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インタビュー

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博多発うどん居酒屋は東京に根を張れるのか――「二〇加屋長介」オーナー・玉置康雄氏&トランジットジェネラルオフィス代表・中村貞裕氏を独占インタビュー

2016年11月22日、東急電鉄による新商業施設「中目黒高架下」がオープンを迎えた。全長700メートルに渡り個性豊かな28店舗が軒を連ね、大勢の人で賑わう活気の中、店内を忙しそうに駆け回る「二〇加屋長介(にわかやちょうすけ)」の主人・玉置康雄さんの姿があった。福岡・薬院に「二〇加屋長介」をオープンしたのは2010年のこと。以来、市内3店舗を展開し、飲んだ後にうどんで〆る博多独特の<うどん居酒屋文化>を牽引してきた同店から今秋、都内1号店となる中目黒店が誕生した。東京進出にあたりタッグを組んだのは、「bills」や「THE APOLLO」など数々の“初進出モノ”の運営を手がけてきた飲食界のヒットメーカー、株式会社トランジットジェネラルオフィス(東京都港区/代表取締役社長 中村貞裕氏)。お二人に出会った当時を振り返っていただきながら今の心境などをじっくり伺った。


―お二人の出会いは?

15409768_1022136754579377_2041331709_o_640中村貞裕氏(以下、中):2年半ほど前に僕がある取材で博多に行ったときです。B級グルメを回る企画で昼から10軒くらいはしごしていて、〆は当然ラーメンだと思っていたら、案内役の現地の編集者が「博多はうどんで〆るんですよ」って。おすすめだからと連れていかれたのが「二〇加屋長介」本店で、初めて長介くん(玉置氏の愛称)に出会った。つまみもうどんもすごくおいしかったのを覚えています。

玉置康雄氏(以下、玉):僕は「なんだかすごい人が来たな~」って印象でした。

中:そのときには「なんかいい店だな」で終わったものの、ちょうどそのころ「bills」をやって日本初上陸もののノウハウが蓄積されていたこともあって、常に新しいものを探している状態ではありました。今度は日本初上陸モノじゃなくて東京初上陸モノをやろうと見つけたのが、大阪で人気だった「お好みたまちゃん」。これが青山で成功して、「東京初上陸モノをもう少しやってみるか」というときに長介くんとうどん居酒屋のことを思い出したんです。

―数年前だとうどん居酒屋という言葉は東京にはありませんでしたよね。

中:そうなんですよね。でも僕は博多で知ったうどん居酒屋というフレーズと、長介くんのキャラが気に入っていて。彼は業界の人からの評価も高くて、修業していた「田中田」の大将にも可愛がられる愛されキャラなんです。それで、すぐに紹介してくれた編集者に東京に進出する気があるか聞いてもらいました。後で聞いたけど、ロイヤルホストに連れていかれたんでしょ?

玉:はい(笑)

―玉置さんはお話を聞いたときはどんな心境でした?

15397733_1022136974579355_1526219097_o_640玉:うれしかったです。東京から来たお客さんに「東京でもやってよ」とよく言われていたし、自分としても挑戦したい気持ちがありました。すぐに嫁に話したら「そんなの忘れられちゃうよ」と言われましたけど。

―先ほど中村さんから「玉置さんは愛されキャラ」とありましたが、玉置さんから見て中村さんの印象は。

玉:考えの蓄積量がすごい人。中村さんが言う「いいね」は考えてない人の「いいね」とレベルが違うところにある気がするし、料理屋としてそういう人にいい感覚を持ってもらえたことが素直にうれしいです。今までやってきてよかったなと。中村さんの「たぶんこれいけるよ」という発言をすごく信頼しています。

波を作るにはコンペティターが必要


―中目黒という街にはどんな印象を持ちましたか?

玉:僕はお店の場所を探すとき、必ず最寄り駅から歩いていく。なにかワクワクする景色はあるかなと。今回、中村さんから中目黒の話をもらって中目黒駅に来てみたら、駅が薬院の駅とすごく似ていて「おお!」となったのを覚えています。

―たしかに、駅の感じやすぐ近くに川が流れているところなど街の雰囲気は薬院と似ていますね。とはいえ、そのころ高架下はまだ工事中で具体的にイメージするのは難しかったのでは。

玉:いや、僕の場合はこの場所に入ったらこういう感じになるだろうなと想像するのが楽しかったので。

中:実は中目黒高架下のオープンって本当は1年前だったんですよね。それが1年も遅れると聞いたときには一瞬テンションが下がったよね。

玉:そうですね。

中:僕としてはトレンド的に早く進めたかった。でもオープンが遅れたことは、今思えばすごくラッキーでした。というのも、そのころ力の源ホールディングス(福岡県福岡市/代表取締役社長 清宮俊之)がうどん業界に入ってくるという話が出ていて。

―力の源ホールディングスといえば、今春に博多うどんの老舗「因幡うどん」を事業承継し、夏には恵比寿に「博多うどん酒場 イチカバチカ」をオープンさせましたね。

15409493_1022136937912692_815718166_o_640中:「イチカバチカ」ができると聞いたとき「ラッキー!」と思いましたよ。ライフスタイルに影響を与えるくらいの大きなトレンドを生むには、コンペティターが必要だと僕は考えている。全部をくっつけて波を作るんです。だからオープンが1年延びて「イチカバチカ」のすぐ後にオープンできたことは、タイミング的にすごくよかったです。

