2022年から、お店を切り盛りしている岸氏。
最初にデリバリー業界に参入した時はどんな風に認識していましたか?可能性を感じていましたか?
岸氏:デリバリーの可能性で言うと、最初は僕がここ始めさせていただいたとき、売上もそこまでなかったですし、まだ「UberEatsが今後、伸びていくだろう」みたいなデリバリー市場としても初めのときだったので、売上も大体月で250万円ぐらい売れてたかな、ぐらいのところからのスタートでした。その時は今後を信じて業態を増やしながらやっていけばうまくいくのかな、といった試行錯誤をしながらやっていた感じです。
大山:このお店は、コロナ期間中のいつからの運営でしたか?
岸氏:2022年の1月ですね。この場所を引き継がせていただいて。
大山:そこから翌2023年の春くらいでコロナがちょっと落ちていくんですよね。そこでどのようにに潮目が変わっていきましたか?それはコロナの感染状況もあると思うし、デリバリーの進化の状況もあると思うし、業態の強みもあると思うのですが、どんなふうに推移していったのですか?
岸氏:2022年頃と現在とで違うところといえば、売れる業態を作りづらくなったというか、単一業態で、それこそ僕らがやっている「豚汁と米」という業態に関しては、出せば1日で売上4万円とか5万円とかそのぐらい売る業態をコロナ禍では、比較的簡単に作れたんですけど、やっぱりコロナが終わって飲食店に人が戻っていくようになってからは、単一業態=専門業態での売上が全体的に作りづらくなっていった感じがします。
単一業態での売上が120万円とか130万円という、以前は取れていた売上が今では取れなくなり、いかに間口(業態)を増やしながら売上を伸ばしていくかという方向にシフトをして運営しています。
大山: 具体的にはどのようなことをされているのですか?
岸氏:デリバリー事業は、狭いキッチン、限られたストックというところで、オペレーションがとても重要なんですね。なので、「豚肉」であったり「韓国スープのペースト」であったり1個の食材・素材を上手に流用しながら、オペレーション・作り方は似ているけれど、見栄えや見せ方を変えて、複数の業態として提案していくというところに力を入れていきました。
元々始めたときは10業態ぐらいしかやってなかったのですが、今現状で言うと45業態ぐらいこの3坪のキッチンででやっています。物置のスペースを入れても合計8坪ほどです。
大山:それはすごい!現在、導入しているDXツールはどのようなものがありますか?
岸氏:一元化管理の「Camel」を使いながら、デリバリーアプリは「UberEats」と「出前館」と「Wolt」ですね。
一元管理アプリを使うことで、タブレットをスッキリと整理している。
ズバリ売上は現在どれくらいなのですか?
岸氏:今年の10月の売上で900万円/月額ほどです。内訳として土・日は40万円ぐらいですね。出前館込みで40~42万円ほどで、注文件数で言うと大体180件〜190件ぐらいで注文単価が2,200円ぐらいですかね。
平日は月・火曜日がデリバリーとしては売れると言われていて、月・火曜日がだいたいUberEatsと出前館込みで30万円ぐらいです。なぜ月・火曜日が売れるかというと、もしかしたら月曜日は飲食店休みのところとかも意外と多かったりするので、それの影響かもしれませんね。下がる日の平日で23~25万円ぐらいを推移しながらというような感じですかね。
大山:原価などその他経費はどのような構成ですか?
食材の原価でトータル25%くらい、UberEatsの手数料で37.8%、広告が7か8%ですね。諸々合わせていくと人件費を除いても80%とかいってしまうんです。
なので、業務スーパーやハナマサに買い出しに自ら行って仕入れを安くしたり、例えばシチューの元はケースで買わせていただいて、といったそういう原価を抑える工夫というのは徹底しています。食材のロスが出ないように今使ってる店内の食材を使いながら業態を増やしていくということをテーマとしているので、食材を上手に循環させて常に新鮮なものを提供できているかだと思います。
大山:それはもの凄いですね。デリバリープラットフォームの売上比率的には?
