お話を聞いた代表の安田 典弘さん(右)と、店主の安田 愛里さん(左)
大山:お店の立ち上げの経緯を教えて下さい。
安田さん(代表):娘の愛里がラストアイドルというグループで芸能活動していたんですけど、コロナになってから自粛があったりして、結局グループが解散することになったんですよね。それで「今後、何やりたい?」というところで、その時料理が好きだったんですよね。それでそれを生かしたお店をやりたい、ということでお店を始めました。
大山:それが2022年ですか?愛里さんは、料理はもうずっとやられていたのですか?
愛里さん:いや、全くやってきていないです。笑 それこそコロナ禍をきっかけに、自宅で料理をするようになってから、もうすごいハマっちゃって。食器とかも休みの日に買いに行ったりしていたんですよ。
大山:そうなんですね!それで、食堂というか飲食店をやってみたいなと思ったんですか?
愛里さん:そうですね。アイドル活動を5年間していたんですけど、結構自分の中で燃焼しきったので、次の目標が好きな「料理」に携わる仕事をしたいなって思った時に、解散が決まったので、タイミングとしてちょうどいいなと思って、こっちの(開業)準備を進めてました。
大山:すごいですね!いきなりお店を開くというのも。笑
愛里さん:そうですね。笑
安田さん:家庭料理の延長だよね。
愛里さん:料理の学校を出た訳でも、どこかご飯屋さんでバイトしてた訳でもなかったので、完全に家庭料理の延長線なんですけど、ただ健康とかそういうことに関して勉強するのが好きだったので、こだわりはありましたね。お店でもそこは変えずに、コンセプト通りにやりたいなと思ってやっています。
大山:お店をやりたいなと思い、代表のお父様に相談をしたような感じですか?
愛里さん:そうですね。自分のやりたいことが明確に見えてはいたので「何か違う仕事をやりたいんだよね」みたいな話はざっくりとしていて、そしたら『飲食店をやってみる?』っていうチャンスをいただきました。
大山:お店やりたいって言われたときはどう思いましたか?
安田さん:どうも思わないですね。いいことだと思うしね。全然賛成でしたよ。
大山:元々社長の本業は、どんなことをやっているんですか?
安田さん:建築関係なので全然関係ないんです。全然業界は違うんですけど、娘が料理好きでそれで仕事したいって言ったものですからね、賛成でした。
大山:最初に食堂という形でオープンされる訳ですが、「なぜ食堂をやろうと思ったのか」改めてどのようなコンセプトでやられてるお店なのかっていう所をお聞きしたいです。
愛里さん:食堂にした理由というのは特にないんですけど、元々料理にハマったきっかけがコロナ禍で、父の体調とか家族の体調に気をつけたいなと思って料理に目覚めて。元々父が結構、仕事の会食とかで外食が多かったので、お家で食べるご飯は、体にいいものを食べてほしいなっていうのが一番の原動力というか「料理を頑張ろう」って思うきっかけだったんです。それまでは普通に何もしていなくて。お味噌汁ぐらいしか作ったことなくて。笑
それで調味料とか、栄養面に関しては独学なんですけど勉強していて、無添加だったり、オーガニックの必要性とか、良質な油を摂ったときのメリットとか、反対に世の中の添加物についていろいろと勉強した時に、やっぱり食事って体を作るものだから一番大事なんだなって思って興味を持ったんです。
どこかに勉強しに行ったり、修行をした訳ではないので、凝った料理とかができる訳ではなく、家で作っていたご飯をひたすらSNSに載せていて『こういうご飯を食べたい』って言ってくださる方が多かったので、そこは私にしかできない家庭料理を届けるっていうことをしたいって思っていて。
ただ、こだわりたいんですけど、それに伴う調味料とかもなかなか飲食店では使えないような価格が結構高いものを使っていたりするので、最初オープンする時に質をちょっと落としたんです。価格を考えると「こだわりをどこまで貫こう」といろいろと試行錯誤してたんですけど、こだわりがなくなっちゃうと「安く美味しくっていう大手には敵わないな」って思って、私は1個1個全部手作りで、質を下げることなく、そういうものを求めて来てくださる方を対象に、料理を提供していこうって決めて、そのコンセプトは変えずにやっていますね。
大山:ドレッシングとかも全部手作りですか?
愛里さん:はい、全部手作りです。
大山:すごいですね。
愛里さん:漬物も全部。買ってくるものは本当ないですね。
大山:お味噌は?
愛里さん:お味噌はこれちょっとこだわっていて、有機の希少価値の高いお味噌を使っていて、市場には出回っていないものを使っています。
大山:最初はそういう食材とかにはもちろん出会えないわけですよね。どんどん勉強しながら出会っていくんですか?
愛里さん:そうですね。周りにも結構健康に気をつけてる人が多かったので、紹介してもらったりしてだんだん取り入れていきました。
大山:探究心がすごいですね。あとは干物と豚肉、こういうのも出会いがあったりするんですか?
