スペシャル企画

【噂の繁盛店】六本木の雑居ビルの3階。宣伝なしで坪売上30万円超。「三河台みゆき」繁盛の裏側に迫る。

新企画第二弾は「噂の繁盛店」です。スバリ、ジャンルやエリアを問わず、老舗や若手のお店にもこだわらず「繁盛店」にフォーカスして取材をする企画です。実は意外にもフードスタジアム創刊20年間で、やってこなかった企画です。フードスタジアムは、オープンから6ヶ月以内のニューオープンのピュアな飲食店をつぶさにピックアップして、取り上げてきました。その中で「こんなすごいお店があったんだ!?」といったことが多々ありました。そんな読者の皆さんが気になる街の繁盛店を、ピックアップしてインタビューしていきます。

第一回目は再開発が進む六本木エリアの繁盛店。駅周辺の飲食店が減少し、少々寂しい印象のあるかつての繁華街で店舗を増やし続けているのが「SASAグループ」。ワインバーを始め、炭火焼割烹、高級鮨店、ルーフトップBBQ等、コロナショックを気に出店スピードを上げている同グループの最新店舗が、六本木の中でも特にナイトシーンの需要の高い三丁目エリアの雑居ビルに出店をした「三河台みゆき」です。広告宣伝をせず、オープンから右肩上がりに業績を伸ばし続けている、まさに繁盛店。その大ヒットの秘訣に迫るインタビューです。


お話を聞いた店主のみゆさん(前列左)、代表の笹裕輝さん(後列左)、飲食事業部責任者の植村さん(後列右)、スタッフのちほさん(前列右)

どういう経緯で、このお店ができたのか教えて下さい。

笹さん::ここは元々自社のバーの店舗でした。当時、収益が微妙だったので、ここを飲食店に業態変更しようと考え、誰に任せようかと思った時に、その時はバーのスタッフだったみゆと面談して、みゆの夢が自分のお店を持つことだったんですよね。みゆは、元気で飲食店経験もあってやる気もあって適任だなと思い「じゃあやってみようか」ということで決まりました。

大山:業態は、どのように決まったんですか?

笹さん:なんせ僕はおでん屋がいいと。言い方悪いですけど簡単やろと。笑 おでんを屋台っぽい感じで作っちゃえという感じで。僕が初めに描いたお店のまんまですね。コの字型カウンターがあって、奥にテーブルがあって。初めは個室を作ろうかとかも思いましたが、全くいらなかったですね。

みゆさん::私もこの箱じゃなかったらやっていなかったですね。元々自分の手の届く範囲で、全部テーブルも見れてカウンターに囲まれてっていうのが理想だったので「やりたいです!!」と言いました。

カウンターを囲うように常連さんで賑わう店内。

 

笹さん:僕たちが独立したお店内がめちゃくちゃクレイジーだったんです。大型テレビが複数設置してあって、スポーツ放映もして、21時以降はカラオケができるっていう。Noza Cazaという1店舗目に出したお店です。今はもうないんですけど、そういったカオスなお店をもう一回作りたいなっというところで、テレビの位置はめちゃくちゃ口出させてもらいました。笑

 

今回おでんと決まりましたが、何か他にやりたいことはあったんですか?

みゆさん:そこは決まってなかったんですよ。元々おばんざい系でやれたらいいなと思っていたくらいで。お客様から「なんで、おでんなの?」って聞かれた時は「上からの指示です。」と言ってます。笑

大山:店名にも、何か想いがあるんですか?

笹さん:店名におでんという名前はマーケティング的に入ないれほうがいいという判断で、名前はなんでも良かったのですが、おでんとか居酒屋っていう呼称は入れない、かつ、元々ここ六本木三丁目の地名が「三河台」っていう名前だったんです。それと店長である「みゆ」と、社長である僕の「ゆうき」で「三河台みゆき」にしました。一瞬で決まりましたね。ノリですね。笑

みゆさん:そのおかげでみゆきさんですかって、めちゃめちゃ聞かれます。笑

 

みゆさんが考えるお店のコンセプトってどんな感じですか?

みゆさん:みんなが楽しくですね。それ一択でした。

大山:料理のセッティングは、どのように決めていったのですか?

みゆさん:料理のセッティングは総料理長がいて、基盤を作ってくださって、それにプラスして私がやりたいものを徐々に足していった感じですね。

大山:毎日結構仕込みを頑張ってますよね?