岸氏:UberEatsが9割ぐらいですね。残りの1割の中で8割が出前館で2割がWoltといった感じです。
大山:完全にコロナ明けたのが今年ということで、外食業界が盛り上がってきている中で、デリバリーは「コロナ渦の産物なんじゃないか」と言われてましたけど、それに対してはどう感じますか?
岸氏:そうですね、やっぱりコロナがあったこともあると思うんですけど、UberEatsをはじめとするデリバリーの楽さ・便利さといったところをユーザーさんが感じてもらえているような気がするので、そういうこともあってデリバリー業界としてユーザーが右肩上がりで増えていってるんじゃないかなと思います。
市場としても、かなりいろいろな方がデリバリー事業やゴーストレストランをやられたりされている中でも、僕らは売上として右肩上がりに伸ばし続けることができているので、それを考えると市場が大きくなっていて、盛り上がってきてるんじゃないかなと思います。ユーザーさんたちもデリバリーのおいしくて便利だと感じてもらっていると思うので、今後も利用し続けていただけるのかなと思います。
大山:なるほど。売れるデリバリー店と、売れないデリバリー店の差はなんだと思いますか?デリバリーとしての成功する秘訣、失敗する人の特徴っていうのを聞きたいですね。
岸氏:そうですね。僕らは営業時間が平日が朝の9時から、夜中の1時までやってるんですね。土日は1時間前倒しして、8時から24時で基本的営業しているんですけど、やっぱり毎日地道に営業し続けるというか、営業時間を変えずに、僕らの強みとしては朝8時からやってるので、土・日曜の朝8時2分からファーストオーダーが入ってくる、なんてそんなレベルなんですよね。
なので、ユーザーの方々がその時間帯に頼みたいっていうニーズがあって、そこに対して僕らとしてニーズに答えることができているので「やれることをやり続ける」というか、当たり前ではあると思うんですけど継続していくことが大切だと思います。そこを今のところ3年間ぐらい徹底して25時までやって朝8時から開けてやっているので、常連のお客様がついてくださっているという感じです。
一方で、売れないお店の特徴は、UberEatsは簡単に注文が入ったら一時停止で止めることができるので、お店がイートインのお客様で忙しいから停めてしまう、そういうお店は注文が入りづらくなるんです。停めずに忙しくても頑張れるかっていうところがかなり重要になってくるかなと思います。
もちろん注文が入って、ドライバーさんを待たせすぎても駄目なんですけど、UberEatsはある程度オーダーを遅らせながら調理することも可能なので、それをストレスに感じる人もいるかと思うのですが、少しお待たせしながらでもオーダーがあったものについては全部届けてあげたいという想いで、割り切ってやっています。
基本的に外食店をやっている人たちは、お店の状況もあると思うので意外とお店が混んできたら、一旦デリバリーの注文を停めちゃうと思うのですが、そうするとUberEatsの表示順位的にも上位に上がってこなくなってしまうんですよね。
前の1週間の結果が翌週に反映されるらしいです。だから、この1週間頑張らなかったら翌週は上に上がってこない、なんてことが起きるんですよね。
そうなるとより注文が入らなくなる。注文入らなくなくなると「これやってても意味ないよね」と停めちゃう。そしてそのまま売れないみたいな感じで、デリバリー自体を辞めちゃう。そんな悪循環になってしまっていると思います。
大山:朝8時から1時までをどういうシフトで回すんですか?
岸氏:シフトとしては、1日の中で休憩回しながら自分も入りますし、あとはバイトの子で1日通しで入るときもあれば、朝1本入ってもらって、夕方ぐらいに僕ともう1人でとか。夜の方が基本的に売上として多いので、夜に2本入れながら朝一で仕込みだったりして回してることが多いですね。
僕が入って2.5人/1日ぐらいで回しています。土日は常に2人いないときついので、常に2人で回しています。3人以上いても、狭いキッチンなので邪魔になっちゃうこともあるので。
大山:業態としては、どのような業態が今売れていますか?
