店舗流通ネット(東京都港区、代表取締役社長:石井実氏)は、「飲食店の出店から退店までのワンストップサービス」を目指し、買い取った店舗をリニューアルして店舗運営を開業希望者に委託する「業務委託型店舗ビジネス」を中心に、飲食店へのコンサルティングサービスを行っている企業だ。これまで数々の飲食店の出店サポートを行い、繁盛店を作り出すことで活気ある街づくりをしてきた実績を持つ。飲食店の開業希望者や、店舗展開を考えている経営者にとっての強い味方だ。
2017年6月に、三重県四日市市に開業した飲食ビル「四日市Food Market」も、店舗流通ネットが手掛けた街づくり成功事案のひとつ。もとはオフィスだった4階建て延床面積 260.88坪(共用部含む)のビルに、4つの居酒屋テナントを誘致し、一棟をまるごと飲食ビルとして再生した。連日、ビルは多くのお客でにぎわい、四日市の飲食マーケットに新しい風を吹かせる存在として話題を呼んでいる。
(近鉄四日市駅より徒歩2分。周辺にも飲食店の多い通り沿いに立地する。左:コンバージョン前、右:コンバージョン後)
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※「四日市Food Market」に入居するテナントは以下だ。
1階「九州小町 四日市店」(運営:株式会社NEXT STAGE、坪数:45.53坪、席数:110席)
…九州がテーマの居酒屋。もつ鍋や馬刺しなど九州料理や九州の芋焼酎などを提供
2階「肉 個室 橋勘商店 四日市店」(運営:株式会社武、坪数47.13坪、席数:105席)
…肉刺し、肉寿司などの肉料理を、個室で楽しむコンセプトの個室居酒屋
3階「もみじ屋 四日市店」(運営:株式会社ディー・アール、坪数:47.13坪、席数:86席)
…奥三河鶏を使った鶏料理と、落ち着いた設えの個室がウリの居酒屋
4階「鳥貴族 四日市店」(運営:鳥貴族、坪数:47.13坪、席数:75席)
…298円均一を掲げ、全国展開する焼鳥チェーン「鳥貴族」の三重県初出店店舗
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ビルの所有者は、三重県北西部を中心に三重県内でスーパーマーケットの「スーパーサンシ」を13店舗展開するスーパーサンシ(三重県鈴鹿市、代表取締役:植杉好英氏)のグループ会社、第一信販だ。
今回は、スーパーサンシ、第一信販にインタビューを実施。老朽化したオフィスビルが、客足の絶えない飲食ビルに生まれ変わるまでの秘密を探った。
(写真左から、第一信販統括部長の小林俊明氏、店舗流通ネット名古屋支店の金子貴是氏、第一信販代表取締役の別所喜三生氏、スーパーサンシのビルのコンバージョン担当の宮嶋宏明氏、フードスタジアム代表取締役の大山正)
Q.自社ビルを飲食ビルに再生することになった経緯を教えてください。
別所喜三生氏(以下、別所):第一信販はスーパーサンシの関連会社で、「スーパーサンシ」のクレジットカードの発行などをしている金融機関です。ビルはその第一信販のオフィスとして使用していました。ですが、時の流れとともにビル周辺の環境が変化。当初はビジネス街だったものの、現在のように飲食街へと様変わりしていったのです。ビルが老朽化していることに加えて、飲食の集客が望めるせっかくの立地をオフィスとしておくのをやめ、オフィス機能を三重県鈴鹿市に移転しました。そこで残ったビルの使用用途について検討していたのですが、問題があり困っていたのです……。
Q.問題とはなんだったのですか?
別所:ビルは4階建てなのですが、やはり全フロアを活用したいというのが我々の希望でした。ビルの周辺は飲食店が多く、にぎわっている立地とはいえ、すべての階にスムーズにテナントを誘致できるのか疑問でした。路面の1階はすぐに決まるかもしれませんが、2階、3階、4階と上に上がるにつれ、誘致が難しくなる。こっちは飲食店といえば路面。空中階に飲食店を作るという発想がなかったもので。当初、我々では低層階を飲食店に、高層階をオフィスとして活用するという案も検討していました。そんな折に店舗流通ネットを紹介していただき、ビルまるごと1棟を飲食ビルに再生するという提案を受けたのです。 「そんなことができるのだろうか?」と不安もありましたが、おまかせすることにしました。
大山正(以下、大山):すべてを飲食テナントにすることに、勝機はあったのでしょうか?
金子貴是氏(以下、金子):はい、駅から近く、人の流れがある立地ということは知っていましたので。実は四日市は、今、熱いマーケットとして、名古屋の飲食店経営者から注目が集まっているエリアなんです。実際にこのビルは、同じく当社が手掛けた、名古屋駅至近に立地する飲食ビル「柳橋Food Market」よりも、テナント誘致はスムーズに決まりました。さらに、決まった後からも、いくつかの飲食店から、「入りたかった」という声が上がったほど。名古屋もそうなのですが、四日市は商圏が狭い。物件というよい商圏を買うイメージで、高値がつくことが予想できました。
大山:そして見事に繁盛させているんですね!いい仕事をしましたね。笑
Q.店舗流通ネットに依頼することにした決め手は?
