神保町「ビストロアリゴ」、神田「ブラスリーザン」など9店舗を経営し、独創的な店作りを行なうことで話題の夢屋の新店「バル マラケシュ」(代表:小林研氏)。大手企業のビルが建ち並ぶ神保町の近代的なビジネス街から一本入った、昭和の風情を色濃く残す路地にオープンした。同店は築50年以上の古民家を再生したフレンチバル。「バル マラケシュ」は既存のフレンチスタイルではなく、斬新で独創的なバルに作り上げられている。ベーシックなフレンチをベースにし、生クリームやバターを極力使用せず、中東などの様々なスパイスを駆使。エスニックの香り溢れる、ひと味もふた味も深みのあるフレンチが楽しめるのは、「ヨーロッパ、アジア、アフリカの異国文化が混在するカオスの国」、モロッコの都市に由来する店名からも想像できる。真っ白な2階建ての外装。古ぼけたグレーシュな金枠の引き戸が昭和建築らしさを際立てている。戸を引くと、天高10メートル、2階まで大胆に吹き抜けとした古民家らしい空気を残す空間が広がる。そんな空気に切り込むような、ステンレス製のコの字のスタンディングバーが迎える。カウンタートップのステンレスの厚さは8ミリあり、素材の存在を感じさせる。1階奥のオープンキッチン前にシェフズテーブル、2階席は古材やアンティークな家具で構成し、古民家独特の趣のある環境で、ゆっくりと食事を楽しめる。ナチュラルな中にハードな素材がエッジを効かせている空間は、スパイスの効いた「バル マラケシュ」の料理そのものだ。料理はどれも、“クミン”、“オレガノ”、“タイム”、“八角”などのスパイスに“コリアンダー”、“アニス”などのハーブ、さらにはスモークした“ナッツ”、“カボチャの種”、“カシューナッツ”などナッツ類がふんだんに使われている。これらは、クロアチア、モロッコ、レバノン、いわゆる中東エリアの料理に欠かせないもの。フレンチでも一般的に使われており、馴染み深いが、ヨーロッパ、中東、アジアの食の深い歴史の関わりあいを感じさせる。おすすめは情緒的でもあり、個性的な一皿である「仔羊のモモ肉のタルタル タイムのアクセント」(780円)。多くのスパイスとスモークしたナッツが入る。ほかには、じっくりと火を入れた「カマスのコンフィ」(880円)や「燻製ナッツの薫るパテ」(750円)、「根菜グリエ ローズマリー風味」(600円)など。めずらしい「鯖のリエット ピンクペッパー」(550円)もある。どれもシンプルでいて、スパイスのエッジが立つ。メインディッシュには「北海道十勝産 短角牛のグリエ エストランゴン添え」(1480円)。「濃厚魚貝の地中海ブイヤベース」(980円)といった煮込み料理もある。魚貝、野菜、肉とバランス良く揃い、ワインもすすむメニュー構成になっている。お通しとして出される自家製のライ麦パンは隠れた逸品だ。料理に合わせるワインは飲みやすいものからスパイシーなタイプのものまでを揃えているが、中でも中東エリアの珍しいワインがおすすめ。グラスは500円~、ボトルは2800円~5500円と手頃。ほかには、クサラックと呼ばれるレバノンのアラック酒、チュニジアのティバリンなど、中東エリアでポピュラーに飲まれている薬草をベースにした蒸留酒。口当たりの良いものからハードタイプまで、オリジナルカクテルもある。「サクッと飲むのも、エキゾチックな料理に想いを馳せるのもよし。気取らずに酒場として楽しめる店にこだわった」という小林氏。「酒場の遊びを知って欲しい」とこれまで以上にこだわりや遊び心を多く隠している。それは「もっと店を遊び、楽しんで欲しい」とのメッセージである。環境、料理、BGM全てが一体化する小林氏流の店は「一歩入った路地」から始まる。今年もすでに新たな路地を仕掛けているようだ。
店舗データ
店名 | バル マラケシュ |
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住所 | 東京都千代田区神田神保町1-35 |
アクセス | 東京メトロ神保町駅より徒歩2分 |
電話 | 03-5217-3355 |
営業時間 | 月〜金17:00〜23:30、土16:00〜23:00 |
定休日 | 日祝 |
坪数客数 | 20坪・29席(スタンディング10席) |
客単価 | 3800円 |
運営会社 | 株式会社夢屋 |
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