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「ネオ・大衆酒場」のビジネスモデルとして注目!二等立地で実力を発揮する新時代の“赤ちょうちん店”「大衆鳥酒場 鳥椿 鴬谷朝顔通り店」が鴬谷にオープン

置き看板の手直し程度と、ほぼ前店のままの居抜き状態で開業。店頭に積み上げたビールケースなどが、場末感をいっそう盛り上げる
氷の入ったメガジョッキとともに焼酎の一升瓶を提供し、客に自分で好きなだけ焼酎を注いでもらう「メガホッピーセット」(590円)。こぼれるほどいっぱいに注ぐ客もいるという、超お値打ちメニューだ
厚さ2.5cmある「ハムカツ」(300円)。気軽な1個売りの「名物チューリップ唐揚げ」(1個90円)。150円とお手頃な「梅きゅうり」
経営者の北野達巳氏(中央)、現場を切り盛りする店長の寺内優輔氏(左)と副店長の植竹秀樹氏(右)

(取材=印束 義則)


東京の中心をぐるりと1周する山手線29駅の中で、最も乗車人数が少ないと言われているのが鴬谷駅。山手線主要駅の上野駅と日暮里駅に挟まれ、その谷間にまるで隠れるかのようにひっそり存在する目立たぬ駅だ。駅南口を出て陸橋を下りると、いくつもの小さな飲み屋が軒を連ねる。そんな場末感漂う飲み屋街の一角に、2011年11月12日にオープンしたのが「大衆鳥酒場 鳥椿 鴬谷朝顔通り店」。同店は板橋区・大山で「大衆鳥酒場 ひよっこ 大山店」を経営する北野達巳氏が手がけた2店舗目の店で、「ひよっこ」同様、鶏料理を売り物にした大衆酒場である。
同店は、16年半営業してきた前店から居抜きで店舗を引き継ぎ、店名の“鳥椿”も前店の屋号をそのまま譲り受ける形で開業を果たした。そのため新店にも関わらず、違和感なく地域の古びた雰囲気にしっかりと溶け込んでいる。このような屋号ごと引き継ぐ居抜きの開業スタイルは、看板の手直しの必要もないことから、小さな飲み屋などでたまに見かける最も安上がりな開業法である。反面、閉店した前店のマイナスイメージが常に付きまとうため、経営をなかなか軌道に乗せにくいハンディも同時に背負うことになる。そうした中、同店は前店からの常連客が、これまでと同様に来店しやすい雰囲気を保ちながら、それと並行して新規客も獲得できる魅力を巧みに打ち出したのである。
店頭の置き看板を手直しした程度で暖簾などはそのまま使い、店内もほぼそのままの状態に。店舗の雰囲気はほとんど変えず、それでいてメニュー構成で同店らしさを訴求。メニュー構成は大山の「ひよっこ」をベースにしながら、カウンターと小上がりだけの8坪・15席の小規模店ゆえ1~2人客が多いと判断し、ポーションを少し小さくして価格を下げた。前店が炭火焼きの焼とりが売り物だったのに対し、「ひよっこ」の売り物の鶏肉をぶつ切りにして網焼きにする“串に刺さない焼とり”の“鶏焼き”をメイン商品に据えたのである。前店同様、日常性の高い“焼とり”を売り物にすることで気軽さをアピールしながら、同時に周囲にない独自性を打ち出すことで魅力強化を図ったのだった。
その他、「特製 煮込み」(350円)、「すじポン!」「とり皮せんべい」「鳥皮ポン酢」「鳥でチャンジャ」(各300円)、「鳥の一夜干し」(400円)、「とりてっちゃん」「鳥とトマトのチーズ焼き」(各450円)などの“鶏料理”。「豪快手羽の1本揚げ」「油淋肝(おつまみレバカラ)」「ぼんじりの唐揚げ」(各300円)の“鶏揚げ”。そして気軽に注文しやすいよう1個売りを導入した「名物チューリップ唐揚げ」(1個90円)。また、鶏料理以外の脇を固めるメニューも充実。客がいくら食べたか計算しやすいように50円単位の値づけにしており、「100円おつまみ」「150円おつまみ」「200円おつまみ」「250円おつまみ」「300円おつまみ」「高級おつまみ」(350~450円)などとメニューを区分けする。
