肉や野菜、ライス、豆、サルサなどの具材やソースを、大きめのトルティーヤで包んで筒状にラップした料理「ブリトー」が売り。アメリカ西海岸を始め世界中で大人気。店内はラテンムードで溢れさせるという。これらに先立つ4月8日には、六本木のアークヒルズにメキシコタコスとブリトーの店「TACO RICO(タコリコ)」がオープン。オーナーは、「コールド・ストーン・クリーマリー・ジャパン」の元役員で、「コールド・ストーン」のオペレーションスタイルを取り入れている。

4月4日には、やはり原宿にオープンした商業施設「SIX HARAJUKU TERRACE(シックス ハラジュク テラス)」にゼットンの「Aloha Amigo」2号店が出店。「アガリコ」を展開するBig Bellyの大林芳彰さんがメニューをプロデュースしたハワイアンとメキシカンを融合させたHi-Mex(ハイクオリティメキシカン)。スパイシーでアジアンな香りもするエキゾチックなテイストが際立つシティリゾート風の同店。ネオエスニックといえる。ゼットンの「Aloha Amigo」はBig Bellyの大林氏がメニューをプロデュースしたハワイアンとメキシカンをコラボレーションさせたHi-Mex(ハイクオリティメキシカン)。スパイシーでアジアンな香りもするエキゾチックなテイストが際立つシティリゾートスタイル。このような「ネオエスニック業態」も昨年から数々オープンしてきている。10月には、リニューアルした新宿中村屋本店ビルにオペレーションファクトリーの「CAFÉ RAMBUTAN(カフェランブータン)」が出店。コロニアル風の同店はコンチネンタルテイストとエスニックが融合したオリエンタルダイニング。アジンアテイストをコンチネンタルスタイルに仕上げたている。シーフードヤムウンセンなどアジア定番の料理から、パクチーたっぷりのパクチーフードまでが揃う。ドリンクも100種類と多い。

丸の内の日本生命丸の内ガーデンタワーの2階にもネオエスニック業態がオープンした。“scent香り”をコンセプトにしたMYUのBar+Dining「SCeNT HOUSE DEN Marunouchi(セントハウスデン)」だ。スパイシーさが際立つオリジナルのスペアリブや四川風ビーフシチューなど五感で味わい感じることにこだわった料理は、中華料理とエスニック料理をコラボレーションさせたもの。市ヶ谷の食の塔GEMSにオープンした「old Thailand(オールドタイランド)GEMS市ヶ谷」は、クルムサイアムとオールドタイランドの二つのブランドでタイ料理専門店を展開するS.S.C (SUU・SUU・CHAIYOOスースーチャイヨー)の運営。代表的なタイ料理からタイ東北料理まで豊富に揃える本格派だが、合わせるドリンクではアジアンレモネードやモヒートに本格焼酎、タイワインという新しいマッチングを見せる。タイとコンチネンタルスタイルがコラボしたネオエスニック業態だ。都内でタイ料理専門やインド料理を9店舗展開するDIPMHALの「Dippalace(ディプパパレス)飯田橋サクラテラス店」は、インド料理とタイ料理、エスニックを代表する二つの料理が楽しめる斬新なメニューコンプレックス。ドリンクはタイ、インドワインに世界のワインなど幅広く揃えるが、注目は、いまアメリカで人気のおしゃれなメイソンジャータンブラーに入れたエスニックカクテル。ネパール、インドを軸にアジア料理を提供するアジアンダイニングを飯田橋、神楽坂などで7店舗展開しているglobal SAPANA groupが秋葉原にオープンした「SAPANA(サパナ)秋葉原UDX店」は、ネパール、インド、タイなどの本格料理をメニューコンプレックスしたアジア料理の実力派。

いま広がりを見せ始めたこうした新しいスタイルのエスニック業態=ネオエスニック。ナショナリティ、民族性など特に古典的なスタイルを踏襲する傾向の従来のエスニックのマーケットはすでに限界。これからはコンチネンタルテイスト(大陸的=欧米風に洗練されたテイスト)をはじめとしたカルチャーコンプレックス化が主流となるだろう。「エスニック料理」というのは実ははっきりした境界があるわけではない。本来の意味は「民族特有の料理」だが、先進都市においては、タイ、ベトナム、インドなどのアジア料理を指し、拡大解釈的に中南米(ヒスパニック)や中近東、さらには中華圏のテイストが混ざった料理もエスニックと呼ばれることが多い。東京の飲食シーンでも、ハイクオリティでコンチネンタルなネオエスニック業態が増えている。とくに女性には人気のジャンルである。「フレンチ、イタリアン、和食に飽きたらエスニック」というわけだ。独自なセンスとスタイリッシュさを付加価値にした“東京スタイル”の「ネオエスニック業態」はますます増えそうだ。

コラム一覧トップへ

Uber Eats レストランパートナー募集