岸氏:現状でいうと、寒くなってきたのでクリームシチューの業態が売れていていますね。
あとは豚汁は相変わらずヒット業態で継続的に売れてますし、コムタンスープやソルロンタンスープとか韓国系のスープもやっぱりお客さんがついてるので、継続的に売れてます。
昔からやっている、かすうどんもかなり売れています。肉吸いやお茶漬けなども、この時期とても良いですね。
ずばりゴーストレストランはおすすめできますか?店内飲食を伴わないデリバリーですね。
岸氏:そうですね、僕もリアルな飲食店をゆくゆくは出してみたいなと思うんですけど、デリバリーとかテイクアウトといった店外売上があると、店内売上が多少弱くても補填がきくというか、そういった考え方もできるかなと思います。家賃や人件費、水光熱費などをそのまま同じで考えるとすれば、デリバリーを取り入れた飲食店経営をやられた方が当然、利益率は高いですし、赤字になりづらい店舗作りはできるのかなと思います。
大山:なるほどですね。デリバリーのみを進めるのではなく、既存の飲食店にデリバリーを取り入れていくと?
コロナ禍によく聞かれていたゴーストレストランっていうのは、客席がない飲食店レストランのことがゴーストレストラン。もちろんそれで頑張られている方も多くいらっしゃると思うのですが、僕らがやっていきたいのは、客席がないレストランよりは客席のあるレストランで、デリバリーの店外売上と店内の売上の両方を作る新しい経営の形です。
どうしてもUberEats等、デリバリープラットフォームは配達の手数料が高いです。45%とかかかってしまいますよね。そうすると、例えば、唐揚げでも普通にお店で買ったら800円のものが、1,300円とかに設定しないとならないじゃないですか。
大山:飲食店とデリバリーを上手くいくためには、どういうお店、どういう店選びをした方が良いのでしょう?
岸氏:例えば、このお店は賃料が20万円なんですけど、やはり〜20万円くらい賃料の物件でかつ、UberEatsが売れる市場で物件を探すことをお勧めします。家賃比率が今だと2.2%ほどですが5%以内ぐらいを目指した方が良いかなと。そうするとデリバリーだけでも、利益は残しやすいかと思います。
大山:物件は必ずしも一等立地でなくていいですか?
岸氏:はい。一等立地じゃなくても、UberEatsの商圏として強いところは立地というよりかは半径2.5㎞圏内が全て商圏となるので、例えばここから遠いお客様だと東雲とかお台場、豊洲の方まで配達に行くっていう配達パートナーの人もいたりするので、そういった少し視野を広げた物件探しをされるのが良いかと思います。
今僕は埼玉の草加の方に住んでるんですけど、草加はすごいデリバリー強いんですね。なので、草加のエリアなども、まだまだこれからUberEatsは伸びていくと思うので、そういったエリアもすごい魅力的だなと思います。住んでる人もかなり多いので、そういう商圏もいいんじゃないかなと思っています。
今後、個人としての目標・展開をお聞かせください。
岸氏:1つ目は、まずこのお店が定期借家契約の物件ではあるんですけど、定借満了までは継続して頑張っていきたいなと思います。今現状900万円というところまで売上を作ることができてるので、1000万円を目指してやっていきたいなというところがまず1つですね。
もう1つはそろそろ3年目になるので、他の場所で展開できるように、次は先ほど言ったようにデリバリー専門店というよりか飲食店+デリバリー形態のお店に挑戦していきたいなと思っています。そんなようなことができればいいかなと思います。
デリバリーをこれから始めたいという方がいましたら、僕らの成功体験を提供し経営をサポートをする事業もやっていますので気軽に声をかけてください!
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大山:ありがとうございました!
取材後記
コロナ禍で脚光を浴びたデリバリー業界。実は着々と伸び続けていました。コツコツと頑張る岸氏も立派なオーナーとして頑張っていました。コロナ中からデリバリー業界をウォッチしてきた中でまさに今回の記事中にあった通り、飲食店経営の新しい形としてデリバリー・テイクアウトといった中食の領域を取り入れて生産性を上げていくことに、私自身もとても共感しています。今後も外食プレーヤーをウォッチしつつ、中食で頑張る人たちも注視していきたいと思います。(聞き手:大山 正)