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コラム

「虎ノ門ヒルズ」のフースタ的読み方

6月11日、鳴り物入りで「虎ノ門ヒルズ」がオープンした。「六本木ヒルズ」ほどの規模感はないが、未来志向の新しい街づくりのポテンシャリティ、飲食テナントミックスのコンセプトワークの斬新さなど、目を瞠るべき要素が多い。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


「虎ノ門ヒルズ」は森ビルの都市開発プロジェクトのなかでもかなり重要だ。二つのミッションがある。まず、東京都が外国企業誘致を推進する「アジアヘッドクォーター特区」に位置し、さまざまな都市活動を最大限サポート、まさに東京を代表する新たなランドマークとして世界に発信していくというミッションを担う。二つ目は、新橋・虎ノ門エリアを通る環状二号線(新橋・虎ノ門間)の真上にあり、地上部の「新虎通り(SHINTRA AVENUE)」は街の賑わいや活力を生み出す東京の新たなシンボルストリートとして整備される計画であり、2020年東京五輪に向けた東京再生の先駆けとして、世界を代表する企業が集積し、グローバルな人々が集う街を目指すというミッション。ちなみに、「新虎通り」は、東京都の「シャンゼリゼプロジェクト」に指定されており、パリのように両側の幅広い歩道を活かしてオープンカフェ誘致が計画されている。東京都は、ここを本気で“パリのシャンゼリゼ通り”にしようとしているのだ。

24のテナントのなかで、唯一「新虎通り」に接したバル二バービの「グッドモーニングカフェ&グリル」は「シャンゼリゼプロジェクト」1号店であり、プレゼンテーションショップのような意味がある。施設内の飲食テナントは17店舗+2。+2というのは、47階から上のライフスタイルホテル「アンダーズ東京」の51階メインダイニングとなる「アンダーズタヴァーン」と最上階の52階にあるルーフトップバー「ルーフトップスタジオ」。東京初の超高層ルーフトップバーは人気必至だろう。さて、1~4階の飲食テナントだが、これまでの商業施設と違うのは、ゾーニングがバラバラで、「食そのもの」を売りにするというよりは、「ライフスタイル」の提案と「価格ではなく価値軸」を打ち出したことが斬新だと思う。2階の「虎ノ門ヒルズカフェ」は、近隣居住者、ビジネスマン、外国人、観光客が入り交る“コミュニケーションハブ”の機能を担う。「ザ・サードカフェ」(ロイヤルグループのスタンダードカフェがプロデュース)や「虎ノ門カフェ」はサードウェーブカフェという新しいスタイルを提案している。

2階の巨大なアトリウム空間にあるイートウォーク渡邉明氏の「アバーヴ グリル&バー」、その隣のADエモーション「虎ノ門アルボール」は新しい料理のスタイルを提案しているだけでなく、ロビーに突き出したラフなシーティングスタイルが斬新。カフェやバーとしても楽しめる気軽さとおしゃれさが同居しており、「その店をどう使いこなすか」は客側に委ねられている。その時のシチュエーションに応じた様々な使い方ができる幅の広さ。これこそ、「顧客価値」の提案である。4階のスペインバル「ジローナ」、創作うどん「あんぷく」はそれぞれ五反田、池袋の街場の人気店。店主のこだわりが非常に強い「価値軸」業態だ。カジュアルなこの二つの店と熟成肉専門の高級店「但馬屋」が並ぶ。これまでの大手商業施設のリーシングでは、高級店は高級店が並ぶフロアにゾーニングする。しかし、熟成肉も「価値軸」。価格軸ではなく価値軸に基づいたリーシングである。いまのマーケットでは、顧客は「価値軸」で店を選ぶ。客単価2500円の創作うどんでも15000円の熟成肉でも、価値を感じれば行く時代なのだ。このように「ライフスタイル提案」と「価値軸提案」でミックスされた「虎ノ門ヒルズ」の飲食ゾーンに未来を感じた。そして。ドラエモンならぬ「トラノモン」のマスコットのキャラクターの意味が理解できた。

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