別所:過去の実績を見て、ぜひ店舗流通ネットさんにお願いしようという話になりました。本業がスーパーマーケットの運営である当社にとって、ビルのリノベーション工事などについては知識がない。そういったノウハウを持っている店舗流通ネットさんは、すべてをお任せできるので心強かったです。とくに飲食店となると、オープン後もメンテナンスが頻繁に必要となりますが、店舗流通ネットさんは、オープン後の飲食店の管理までお願いできるので、それもありがたいですね。
Q.ビルの再生にあたり、大変だったことはなんでしょうか?
宮嶋宏明氏(以下、宮嶋):ビルの老朽化が激しく、コンバージョンにあたり色々問題がありましたね。その点は金子さんにお任せし、頑張っていただきました。
金子:漏水、耐震補強、アスベスト、2階にあった金庫の解体が大きな課題で、これらにもっとも資金がかかりました。次が、インフラ、電気ガスなどの容量アップのための投資。企画当初は業者の選定やかける金額などで第一信販様とのすり合わせが難航しましたが、最終的には任せていただき、スムーズに進みました。
別所:もともと自社ビルだったので、これまでビルのメンテナンスは自社でなんとかしていました。当グループは基本的にアウトソーシングしないのですが、今回は大きなプロジェクトでしたので、素人よりプロに、と最後は信頼してお任せしました。また、金額面でも予算内に収まるよう工面していただき、大変助かりました。親身に寄り添って頂き、本当に感謝しています。
Q.実際に街の人や、テナントのお客さまの反応はいかがでしょうか?
宮嶋:ビルはいつもにぎわっていますね。私も実際に店舗をお客として何度か利用しましたが、とくに4階の「鳥貴族」は連日満席でウェイティングがかかるほど。三重県初出店の「鳥貴族」ということもあり、工事中に「鳥貴族」の看板が出たときから、若い人を中心に「三重県にもついに鳥貴族が来るぞ!」と話題になっていたようです(笑)。
金子:ビルの2階と3階が、どちらも個室をウリにした居酒屋で、すこし似た業態となってしまいましたね。ですが、東海エリアは関東や関西に比べて個室需要が高い。年配者だけでなく若年層までも、グルメサイトでは「個室」というキーワードで店検索をするなど、個室を好む傾向があるんです。今、関東で個室居酒屋を展開している経営者は、こぞって東海エリアへの出店をねらっています。
Q.今後、店舗流通ネットと一緒に取り組んでいきたいことはありますか?
別所:今回のビルのコンバージョンは大変満足していますので、ぜひ、今後も飲食店を展開する機会があればやりたいですね。当社の主力事業はスーパーマーケットなので、基本的に扱うのは郊外の低層の建物になるのですが、そこでなにかできれば嬉しいなと思っています。
金子:現在、当社が手掛けているのは、駅前などのビルテナントなどが9割です。郊外型の案件は取り組んでいませんが、車社会である東海エリアでは、そういった物件にも近い将来取り組んでいく必要性を強く感じています。
別所:東海エリアは車社会ではありますが、スーパーマーケットについては車でわざわざ遠くまで行くのではなく、近場ですぐ駐車できて、すぐ入店できるという店舗が、近年、求められるようになってきています。たとえばコンビニのような、小さくすぐに入れるのが最近のニーズで、我々も小型店にシフトしています。昨今の食品業界も入り乱れており、スーパーマーケットに加えて、コンビニやドラックストア、ドン・キホーテなども競合となっている時代。とくにドラックストアは薬局と謳いながらも商品の6割を食品が占めている。こういった状況を踏まえ、当店ならではの特色を出していかなければなりません。たとえば、スーパーマーケット内にイートインコーナーを設置するなど。なにかそういったものでご一緒できればうれしいですね。
金子:なるほど。昨今のそういったスーパーマーケット事情に合わせた提案ができればと思います。
別所:ええ、ぜひお願いします。とはいえ、当社の一番は地域支援。売り上げももちろん大切ではありますが、地場に根付き、地域の方々にひいきにしてもらうことを第一に営業しています。
金子:不動産の活用を通じて飲食店用の物件を用意するのが店舗流通ネットのミッション。ビルに飲食店ができると、それが集客装置となって、その場所にいろいろな層の人が集まる。さらにその人々を狙って、近隣に店舗ができて、街にとってよい影響を与えられるのではないかと思います。そのように私たちも地域貢献や街づくりの一助になれればと考えています。
別所:あのビルが飲食ビルに生まれ変わったことで、街の雰囲気も変わったと思います。本当に、ありがとうございました!
金子:こちらこそ! 今後ともよろしくお願いします!
■編集後記
今回、四日市の事例、名古屋の事例を視察してとても驚かされた。「サブリース」や「業務委託」と聞くと、良い物件を抑えて高く貸し付けるというマイナスイメージを持たれる方も少なくはないと思う。私も少なからずそういうイメージを持っていた。だが、今の同社がやられていること、重要視していることは各営業マン、担当者がテナント企業に親身に寄り添う「コンサルティング営業」を通じた「街づくり」「地域活性」に他ならない。これまで積み重ねてきた膨大な事例をもとに、負けない立地の選定、場合によっては業態選定、販促提案など、入店テナントが繁盛できるための「縁の下の力持ち」役として泥臭くクライアントファーストで奔走する同社営業担当者の姿が想像できた。街づくりのために影の黒子役として活躍し続ける同社を今後も注目していきたい。(大山)