どのようにすればうまく集客することができるのか――。商品やサービスに自信は持っているが、集客に頭を悩ます経営者は多い。そうした課題解決に役立つヒントを得られるセミナーが、9月25日に渋谷の「BOOK LAB TOKYO」で開催された。
それがリクルートライフスタイル(東京都千代田区、代表取締役 淺野健氏)の主催する「店舗オーナー向け Airレジ ミニセミナー」だ。三回目となる今回のタイトルは「お店の集客強化!お客様の心を掴む『販促ツール』作成セミナー」で、講師を務めたのはグレイズ(埼玉県蕨市、代表取締役 小澤歩氏)の小澤氏だ。
有限会社グレイズの代表取締役・小澤歩氏
同氏は、広告制作会社や販促会社のグラフィックデザイナー・アートディレクターを経て、2002年に有限会社グレイズを設立した。一部上場企業から中小企業、店舗まで、広告販促やブランディングなどの企画制作を手がけて、商業デザイン賞での受賞歴も数多い。このような輝かしい経歴を持つ同氏が講師に立つとあって、当日は、たくさんの参加者が集まった。
当日の会場の様子
セミナーの内容は、下記の通りだ。
冒頭、同氏は次のような話をはじめて、セミナーを開始した。
「独立した当時、中小企業の広告を請け負ったことがあります。その時、培ってきたノウハウを生かして、見栄えがする広告を制作しましたが、クライアントの売り上げはまったく上がりませんでした。しかし、考えてみれば、それもその通りです。例えvば、ユニクロやトヨタなどは、何をしている企業か多くの方が知っています。しかし、中小企業の多くは、名前を見ただけでは何をしている企業かは分かりません。そのため、キレイでかっこいいデザインの広告を作っても、『いい広告ね』で終わってしまうのです。そこで、どうすれば中小企業の方々のお役に立てる広告を作れるのだろうかとあらためて考えた結果、私は、マーケティング戦略やブランド戦略をデザインに取り入れることにしました。すると、売り上げアップにつながる広告を作れるようになったのです。本日は、そうした経験に基づいた広告戦略を公開します。キャッチコピーを作れるワークショップも用意しているので、ぜひ少しでも多くノウハウを持ち帰ってください」
「販促とは何か? ~お客様のことを知る」では販促ツールとして“チラシ”を例にとって、セミナーが進んでいった。チラシは販促の基本であるからこそ、それができたらダイレクトメールやホームページなどにも応用が利く。とても汎用性の高い販促ツールであるのだ。
販促ツールにできることは、消費者に「知ってもらうこと」と「買いたい、行きたいと思ってもらうこと」の二つある。しかし「知ってもらうこと」と「買いたい、行きたいと思ってもらうこと」では販促の目的がまったく違う。もともと何のために販促ツールを作るのかと言えば、売り上げをアップさせるためだ。そのため、顧客に来店してもらうためには、知っているという状態をクリアした上で、買いたい、行きたいと思ってもらわないといけないのだ。
ただ「売り上げアップ」と言っても、意味が漠然として、何をやっていいか判然としない。そもそも売り上げは、客数と客単価、利用回数の掛け算で成り立つ。それを踏まえた上で、どのような販促を行っていくかも決まっていく。例えば、客数が足りないならば、不特定多数の人に伝えるチラシがいいのではないか。客単価が足りないならば、メニューを作り替えたり、ポスターやPOPを作成したりすればいいのではないか。そして、リピート客がいないならば、ポイントカードやダイレクトメール、メルマガなどを活用すればいいのではないかと、売り上げが上がらない原因を押さえてから販促を仕掛けなければならない。
この中で、売り上げアップに欠かせないのがリピート客だ。パレートの法則にある通り、20%の顧客が80%の売り上げを作っている。だからこそ、リピート客が増えると、売り上げ向上につながるのだ。顧客には、下記の4つの段階がある。