メニューは大衆酒場らしく「枝豆」(200円)、「冷やしトマト」(300円)などの定番商品で安心感を打ち出しながら、その一方、どこにでもあるメニューをひと工夫することで他店との差別化も図った。例えば、「名物チューリップ唐揚げ」は手羽中の身をひっくり返して“チューリップ”に仕上げた鶏の唐揚げだが、店内の壁に「一個90円~九九個8910円」と一覧にして貼り出し、思わず注文したくなる仕掛けを施す。また、「ハムカツ」(300円)は厚さ2.5cmもある極厚のサイズで、通常のハムカツを想像して注文すると厚さに驚かされるというインパクトの大きい一品に。当初はもう少し薄かったのだが、好評なのでどんどん分厚くなっていき、提供時も「もともとは100円の利益(原価200円)が出てたんですけれど、いまでは50円(原価250円)の儲けしかないですよ」などと客の笑いを誘いながら会話を交わし、名物商品化を推進。さらには「お客さんの発案でこういう食べ方もあるんですよ」と「ポテトサラダ」(350円)に“たまごふりかけ”を添えて提供し、ふりかけて食べてもらったりもしている。
アルコールの売り方でもひと味違う魅力を打ち出しており、同店の大きな売り物となっているのが“ハイボールカーニバル”。これは「角ハイボール」「トリスハイボール」「ジンジャートリスハイボール」「キンミヤ焼酎ハイボール」「タカラ焼酎ハイボール」(各300円)の5種のハイボールを注文した客に2個のサイコロをふってもらい、ゾロ目が出たら無料、偶数目が出たら半額、奇数目が出たら倍額にするというもの。無料や半額の客は「やったー!」と喜び、倍額の客は「あちゃー!」と落胆する。ただし、倍額といっても通常400mlの中ジョッキを1Lのメガジョッキで出すため、分量は2.5倍に。つまり、どの目が出ても得をする仕組みになっており、あっちの客席でチャリーン、こっちの客席でチャリーンと大勢の客が注文し、いつしか店内は一体となって大盛り上がりに。また、客が自分で好きなだけ焼酎を注げる「メガホッピーセット」(590円)も導入し、超お値打ちメニューとして人気を博している。
こうした売り方に加え、何より同店が他店との差別化を強力に打ち出したのが、朝10時から夜23時までという営業時間の設定。「夜呑みはもちろん 朝呑み・昼呑み大歓迎」と謳い、意外な隙間ニーズを巧みに拾い上げている。実際、周囲には朝方まで営業する店や昼過ぎの15時から営業する店があり、さらに駅の反対側出口の北口には24時間営業の酒場もある。そうした鴬谷ならではの立地特性に着目し、店舗のある南口周辺では隙間となっていた“朝呑み・昼呑み”需要を狙って、こうした売り方を採用。平日は16時~18時、20時以降と2回のピークがあり、その他はダラダラ客が訪れる状態だが、土日は11時頃から閉店まで常に8割方埋まっている繁盛ぶりだ。目標月商は200万円で、損益分岐点は100万円。12月は月商200万円強を上げるなど、早くも目標月商を達成している。開業資金も100万円以下と、初期投資を手堅く抑えながらも決してただ安いだけの安普請の店にはせず、工夫のある売り方で魅力あふれる大衆酒場に作り上げている。
「今日は一見、明日は常連」と経営者の北野氏が語るとおり、以前の店からの常連客に加えて新しい常連客も日々誕生し、客層もグッと厚みを増している。一見、どこにでもある目立たぬ大衆店ながらも、中に入ると思わず惹き込まれてしまう魅力が満載。山手線の中でもひと際目立たぬ鴬谷駅そばの場末感ただよう飲み屋街の一角にひっそり立地し、それでいて確実に魅力を発揮し続ける隠れた実力店。新しい大衆酒場の売れるビジネスモデルという視点からも目が離せない、いま大注目の店、それが「大衆鳥酒場 鳥椿 鴬谷朝顔通り店」だ。

店舗データ

店名 大衆鳥酒場 鳥椿 鴬谷朝顔通り店
住所 東京都台東区根岸1-1-15

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アクセス JR鴬谷駅より徒歩2分、地下鉄入谷駅より徒歩5分
電話 03-5808-9188
営業時間 10:00~23:00(L.O.22:00)
定休日 不定休
坪数客数 8坪・15席
客単価 2000円
※店舗情報は取材当時の情報です。最新の情報は店舗にご確認ください。

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