愛里さん:地元が干物で有名な小田原なんです。小田原の干物屋さんは何軒かあるんですけど、薄利多売の大きな会社、大きな工場でやってるところとかもたくさんあって、でもうちが使っているものは、本当に小さな工場で1枚1枚手作業で塩と水のみで完全無添加で作っている干物なんです。いろいろな干物屋さんがあったけど、うちの家庭ではもうそこしか食べてないってぐらい「干物といえばここでしょう」って、子供の頃から食べて育った干物なんです。やっぱり美味しいので「たくさんの人に食べてもらいたいな」って思って直談判して仕入れさせてもらっている感じですね。
こだわりの真鯵干物は卓上で10分ほど焼き上げ、あつあつを提供。中骨はあらかじめ取ってあり、カリカリ食感の骨せんべいのような食感が楽しめる一工夫も。
安田さん:豚肉はもち豚という豚で、僕の友人がそこの工場をやっていて。国内産の甘みの強い美味しい豚肉です。
愛里さん:生姜焼きが結構人気で、うちはあえてしゃぶしゃぶ用のお肉を使っているので柔らかくて、甘みもすごくあるお肉なので、普通の生姜焼きのタレよりもオーガニックシュガーではあるんですけど砂糖も控えめにしています。
脂の甘味が特徴的なもち豚の生姜焼き。オーガニックシュガーを用いたやさしい味付けがご飯やお酒のお供にぴったり。
大山:麻布十番という土地を選んだ理由は、どういうところにあったんですか?
愛里さん:私がずっと六本木辺りで仕事をしていたので、そういう繋がりが途絶えないようにと思って。
安田さん:それでちょうどこの物件が新築でたまたま出たので。お店の大きさもちょうど良かったかなと思います。
大山:基本はランチ定食と、夜もやってらっしゃいますか?夜も定食メインですか?
愛里さん:はい、夜もやってます。両方を出せるようにしていて、ふらっと来てくださる方はみんな御膳で食べられる方が多くて、シェアするより一つの定食の方がまんべんなく食べられるので、御膳の方が出す率は高いですね。
お酒を飲まれる方は1~2杯ビールとかハイボールの方もいますし、干物が結構塩味のバランスがちょうどいいので、干物1枚でお酒5杯ぐらい飲まれる方もいます。
大山:いいですね。
愛里さん:結構いいつまみだと思います。骨とか皮、頭まで全部美味しく召し上がっていただけるので、皆さんいいつまみにしてくださっています。
大山:お店には、どのくらいの頻度で出られてるんですか?
愛里さん:ずっとです。私が作っているので。営業日=出勤日みたいな感じです。よっぽどのこと(体調不良とか)がない限りはこっちが優先なので。
大山:すごいですね!今も芸能活動されているんですよね?
愛里さん:はい。でもそれは安田食堂を潤すためにやっているので、本業はこっちです。レッスンとかも、月・火の夜しかやっていないので、昼間にしてもらったり、定休日に入れてもらったり、朝一の9時から11時とかにして12時のランチ営業までには間に合わせるとかしてもらっていますね。
大山:本気ですね!知らない人は『片手間でやってるんじゃないの?そんなうまくいくわけないじゃん』みたいに思っているかもしれないけど、全然違いますね。
愛里さん:知ってくださってる方は、向こうを片手間だと思っていると思います。でも、こっちが優先なので。
大山:ハマっちゃって、職業変わってますからね。笑
愛里さん:確かに、全然関係ない仕事ですよね。笑
でも、アイドル業も飲食業も、これからはファンを作る時代だと思うんですよね。『この人に会いに行く』『この人の作ったお料理を食べに行く』そういう意味では、アイドルも飲食業も同じだと思っていて。お客様・ファンを大切にするという共通点がありますよね。
大山:その本気度、熱量が本当に大事だと思います。大変じゃないですか、飲食業って。何から何まで自分でやらなきゃいけないし、料理も接客もってなってきちゃうと。
愛里さん:でもお料理が好きなので、仕込みがある方が楽しくて。ロスを常にゼロにしているんです。なので出来たてをご提供するようにしています。お客様がなかなか少ない時期とかにお料理が作れないことの方がストレスなので、お店が潤っている方がやっぱり楽しいですね。
大山:お店を3年やられて、お店の状況はどんな感じでしょうか。
愛里さん:前まではファンの方も多かったんですけど、最近は麻布十番の地元の方が来てくださることもだんだん増えてきて、コンセプトがずっと同じなので、普段会食が多くて外で食べてる方が健康的なものを求めて来てくださることとかが多いので、こういう感じで浸透していったら嬉しいなっていう気持ちです。町の食堂になったら嬉しいです。
大山:なるほど、いいですよね。決して安売り価格ではなく「そのぐらいこだわってます」というところが。今はおひとりでお料理作られているので難しいと思うんすけど、今後の展望は何か考えたりしますか?
愛里さん:新しいお店というよりは、ドレッシングがすごい人気なので、いつか商品化したいなっていうのはあります。手作りの生ものなので日持ちがしないので、なかなか難しいとは思うのですけれど。フルーツとお野菜を使っていて、オイルに結構こだわっているので。
ただ、うちに来てもらえる理由にもなるので、ここでしか食べられないっていうのも貴重だなとは思うんです。
大山:ではまずはお店に来て、ここでしか味わえない愛里さんの味というものをたくさんのお客さんに楽しんで欲しいですね。
本日はありがとうございました!今度、夜に遊びに来ますね!
と、言うことで・・・・・・
【編集後記】
後日、お店のオープン時間に突撃してみると・・・
元気にお料理を作る愛里さんがちゃんといました!(ごめんなさい、決して疑っていたわけではありません。笑)
伺った日は予約も複数入っている模様で、まさに繁盛店といった感じでした。愛里さんの明るく楽しい接客は、まさに飲食人そのものでした。新たな挑戦を決断した元アイドルの姿は本当にかっこよかったです。これからの活躍にも注目していきたいと思います。(聞き手:大山 正)