ターミナル駅でもある五反田駅。東西に分かれる駅周辺にはチェーン系居酒屋などの入るビルが目立つが、通りを入ると個店も多く、酒場らしい佇まいを見せている。「酒場 それがし」も、そんな個店の居酒屋だ。エントランスには“酒場”と書かれた、ちょうちんが下がる和風2階建の1軒屋。いかにも居酒屋らしい雰囲気がある店だ。1階を入ると、カウンター上や壁面にずらりと並ぶ、日本酒の一升瓶が目を引く。さらに壁一面に大きく描かれた、十字型の日本酒のマトリックス。一目でその酒のポジションが分かる仕組みとなっている。マトリックスの縦軸の上方には“軽い”、下方には“重い”と示し、横軸は左に“冷向き”、右に“燗向き”となっている。仕切った各ゾーンには店で取り扱う日本酒の銘柄の札が並び、中央に位置するのは店名を付けたオリジナルブランドだ。そう、「それがし」は日本酒を楽しむ店なのである。とはいっても「難しい日本酒専門店ではなく、気軽に楽しんで欲しい店」と語るのは店長の柳瀬氏。
そもそも「それがし」は、日本酒が好きだった“3人の出会い”によって立ち上がった店である。同じ飲食企業の同僚であった店長の柳瀬氏と代表者の尾山氏。それに、グラフィックデザインやフロアを担当し、店を後方からバックアップする高橋氏は、尾山氏と高校の同級生。「尾山氏を通じ3人が出会った縁が、なによりも意味を持つが、日本酒が大好きという共通点が大きかった」と高橋氏も語る。「自分達ならではの、おもしろく楽しい日本酒の世界。好きな日本酒マーケットに積極的にチャレンジもしていきたい」という思いが形として現実になった店だ。
店で取り扱う日本酒は全て純米酒。現在、50銘柄を基本に、季節により20銘柄を加えている。今後は100銘柄に増やしていく予定だ。店のオリジナルブランド「それがし」は、会津の大和川酒造さんのお酒。お酒は基本、150ml入るオリジナル徳利で提供される。これは、神田にある老舗蕎麦屋さんで使われている徳利をモデルにしているという。冷酒も燗酒もこの徳利で出すが、希望があれば冷酒はグラスでも提供してくれる。日本酒は「それがし」(450円)、「貴」(500円)から、高くても「久保田」(900円)まで。ボリュームゾーンは600円、700円と手軽に楽しめる価格となっている。今後はさらに日本酒に特化する意向だが、ドリンクメニューには本格焼酎、ハイボール、抹茶割り、果実酒も並べ、居酒屋業態としての間口も広げている。
料理は店長である柳瀬氏が担当する。「クラシック・ポテトサラダ」(400円)や「自家製の燻製明太」(500円)と“手作り感”を大事にする。「和食にこだわらず、美味しいと思えるもの、思ったものを提供しているが、なによりも日本酒に合うことが一番であり、手軽につまめることを意識している」と柳瀬氏。価格は500円、600円が中心だが、「ばくらい」(700円)、「からすみ」(700円)などクオリティ重視の珍味は高価。これらのメニューからも、日本酒へのこだわりが感じられる。
今後はオリジナルの四合瓶を置き、ワインのように、ボトル売りも具体的に進めており、固定概念に囚われない、誰もが気軽に日本酒に馴染める店を目指している。
幾本もの縄を束ね組んだオリジナルボトルのラベルは、人と人とを繋ぐことをイメージしている。店名の「それがし」は礼節を忘れず、いつも謙虚な気持ちを忘れない武士にあやかったともいう。
「じっくりと日本酒を味わうように、ゆっくりとじわじわと店を育て、完成させていきたい」と3人は考える。平日17:00~19:00の間は日本酒全品半額祭など、日本酒の間口を広げるための様々なイベントを企画し、気軽に感じる日本酒スタイルを提案していくスタンスだ。「内容はその時々によって変わるので、まずは気軽にお電話を頂ければ」と語る。日本古来の酒ながらも、これまであまり日本酒に親しまなかった層をうまく取り込めるか、今後の「それがし」に注目である。
店舗データ
店名 | 酒場 それがし |
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住所 | 東京都品川区西五反田1-27-7 |
アクセス | JR 五反田駅より徒歩3分 |
電話 | 03-6417-9690 |
営業時間 | 17:00~25:00 |
定休日 | 日曜 |
坪数客数 | 12坪・30席 |
客単価 | 2500円 |
関連リンク | 酒場 それがし |