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コラム

「外食ビッグバン」が始まった…!

6月も下旬に入った。2014年の下半期の飲食トレンドを予測する時期に来た。上半期のマーケットは、「価格軸から価値軸へのパラダイムシフト」の地固めの期間だった。ここからは、さらに選択的消費志向が強まり、「価値観」「目的性」「意味性」が店を選択するコア・モチベーションとなってくる。そして、「価値軸」の核のビッグバン(大爆発)が始まった...。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


「外食ビッグバン」について語る前に、マーケット構造がこの数年でどう変わってきたかを述べたい。私の講演を聞かれた方はわかると思うが、長期のデフレによって「ピラミッド型(頂点は高単価、底辺は低単価のバランスのとれた価格帯の棲み分けができていた)」から、「プッシュピン型(低価格帯の底辺から下層部分が横に広がった型)」へ変化。さらに高価格帯と低価格帯が分離してしまう「ミドルゾーンの空洞化現象」が起きた。すなわち、客単価4000~7000円のマーケットが極端に縮小したのだ。平均的な食材や味、盛り付けのダイニング系和食やシェフ不在のファインダイニングなどに客は見向きもしなくなった。そこに登場したのが、ハイブランドのコンテンツをカジュアルに出す「ハイクオリティカジュアル業態」(高品質低価格)。アッパーゾーンのコンテンツがミドルゾーンに降りてきて、空洞化を穴埋めする動きが始まったのだ。キラーコンテンツを投入する店が増え、「俺イタ・俺フレ」が真打的に現われ、その流れは主流となった。

私は、新しいミドルゾーン(さらにそれはロウワーゾーンに降りてきている)を「VPポジション」と名付けた。VP=バリューパフォマンス(価値の極大化)である。もはやマーケットは「CP」ではなく、「VP」を求めている。そして、顧客はSNSなどで店以上の情報を持つようになり、客同士の間でリアルタイムに「価値のシェア」が進んでいるというのが現状だ。行き着くところは「新しい体験」(エクスペリエンス)だ。顧客は日々刻々、エクスペリアンスをアップデイトしたいのである。店は勝つために、常にそれを提供しなければならない「カスタマーエクスぺリエンス(顧客価値の提供)」の時代なのだ。顧客満足→顧客感動→顧客価値と進化を遂げてきた。以上、この間のマーケット構造の変化を述べてきたが、これから起きる現象は何か。それが“外食ビッグバン”につながる爆発現象なのだ。

では、何が爆発するのか?「VPポジション」の爆発である。ハイクオリティカジュアルのトレンドのなかでミドルゾーンの空洞化を埋めてきたこの“価値軸の核”は強い臨界的な動きとなり、とうとう爆発してしまったのだ。爆発によって核分裂してしまった「VP原子」たちはあらゆるジャンル、価格帯の業態に拡散分布し始めたのである。それは「アトム」となって、活躍し始めた。一例をあげれば「熟成肉」というVP原子。それは上は客単2万円の店から下はファストフードの牛丼チェーンまで飛び火している。「フォアグラ」「トリュフ」といった高級食材もいまやワインバル業態では“新定番”に、ネオ割烹の店では「トリュフうどん」なども出現した。その結果、業態枠、客単価枠といった垣根は崩壊し、まさに「外食ビッグバン」というしかない混沌の世界に突入し始めた。顧客の行動は、「VP原子」を求めて、昨日はネオビストロ、今日はネオ割烹、明日はネオ大衆酒場と様々な業態を回遊することになる。これらの動きをチャンスにしているのが“VPリテラシ”ーのある感性の高いニューエイジ(第四世代以降)たち。「外食ビッグバン」は彼らをマーケットの主役に押し出すに違いない。

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