コラム

いよいよ「デイリークラフト」の時代が到来!

4月17日、キリンの体験型ブルワリー併設店舗「SPRING VALLEY BREWERY TOKYO(スプリングバレーブルワリー東京)」がログロード代官山にオープンする。ウッドの外観が印象的な2階建て約270坪215席、日本最大のクラフトビール大型店舗だ。まさに「クラフトメジャー化」の幕開けといえるが、その先は…?

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


「スプリングバレーブルワリー東京」は、その場でつくられたクラフトビールが楽しめるブルワリー(小規模ビール醸造所)を併設したオールデイダイニング。通年で提供する6種類のクラフトビール以外に、限定ビールや実験的なビールを次々と提供するほか、前菜からデザートまで、ビールとのペアリングにこだわった料理も楽しませる。また、麦芽を煮込んで麦汁をつくる工程が見える透明なガラスの仕込み設備を導入した。これは日本初、いや世界初かもしれない。ビールづくりが身近に感じられるブルワリーツアーや、つくり手によるテイスティングセミナーなども予定している。さらに、「ビア・サプライズ(驚きのビール体験)」をテーマに、自分好みのオリジナルビールを作ることができるカスタマイズビールも体験できるという。驚くのは営業時間。朝8時から夜24時まで(日祝は8時から22時まで)年中無休で営業する。まさに「オールデイ」営業である。それだけ、「クラフトビールを日常のものにしたい」というキリンの意気込みが感じられる。

「デイリーワイン」というスタイルが一般化しているほど、ワインはいまや日常のものになりつつある。「デイリーワイン」とは、毎日買えるぐらいの価格帯の、毎日飲んでも飽きない種類を楽しむワインのこと。あるいはそのスタイルを言う。がぶ飲みワインスタイル広がりによって「デイリーワイン」が定着したように、「クラフトビールメジャー化」の先には、毎日クラフトビールを生活に取り入れる「デイリークラフト」というスタイルが見えてくる。ニューヨークや西海岸などの北米の都市ではすでに当たり前だが、日本でも将来、そうした時代が到来するとこは間違いないのではないだろうか。昨年の10月、あるレポートで私はこう書いた。
「『クラフトビールのメジャー化』が始まった。一方で日本型ブルーパブやライフスタイル提案型のクラフトビール専門店もあちこちで産声を上げている。いわば『クラフトビールのマイナー系進化』である。来年(2015年)は、このメジャー化とマイナー系進化の動きから目を離せない。一般の居酒屋やバルでクラフトビールを導入する動きも広がるだろう。これからは『クラフトビールを知らない』では飲食店オーナーとしては失格である」

「クラフトビールのメジャー化」の一方で、「マイナー系進化」からも目が離せない。能村夏丘氏率いる麦酒企画は、1号店の「高円寺店」からスタートして今年で5年目となるが、最近5店舗目となる「西荻ビール工房」をオープンした。大物ミュージシャンを輩出したライブハウスの聖地「西荻ロフト」跡の同店は席数も拡大。醸造するタイプも増え、クオリティの高さも定評がある。同社の「ビール工房」ブランドは、高円寺、阿佐ヶ谷、荻窪、中野、西荻窪と中央線沿線では知名度も浸透し、まさに地域に密着するブルワリーとして成長している。同店のコンセプトは気軽に立ち寄れる“脱居酒屋”としてのポジションだ。カラフェでテイクアウトできるのも町のビール屋らしいサービス。まさに「デイリークラフト」の仕掛けが実ってきたといえよう。さらに、「一般の居酒屋やバルでクラフトビールの導入が広がる」という動きも広がってきた。東中野にオープンしたもつ焼き「晴れときどき tententen」は、ゲストのクラフトビールとIPAにこだわったボトルのクラフトビール20種類にもつ焼きを合わせる。従来のもつ焼き業態のイメージを覆す女性ターゲットの店だ。オーナーは「地域に根付き、日常使いで利用してもらいたい。女性が仕事帰りにふらっと立ち寄って、もつ焼きとクラフトビールを楽しんでほしい」と語る。「デイリークラフト」化の波は、日本の飲食シーンを大きく変える可能性を秘めている。

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