みゆさん:そうですね。おでんの出汁ですね。他にもありますけど。1人でやっていた時は、何時に来たらいいかわからなくて。

大山:ちなみに、何時に来ていたのですか?

みゆさん:最初の頃は午後2〜3時には出勤していましたね。笑

大山:それで午前2時〜3時まで営業して、ですか?

みゆさん:そうですね。そんな感じでやってたんですけど、これは事前に仕込みをしてたらもっと寝ていられる。ということで最近は仕込みをして、帰るようにしています。

大山:営業中に仕込みを?

みゆさん:そうですね。営業中にしています。あとはスタッフも入ってくれたので、存分に甘えて。笑

 

お店はみゆさんに全て任せている感じですか?

笹さん:初めの1週間くらいは結構口出したかもしれないですね。「おでんは、自分で取るでええやろ」とか、「お客様も手伝いたいから、やらせたらええやん」とか。LIVE感が良いんじゃないかなということで。

あとは、うちの全店舗をマネジメントしてくれているのが、飲食事業部責任者の植村くんですね。彼は元々近くで居酒屋をやっていて、今も近くでバーをやってます。

大山:一緒にやろうとなった経緯は?

植村さん:社長と出会ったのは6〜7年前ですね。僕は社長が働いてるお店のお客さんでした。

大山:それはどこですか?

植村さん:歌舞伎町ですね。その時は特別仲良いとかではなくて、顔合わせたら挨拶したり乾杯する程度でしたね。僕も元々夜の商売だったんですけど、辞めるタイミングで次にやった仕事が飲食で、西麻布の鍋屋さんだったんですが。そこにちらほら来てもらっていて。そのタイミングで社長もNoza Cazaをオープンしていたので、営業終わったら遊びに行くという関係になっていきました。僕はもう一軒歌舞伎町で飲食店をやっていたんですけど、コロナのタイミングで一旦閉めてしまいました。コロナが明けてきて六本木に物件が出たので、もう1店舗、最後にチャレンジしてみようと思って開業したのがBARATIE(バラティエ)です。

大山:コロナ中ですか?

植村さん:コロナは明けてましたね。1年前なので2023年です。

 

植村さん、最初は独立オーナーとしてやるわけじゃないですか。今はSASAグループのマネージャーもやっているのはどういった経緯ですか?

植村さん:先ほどお話ししたBARATIEが調子が良かったので、もう1店舗やろうと思ってたんですよ。

大山:この街で?

植村さん:この街か、どこか他、渋谷あたりで探したんです。ちょうど渋谷の東急の横ぐらいの場所に申し込んだのですが、最後は大手に負けてしまって。そこをやるとなっていたら(SASAグループ)にジョインできていないんですけど。そのタイミングで、社長から「店舗も増えてきて管理する人間がいなくて…」と相談ベースの話で普通に飲んでたんですね。僕もお店をやっていたので、「六本木どうなんですかね」と話してる中で、社長の得意の「一緒にやったらええやん」となりまして。笑

僕も店舗展開はやっていきたかったんですけど、目的がお金だったので夢がなくて。そこで圧倒的ビジョンがある、いやビジョンしかない笑、ビジョンだけで生きている社長が「俺の夢に乗っかれ」と言ってくれて。それはおもしろいですね、と。社長の夢は僕の夢でもあるし、裕輝さんの夢でもあったので。

笹さん:その人会いたいな〜。笑

植村さん:それが今年の7月からなので、3ヶ月前ですね。

 

このみゆきは、オープンした後どんな感じだったんですか?

みゆさん:正直本当に記憶がなくて、初めの頃。怒涛だったので。忙しかったと言えばそうなのですが、慣れてなかったので夢中でしたね。

笹さん:初めの2〜3ヶ月は「売り上げのことは全く気にするな」って言ってました。とにかく「来たお客様を楽しませることだけを考えろ」と。利益なんてみなくていいと言ってました。そう言いながらも、利益は出てたんですけど。

お客様の単価が低いとか、今日売り上げが低かったとか、そういったことは最初の3ヶ月は考えるなと。とにかく「目の前のお客様にコミットしろ」と言ってましたね。おかげで今は驚異のリピート率で、どのくらいだったっけ?

みゆさん:7割ですね。

大山:すごいですね。

笹さん:唯一マーケティング部署が怒られてる店舗ですね。笑 何もすることがないという。

 

リピートを促すために、また次来てもらうためにやってることは?

