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【特別セミナーレポート】Airレジ ミニセミナー Vol.4 年間100件以上のセミナー実績! インバウンドのプロが教える どんなお店でも必要な “今日から始められる外国人観光客おもてなし術”


10月23日、リクルートライフスタイル(東京都千代田区、代表取締役 淺野健氏)が主催する「店舗オーナー向け Airレジ ミニセミナー」が渋谷の「BOOK LAB TOKYO」で開催された。第4回目を迎える今回は、「年間100件以上のセミナー実績! インバウンドのプロが教える どんなお店でも必要な “今日から始められる外国人観光客おもてなし術”」をテーマに、一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会の神郡慶子氏が講師を務めた。

(一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会の神郡慶子氏)

 

神郡氏は、一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会のメンバー。日本の小売、観光、金融、情報、メディア、ITCなどの有力企業140社、 500店舗以上の小売店が参画する日本唯一最大のショッピングツーリズム推進団体だ。インバウンドに対する日本のショッピングの魅力を訴求するPRやコンサルティング事業を展開している。これまで、数多くの飲食店や小売店にインバウンド対策のコンサルティングを実施し、売り上げアップに導いてきた実績を持つ。

(当日の会場の様子)

 

■インバウンド対応の重要性

昨今、日本国内でインバウンドが急増していることは、もはや周知の事実だろう。しかし、それよりも注目すべきは、現在、日本に限らず世界規模で国際観光客数が増加していることだと神郡氏は話す。

世界各国の経済成長に伴い、国際観光客数は毎年3%前後で継続して増加中。とくに新興国の発展が、増加を後押ししているという。そんな中、とくに国際観光客の増加率が高いのが、東南アジア。毎年6%と他と比べ大きく増えている。そこから地理的に近い日本は、有利な観光国と言える。事実、2016年度の訪日外国人観光客数は2400万人を突破するほど。日本の観光市場はますます活況を呈しているということだ。

「国内の少子化に伴う人口減少で、国内のみの消費では大きな売り上げが見込めなくなってきたことも相まって、ますますインバウンド対応の重要性が高まっている」と神郡氏は強調した。

「ですが、インバウンドが多く集まる東京に立地する店舗であっても、まだまだインバウンド対策に積極的に取り組んでいるところは少ない。東京約1万店の免税店が東京にありますが、どのようにインバウンドを集客すればよいのかわからず、売り上げが伸び悩んでいるところも少なくありません」と神郡氏は現状を分析している。

 

■インバウンド対応の2つの困りごと

店舗がかかえるインバウンド対策の主な困りごとは2つ「スタッフがしり込みする」「集客の方法がわからない」だ。

「とくに前者について、外国語での接客ができないゆえにしり込みするというケースが多々あります。外国の人が来たら、スタッフが抵抗感から目をそらしてしまうことも。ある商業施設では、施設側がせっかくテナントに免税店になる手続きをしても、テナントが免税店のステッカーを隠してしまっている、という事例がありました。それくらい、スタッフがインバウンド対応にしり込みしているという現実があります」と神郡氏は話す。

 

■インバウンドの購買力の高さ

グラフからもわかる通り、観光客の購買力は日本居住者の5~10倍に相当する。 昨年の消費額は3.7兆円。そしてなんと、今年は4兆円を超える見通しだ。「これだけ短期間で伸びる産業は稀です」と神郡氏。

そのうち、消費額の6割がショッピング・飲食となっており2兆4千万円程度が相当する小売り、飲食は、インバウンドとの接点が大きい業種だと言えるだろう。事実、「訪日外国人が日本でしたいこと」ランキングの上位には、「日本食を食べる」や「ショッピング」がランクインしている。

 

■インバウンド対応は、まず心を開くこと

「インバウンド対応に必要なのは、ゲストに対してハートを開くことです。言語対応やインバウンドの求める設備の充実などの具体的な施策を行う前に、『ようこそ』という気持ちや、おもてなしの心を持つことが大切です」と神郡氏。まさに先述した免税店ステッカーを隠す事態をなくすことが先決だ。

 

■顧客対象の分析

インバウンド対応に取り組む基本フレームは、「商品サービス」、「接客応対、受け入れ環境」、「情報発信、販売促進」の3つ。しかし、その前に自店の対象顧客の分析が不可欠だと神郡氏は主張する。一口にインバウンドと言っても、多様な属性に分けられる。まずは街の訪日ゲストの属性を把握することだ。

