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コラム

2013年に吹く「新しい風」とは?

2012年最後のコラムとなるので、今回は鳥の目"の視点で、2013年の飲食業界を眺めてみたい。いったいどんな「新しい風」が吹いてくるのだろうか?"

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


2012年は、「価格から価値へのパラダイム転換」が進んだ年だった。顧客は「安ければいい」という志向を捨て、「ちょっぴり高くても価値があれば選ぶ」という考え方が定着してきた。逆に、「安くても不味いもの、手を抜いているもの」には手を出さない。飲食店でいえば、低価格を売りにする店でも、きちんとポリシーがあり中身もしっかりしている「鳥貴族」や「一軒め酒場」を選び、あるいは街になくてはならない老舗の大衆酒場をリスペクトしている。その大衆酒場感覚で通える「串カツ田中」も伸びている。2,000~3,000円であがるワインバルもすっかり街に定着し始めたが、料理に愛情のない店は選ばれなくなった。「俺のフレンチ」「俺のイタリアン」ブームは、3,000円前後の飲みマーケットでハイクオリティをカジュアルに楽しもうという意識革命を促した。これらは、長引く不況のなかで「日常の高質化」を志向する顧客(消費者)の潜在的な欲求を引き出し、それに応えて成功した例だろう。「たかが3,000円、されど3,000円」。この価格帯のマーケットでどう価値を表現していくのか、それが2013年の課題だろう。たんに「価値だ、価値をつくれ!」と掛け声をかけてもしかたがない。大阪の300円均一の浜焼き業態「わい家」は生産者と組んで、活伊勢海老を提供して話題をまいている。顧客がすぐに目に見えるかたちでの「価値の商品化」に成功している。伊勢海老を送ってきた生産者の顔や声もフェイスブックでビビッドに伝わってくる。このライブ感、レア感が勝利の秘訣だ。こうした「価値の見える化」がこれからのテーマだろう。難しく言えば、「提供価値の提案」である。これは作り手側の思い込みでは実現しない。「顧客にとっての価値」をどうつくるかがポイントとなる。どんなに優れた食材、料理技術があっても、顧客がそれを値段に見合った、いや値段以上の価値と見なさなければ、ただの自己満足である。機能が詰まったガラケーよりもシンプルなスマホのほうが提供価値が高いのである。そして、この「提供価値の提案」の力が身につけば、「価格決定権」「値付けの主導権」を取り戻すことができる。そもそも、飲食は“一物多価”の世界。「ひと皿の料理」を顧客が納得すれば、いくらの値段で売ってもいい。それを選ぶことに価値観を感じることができれば、顧客の財布の紐は緩むのである。2013年は、政権が変わり、デフレ脱却に向けて政治も経済もメディアも動く。飲食のマーケット構造にも変化が現れてくるはずだ。「ちょっぴり高くても、価値あるものを選ぶ」という消費行動が高まってくるだろう。一気に高級マーケットに行くのではなく、価値あるものを選びながら、客単価はジワジワと上がって行くに違いない。何が選ばれるのか。それは日本酒、日本ワイン、地の野菜、高質な魚貝類、肉類など「ジャパンクオリティ」系が脚光を浴びるだろう。日本人本来の食の価値への回帰。生産者へのリスペクト。地方活性化、6次化など新産業支援の動き。こうしたテーマを織り込んで新しい提供価値を創造できる店や飲食企業が2013年をリードしそうな予感がする。

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