仕入れ・値付けともに半年かけて調整していきたい


―不安はなかったですか。

中:自分たちで店をやる場合は別ですが、今回みたいにブランドをお預かりしている立場だと大きな責任を感じます。自信はあるけれど、オープン前はやはり緊張しました。でも、今のところ周りからの評価も高くてほっとしています。以前、僕らの事務所が中目黒にあったときはこの辺りには何にもなくて、桜のシーズンしか混まないイメージだったんですが、今回オープンした高架下には知り合いの店もたくさんあるし、みんなで盛り上げていけたらいいなと。

玉:場所もお客さんの雰囲気もすごく似てるから、不安は特にないですね。醤油の味も、それはそれとして受け入れていただけることがなんとなく分かった。最初は右往左往した部分もありますが、僕の今の精神状態としては、自然にやるのがいいんだと思います。

中:それにオープンが延びた分、うちのチームもしっかり研修できたんじゃないかな。ひと月に4人ずつ派遣したっけ。福岡から家族ごと赴任した人もいるよね。

玉:はい。僕と4年以上一緒に働いていて、料理の細かい部分をジャッジできる人なので、そういう人が東京にいるのはすごく安心できます。

中:当初は駅に近いのでみなさん終電で帰ってしまうのでは、という心配はありました。でも周辺に住んでいる人や同業者の来店が多く、おかげさまで終電後もすごく混んでいます。僕の友人たちも小腹を埋めに2次会、3次会に選んでくれていますね。味や雰囲気のせいかレストランのようなお店ばかりに行っていた人たちなのでうれしいです。

15409801_1022137067912679_1770328329_o_640玉:実は、3時閉店というのにはこだわりがあって。本店はもともと1時までだったんですけど、あるとき3時までにしたら一気に忙しくなったんです。どうやら、1時や2時だと同業者があんまりゆっくりできなくて、かといって4時だとお客さんもだらけて客層が乱れる。3時というのは僕的にちょうどいい時間。それに、同業者の先にはすごい数のお客さんがいるので、雑談でうちの話が出るだけでも来店に繋がると思う。

―仕入れ面もお伺いできれば。福岡の「二〇加屋長介」ではゴマサバが人気ですよね。活魚にこだわる点から中目黒店ではゴマカンパチに変更されましたが、他にご苦労は。

玉:僕の場合、流通は店が始まってから育てていくタイプなので、品数に対するロットが分かってきたら都度調整していく考えです。中目黒店は席数が福岡の倍近くあるので、メニューを入れ替えながら半年くらいかけてロスをゼロに近づけていくつもりでいます。値付けも、どんなおいしくても自分のイメージより「高いな」と思われる店には絶対したくないので、こっちも半年くらいかけて調節したい。

―うどんに使う小麦粉が糸島産小麦100%というのは福岡・東京ともに同じですが、今回太さを変更したのには何か理由が。

玉:再現性を持たすという考え方も大事なんですけど、水の違いなどいろいろな条件がある中で最高のものを目指す作業を再現と並行してやらないと、長い目で見ていいものができないと分かった。幹の方向性は同じだけど、今の環境で一番いいものを作っていくというスタンスです。

中:余談だけど、僕、ここのぶっかけうどんが大好きなんですよね。僕が勝手にトッピング作ったお気に入りメニューがあって、え~となんだっけ。「温玉納豆肉ぶっかけ」ってやつ。

玉:「中村スペシャル」ですね(笑)

中目黒、大手町、その先へ


―オープンしてみて今の心境は。

中:僕にとっては福岡の「二〇加屋長介」を再現したというよりも、ここが一号店のような感覚。「お、気軽に行ける店ができたぞ」と、いちお客さんのような気持で来ています。友人たちにもうどん居酒屋というフレーズは響いているみたいです。この数年「そば居酒屋はあるのに、うどん居酒屋はないよね」って何回言ったことか!(笑)。

玉:店の前を通った人が「僕、福岡出身なんです」と入ってくることもあって、アウェー感が全然ありませんね。まだ福岡に帰りたくないです(笑)。それと、トランジットさんと組ませてもらったことで博多のスタッフのモチベーションがめちゃめちゃ上がっています。これまで僕が「東京でやりたい」とか「海外でやりたいんよね」と言っても「また言ってる」って感じだったのに、今は「この会社にいればいいことがあるんじゃないか」といい空気になってきています。

―来年2月には大手町への出店を控えていらっしゃいます。今後の展望もあわせて教えてください。

中:大手町でやる強みは、やはりランチ。といってもビジネス街を狙っていたわけではなく、物件の話が舞い込んできて、準備期間があまりないので少し悩みましたが、長介くんは「やりたい」ということだったので。土日を閉めちゃえばリスクはないと思ってます。今後はどんどん出店するイメージはなくて、中目黒、大手町とやってみて様子を見たいなと。この2つが成功しないことには物件の話を来ないので。

玉:ランチに関しては「釜喜利うどん」(玉置さんの2番目の店)である程度のノウハウを得た実感がある。オフィス街への挑戦も楽しみにしていますが、今は中目黒店を軌道に乗せることに集中しています。

―ありがとうございました。


15409789_1022137157912670_2000117796_o_640玉置 康雄氏プロフィール
高級居酒屋「田中田」を経て、2010年福岡・薬院にてうどん居酒屋「二○加屋長介」を開業。その後福岡に姉妹店も誕生し、2016年11月に待望の東京進出第1号店を中目黒高架下に、2017年には東京・大手町にも「二○加屋長介」がオープン予定。
中村貞裕氏プロフィール
伊勢丹を経て2001年にトランジットジェネラルオフィスを設立。約70店舗の飲食オペレーションをはじめホテルや鉄道などライフスタイルに関わる分野でプロデュース業もこなす話題の店を手がけるヒットメーカー。

(取材=井上こん)

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