「どういう属性のゲストが来ているのか、わかっていないお店が多いです。見た目で国籍などをわかったつもりでいても、実は外れていることも多いんです」と神郡氏。

ゲストの言語、休日のスケジュール、宗教、政治なども消費に多大に影響を及ぼす。それらを見定めていく必要がある。

各国別旅行消費額の傾向について見てみよう。

「中国人観光客の人数の大きさは見逃せない。ですが、台湾は人数に対し消費額が多いなど、意外な特徴があります」と神郡氏は話す。訪問者数が多い国、消費額が多い国など、それぞれ、国のゲストごとに特色がある。それらを知ることがまず第一だ。

 

■属性を知るためのヒアリング

ゲストの属性を知るために、一番手軽で有効なのはヒアリングだという。

「たとえば店内に世界地図を貼り、自分の国シールを貼ってもらうという手法があります。こちらから話かけなくても、面白がってやってもらえます」と神郡氏。このようなアンケートや出口調査をとることは非常に効果的だという。

ヒアリングすべき項目例は以下だ。

「もし外国語対応ができるのであれば、もちろんコミュニケーションを取っていきましょう。その中でわかる外国人ゲストの趣向というのもあるはずです。顧客の性質を知るためのヒアリングを実施しているところは、実際に売り上げも上がっている傾向があります」と神郡氏は話す。

 

■「外国人目線」で考える商品サービス

次に考えるのが商品サービスについて。「外国人目線」で商品の魅力をわかりやすく紹介することが肝要だ。

「例として、タイ人ゲストが札幌雪まつりで『お土産にほしい』と答えたものはなんでしょうか? ……答えはTシャツです。真冬の、しかも極寒の札幌でTシャツは売っていませんが、タイ現地は気温が高いため、彼らはTシャツを欲しがるのです」

さらに、神郡氏はこう続けた。

「東京の観光案内所で外国人ゲストに『1日、観光をしたいがどこかおすすめのスポットは?』と聞かれたら、観光案内所の人はどこをおすすめするでしょうか? 私たちは、たとえば浅草や秋葉原など、都内の観光スポットを答えがちですが、実は観光案内所の人が一番多くする回答は金沢なんです。これは距離感の問題で、私たちが東京から金沢まで行くというのは遠いように感じますが、外国人ゲストはそもそも海の向こうの遠くから来ているので、東京~金沢の距離は、旅行者からしたら私たちが感じるほどの距離感は感じていないのです。こういった、目線の違いを意識することが、商品サービスを考えるのに重要です」と神郡氏は話す。こういった日本材在住者には見落としがちな視点こそが、インバウンド対応には欠かせない。

 

■商品の訴求ポイントを明確に

訪日ゲストに売りたい商品について、その魅力を明確にする必要がある。

「先ほどの『外国人目線』を意識するほか、“日本でしか買えない”という現定感を訴求したり、売れ筋ランキングなどの形で伝えたりすることが有効です。“ストーリー”を売るのも大切。商品の作られた経緯や、どういう材料使って、誰が作ってるかなどのストーリーは訪日ゲストの心に突き刺ささります」と神郡氏。

 

■無料ツールの活用術

次に、接客応対や訪日ゲストの受け入れについてだ。接客にあたりもっとも大きな障壁は言語になるが、無料でダウンロードできる翻訳ツールは多く存在する。

「アルバイトスタッフが、LINE翻訳などの翻訳ツールで翻訳した、その店での頻出のワードをメモして蓄積し、自店に使いやすいようカスタマイズした自作の翻訳集を作成した事例などもあります。また、多言語POP作成ツール『POPKIT』はとくに飲食店にとって便利なツール。POPの写真を撮るだけで自動的に翻訳を行ってくれます。メニューが頻繁に変わる場合、それに合わせてPOPを作り直すのは面倒ですが、その手間を省略できます。また、免税店になった店舗については、東京都が運営する免税店向け多言語コールセンターを利用することができます。このコールセンターを利用するために免税店になる、というのもアリです」と神郡氏。

まずは無料のサービスから利用してみることが大切だ。気に入ったサービスがあれば、有料版にアップロードするなどの選択肢もあるだろう。

 

