ドリンクの「ハイバリュー化」が進行。良いものは多少値が張っても評価される
新井氏:僕はドリンクの「ハイバリュー化」が進んでいるように感じます。大衆向けの安かろう悪かろうの品がもてはやされるのではなく、特定のターゲットに向けた価値の高いものが、多少値が張っても評価されるようになってきていると感じます。多くの人にとって70点のものではなく、特定の人にとって100点が取れるものの方が強い。フードは以前からこのハイバリュー化が進んでいましたが、ここ3~4年でドリンクもその傾向が強くなっている。
綱嶋氏:確かに。「寿司とワイン サンチャモニカ」もSNSを見た20代のお客様が多いですが、若い方でも、よいものにはしっかりお金をかけるんだな、という印象があります。うちの店はアラカルトで楽しむなら単価4000~5000円で済むところ、20代でも8000円のコースを頼んで、しっかり飲み食いする人も少なくないのに驚きました。ワインとすしのペアリングを打ち出しているのですが、今の20代はワインをいろいろ飲んでて、知識もある方も少なくない。若い方でも、自分がいいと思ったものにはちゃんとお金を払って楽しむ習慣はあると思います。そう思うと、巷で言われる「若者の酒離れ」もそこまで深刻にとらえなくてよいかなと。しっかりと価値のあるものを提供すればきちんと若い人も評価してくれます。
高丸氏:僕もそう思う。飲む人は飲む。しっかりとお客様に刺さる店づくりをしていれば、自ずと評価もついてくるはずです。
新井氏:コロナで外食の回数が減り、一回の外食に強い意味を見出す人が増えたことも関係しているのかもしれません。外食の回数が減った分、1回の外食でしっかりお金を使って楽しもうとしてますよね。僕個人の感覚として、最近シャンパンを出す店が増えた気がしますが、それもシャンパン=お祝いごとのような特別な時に飲むドリンクのイメージからではないでしょうか。
綱嶋氏:確かに。最近では大衆酒場にもシャンパンがあったりしますね。
新井氏:コロナ禍を契機に、“人としての在り方”を再考する人が増えたと思う。人としての在り方を考えるにあたり、コミュニケーションツールとなるお酒は不可欠になってくる。僕は、今後お酒を飲む人は増えるんじゃないかと思いますね。その時に備えて、世の中の求めるニーズを察知し、ターゲットに刺さる商品づくりをしていくべきだと思います。