みゆさん:まずは自分も楽しむことですね。色々他のお店を勉強でまわった時に、店員さんが話しかけられやすいお店であることは、まずは自分たちが元気でいることだなと感じたんですよね。店員さんが楽しそうじゃないお店は、シンプルに声をかけずらいですよね。お会計にしても注文にしても。こちら側が楽しそうにしていれば話しかけやすいなって感じたので、とりあえず元気でいることだな、というところに至りました。

笹さん:素晴らしい。この元気が!笑

大山:素晴らしい!

 

SASAグループ的なリピート客を捕まえるセオリーを、いくつか教えてもらえますか?

笹さん:まずお客様の名前を呼ぶ、呼ばれるというのがコミュニケーションの第一歩だと思っていて、それは絶対ですね。あとは全店舗のスタッフに言ってるんですけど、Googleとか食べログの口コミで3とか4はいらない。5か1にしてと。めっちゃ嫌われるか、めっちゃ好かれるかの両極端でいいから、初めて会ったその瞬間にその人の心の深いところまで土足でがガンガン行けと。うちの店舗は面白くて、口コミで1がついたら怒られるじゃなくて、「どんな感じで、それついたの?」って聞いてます。ほぼほぼ怒られることはなくて、たまに外国のお客様に、差別的とか書かれてしまったことがあった時なんかは、それはちゃんと直そうとなりますけど、だいたいが「それは仕方ないんじゃない?」ってことが多いですよね。料理長の声がでかすぎるとか、デートに向いてないとか言われても、それは仕方ないですもんね。今日会った人がまた明日も来たいと思ってもらえることが大切ですよね。

常連さん、お客さんのメッセージでいっぱいのお店の壁。

おすすめのメニューを教えて下さい。おでんはもちろん、その他に「うちきたらこれ!」というメニューは?

みゆさん:出汁巻き玉子なんじゃないでしょうか。注文が入ってから、おでんの出汁で目の前でお作りします。

大山:出汁巻き玉子ですね、美味しいですよね。

笹さん:今からだもんね、おでんの時期は。

みゆさん:そうですね。冬がまだ未経験なので。お客様がどれくらい来られるか、ちょっと怖いですね。

笹さん:たぶんとんでもないことになるんじゃない?笑

おでんを軸にちょっとずつ美味しいものをラインナップ。

 

ズバリ実際このお店をオープンしての満足度、売上など言える範囲で教えてください。

笹さん:売上は13坪・毎月税抜平均400〜450万円ですね。冬はもうちょっと上がるかもしれないですけど。

大山:完全に繁盛店ですね。

笹さん:最初、オープンする前に800万円とかいけるんじゃない?と言ってたんですけど植村がそこの数字を見ちゃったら、そうなっちゃうから辞めましょうと。サービスが疎かになっては元も子もないですからね。

大山::13坪2人でやっていて400万円はすごいですね。

笹さん:ここ家賃が18万円なんですよ。全部公開しますよ。笑 席は20席ですね。

 

ドリンクのこだわりをすごく感じるんですけど、そこはありますか?

みゆさん:ただただ、私の好きなお酒を入れてます。

大山:どの辺りに、こだわりがありますか?

みゆさん:日本酒だったら辛口が好きなので辛口が多めだったり、「となりのおくさん」シリーズは見た目のラベルの可愛さとか、お客様からよく聞かれるものを入れたりしています。

みゆさん:他のお客様が頼んでるのをみて、「あれは何?」って思わせたもの勝ちだなと思って。

 

何でも答えてくれるということで笑、原価率はどれくらいなのですか?

笹さん:直近の数字なのですけど、原価率(フード・ドリンク)が驚異の19%なんですよ。まったく意味がわからないです。おでんってすごく良いですよね。あとここは六本木なので、ドリンクも安売りをする必要がないんですよね。しっかりと価値を提供すればこたえていただける、それがこの街だと思います。

 

すごいですね。その利益を経てどういう風に今、思ってますか?