■チラシには効果検証ができるサービスを

チラシの配布ど、宣伝活動を行う際は、ただ宣伝活動を行うのではなく、効果検証することも忘れてはならない。

「チラシには『このチラシを見て来店した人には~~をプレゼント』というような、“チラシを見ての来店である”ということの証拠がとれる特典を用意しましょう。ただ単にばらまくだけでは、その後の効果検証ができません」と神郡氏は話す。

 

■SNSの活用

SNSや口コミサイトによる拡散効果も有効利用したい。今やネットは訪日ゲストにとって大きな情報源となっていることは、言うまでもないだろう。

「まずはトリップアドバイザーやYELPなどの訪日ゲストがよく利用する無料口コミサイトに自店を登録し、旅行者が口コミ投稿できる下地を用意しましょう。SNSのハッシュタグの活用も有効です。日本慣れしている訪日ゲストも多く、たとえ日本語のハッシュタグでも、閲覧する場合があります」と神郡氏。

また、SNSに載せたくなるような写真を撮れるフォトスポットの作成もおすすめだという。それにあたっては、忘れてはならないのが、やはり“外国人目線”。日本らしさを感じるなど、訪日ゲストが写真を撮りたいと思うツボを押さえるべきだ。

 

■お茶専門店におけるインバウンド取り込み事例

ここからは実際にあった事例が紹介された。あるお茶専門店は、2年前にインバウンド取り込みの施策に本格的に着手。その結果、売り上げを伸ばした例だ。

この店が行った施策は以下だ。

・多言語対応

英語や中国語の商品パッケージを用意したほか、店の外に、免税店マークや「TEA SHOP」という文字を掲げ、訪日ゲストが一目でわかるよう工夫

・国別におすすめ商品を設定

国別の嗜好に合わせたおすすめ商品を設定し、マニュアルにして全員で共有。訪日ゲストの好みに合わせた商品提案が可能になる。

・頻出単語のピックアップ

その店でよく出てくる言葉の英単語を押さえておくだけで、接客対応が格段にレベルアップ。お茶専門店であれば、「tea leaf(茶葉)」、「powder(粉末)」などだけでも覚えておくと訪日ゲストへの対応が全然ちがってくる。その際は、LINE翻訳などの翻訳ツールも活用しよう。

・世界のあいさつマップ作製

「さよなら」、「ありがとう」、「おいしいですか?」などの簡単な言葉を、世界各国の言葉の一覧表を用意しておく。「そういった一言の気遣いが、訪日ゲストにとって非常によろこばれます」と神郡氏。

・購入後のアフターフォロー

商品には「お茶の淹れ方ガイド」を同封。自国に持ち帰った際に、おいしく淹れてもらえるようにと、日本語に加え英語の説明書を添えて販売している。

「売っておしまい、ではなく、その後商品を美味しく飲んでもらってこそ評価につながります」と神郡氏は話す。

・テイクアウトの利用促進

同店は茶葉の小売りのみならず、ドリンクやソフトクリームのイートイン利用も可能。入店してしまうと商品を購入しなくてはならないというプレッシャーを感じる訪日ゲストも少なくない。ドリンクやソフトクリームのテイクアウトであれば気軽に利用してもらえるため、店頭にはソフトクリームのオブジェや「TAKE OUT」の看板を出すなどして、入店を促進。さらに、先述したフォトスポットも作成。店先にひさしやかき氷の旗など、日本らしさを感じるアイテムを飾り、訪日ゲストが写真を撮りたくなるような工夫を凝らした。

こうした工夫が功を奏し、訪日ゲストの取り込みに成功。売り上げが向上したという。

「こちらのオーナーさんは、いくつものインバウンド対策セミナーに足しげく通い、セミナーで学んだことは即実行しているそうです。そして、結果もきちんとついてきています」と神郡氏は話す。

 

■無料ツールの紹介

 

・VoiceTra

http://voicetra.nict.go.jp/

・大衆点評

http://www.dianping.com/

・免税店.jp

https://taxfree.jp/download/

・Japan Shopping Now

http://japanshopping.org

以上を、無料で利用できるインバウンド対策ツールとして紹介。それぞれに特色があるので、自店に合わせてうまく活用したい。

 

■まとめ

「インバウンド対応についてもっとも大切なのは、まずは訪日ゲストを歓迎するマインド。目をそらさず、ハートを開くことがなにより。そして、先ほどのお茶専門店のように、セミナーで学んだこと、ひとつでもよいので、ぜひ、帰ったらすぐに実践してみてください」と神郡氏は話し、セミナーを締めくくった。

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