笹さん:やっぱり僕らはこの道だなと。僕らのビジョンは「おもろい奴らで、おもろい世界を創る」というビジョンなので。おもろい世界創りっていうのが事業と店舗のコンセプトになっていて、その上でおもろい奴がいるっていうのが大事ですね。

それと本当にうちは、嘘をつかないかどうか、素直かどうかを特に大切にしています。過去に何かあったとしても、この心がいかにピュアかというところなので。来年ニューハーフになろうとしてますとか、日本語話せない外国人とか、うちはいろんな人がいますよ。

僕がほぼ曝け出しますね。僕はこういう人生を歩んできて、こういう失敗をして来た。「うちは嘘つかなくていい会社なんだけど、今のうちに言っておかないといけないことない?」って。向こうができる限り言いたくない、隠したいことっていうのを引き出しますね。僕が普通の人が恥ずかしいってこと全然全部言っちゃうので。嘘ついたり陰口言ったりするのは、言いにくい環境ってことになるので気持ち悪いんですよね。それなら言おうよってなります。

飲食業って究極に人が輝くビジネスだし、僕はこの飲食業界が今後店長の月給が100万円とか、ドリンク一杯1,500円とかになっていくと思うんです。他の業界は低価格競争とか、モノが溢れて当たり前になっていく中、接客、人から得られるサービス、飲食店というのが今では考えられないくらい価値が上がっていって、この子達の給料が一般社員で60万70万とか、店長で100万とかになってくると思うんですよね。やっぱりそれを1番やりやすいのが、全世界から人が集まる六本木というこの街だと思うんです。

うちのグループでいったら俳優やアイドルなど芸能系の方、インフルエンサーとかグラビアアイドルの方が使ってくれたり、リピートで来てくれたりっていうのが、よくあるんです。そういう方達がSNSをあげけてくれたり、楽しんでくれたりしているのは、僕らがモノとか料理にめちゃくちゃこだわるんじゃなくて、そこに人の価値っていうのを入れてるからおもしろがってくれて、そのお客様たちが発信してくれて、また来てくれるっていう良いスパイラルに繋がってるんだと思うんです。僕の仕事は人を常に磨いていって、人が活躍するように、教育であったり採用に力を入れることだと思っています。

 

最後に今後の展望についてお聞かせください。

笹さん:一旦のプロジェクトは六本木です。何店舗ということじゃなくて、プラットフォームをやりたいんですよ。僕の想いを同じビル、隣の店も全部そうなったらいいやんと。組合商店街じゃないですけど。同じ理念のもと全店舗がつながって仕入れとか集客とかっていうのを共有し合ったらいいと思ってるので。最近話してたのは僕、港区長やろうかなって。港区長やるほうが、早いかもしれない。冗談ですけど。笑

大きい夢は、そんな形でこの街をまとめたいなと思っていますね。

 

みゆさんのこのお店のこれからと自分の展望をお願いします。

みゆさん:このお店は変わらず元気で。現状維持っていう意味の変わらずではなくて。お客様が来てくださるような、安心できる場所であることが1番だなと思っています。お客様から帰り際に「また来るね」っていうお声もいただいていて、そういうお店であり続けること、元気になって帰ってくれることを変わらず続けていけるようにしたいですね。

大山:社長ですね。笑

笹さん:いや、すごいですよ。

みゆさん:私もこれからの自分は、自分のお店を持ちたいです。自分が楽しくいられるところを作って、この子(スタッフちほさん)も元々飲食をやってなかったんですけど、仲間に飲食の道に走って楽しいなって思ってもらえる、そんな人になりたいです。

出汁巻き玉子の作り方が、最近めきめきと上達してきたスタッフのちほさん。

 

笹さん:でかいね。夢が広がったね。

みゆさん:広がりました!これからも頑張っていきます。

大山:目の前のことを頑張る感じがすごいですね。これ、記事をあげたら飲食関係がたくさんくると思いますけど、頑張って下さい!!笑

みゆさん:すみません。ぺーぺーなのでって言います。笑

大山:ありがとうございました。

 

◾️三河台みゆきのInstagram

 

取材後記

コロナショックの前後で開発やビルの立て直しによって街が縮小、様変わりしてしまい現在は少々寂しい印象もある六本木ですが、そんな4年の間に出店を続けているのが今回インタビューしたSASAグループです。すでに立退が決まっていた創業1店舗目のときにコロナが訪れ、今後の展望に苦悩をしていた笹さんを私は覚えています。最新店であるこの三河台みゆきはオープンした直後から創業店である「NozaCaza」とどこか同じような「イケる!」雰囲気がしていたお店でした。「明るく元気で嘘をつかない」そんな笹さん率いる同グループを今後も応援していきたいと思います。(聞き手:大山 正)

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