リピート客を多くするためには、下の階層にいる顧客を上のフェーズに上げなければならない。しかし、それぞれの段階で行う施策は変わり、伝えることも適した媒体も異なる。名前も知らない企業からダイレクトメールが届いても嬉しいと思う消費者は少ないが、利用したことのある企業からのダイレクトメールだと反応は違う。そして、知らない人に自社を知ってもらうために効果的なツールがチラシなのだ。
次に「販促ツールで伝えることは」に話が移る。同項目で重要なのが、まず自社の商品・サービスが何を提供しているのかを知ることだ。顧客は、商品やサービスにだけ、お金を払う訳ではない。例えば、喫茶店には、コーヒーを飲むために利用する人もいるが、好きな人と楽しい時間を過ごすために利用する人もいる。後者の場合、どのような時間を過ごせるかをアピールしたチラシ効果的となる。
チラシを作るとき、インパクトがあるものを作れば客が来るとか、安さをアピールするキャッチコピーがあれば注目度が高まると、考えてしまう方は多い。しかし、インパクト勝負で成功しても、それ以上にインパクトがあるチラシがあったら、自社の商品・サービスは忘れられてしまう。また、金額で興味を引いても、さらに安い金額の商品・サービスがあれば選ばれない。
チラシ作りで何よりも大切なのは「見る人の求めているものがある」と伝えることだ。つまり、「自分のためのお店だ」や「自分のための商品だ」と思ってもらうことが欠かせない。消費者に「自分に必要な商品・サービスだ」と思ってもらえれば、お客さんの心を掴めて、リピート客の獲得にもつながっていく。
小澤氏は、このように「チラシ作りの要点」を説明すると、次のような話をはじめた。
「例えば、皆さんが普段利用している『美容室・床屋』や『携帯電話』は、なぜ使っているのでしょうか。おそらく『美容室・床屋』なら、髪を切るという目的以外にも理由があるでしょう。例えば、カットが上手いや安い、駅から近い、職場から近いといった理由があると思います。チラシを作るとき、直接的なものアピールしがちです。しかしそれでは、遠くに行きたくなかったり、夜遅くまでやっていたり、座ったら同じ髪にしてくれたりするという理由で『美容室・床屋』を選ぶ方々には、メッセージが届きません」
同氏はこう言うと、販促でどんなメッセージを伝えるべきかを解説した。
「販促の施策を作るとき、『何を』・『誰に』・『どうやって』提供するのかを考えていきます。キャッチコピーも同じです。『何を』は自分自身のことで、どのような商品・サービスを提供しているかを踏まえて、その特徴や他と違う点、こだわりや苦労などを抽出していきます。一方、『誰に』はお客さまのことです。望みや悩み、同業他店への不満がどこにあるのかなどを掘り下げます。中でも、皆さんの商品・サービスを利用した結果、どうなるかを考えることは重要です。例えば、シャンプーなら、髪がサラサラになるだけでなく、朝のセットが15分早くなるとか旦那に褒められるといった具体的なシーンまでイメージしてください。こうした作業の後、『何かを求めている人』に対して『皆さんのどこを伝えていくか』を考えて、チラシを作成していきます」
セミナーでは、「販促ツールで伝えることは」の話を踏まえて、「『何を』『誰に』~心を掴むキャッチコピー」というワークが行われた。
ワークに取り組む参加者の方々
「何を:あなたの提供するものは?」では、「【1】あなたの商品・サービス(事業・店舗)は何ですか」と「【2】それの特徴は何ですか」、「【3】それの他と違うところは何ですか」、「【4】それのこだわりや苦労は何ですか」の4つに答える。
一方の「誰に:お客様はどのような人なのか?」では、「【A】お客様はどんなことを望んで、何に悩んでいますか」、「【B】お客様は他の同じようなものにどんな不満がありましたか」、「【C】あなたのお店や商品・サービスを利用した後にどんな結果になって、どんな気持ちになりますか」の3つに答えていった。
小澤氏は「全部の項目を埋めることが大切です。単語だけでも構いません。思いついたことをどんどん書いてください」とアドバイスを出してから、販促ツールの原稿作りについて説明を始めた。
まず注意しなければいけない点は、ひとつのチラシに多くを詰め込みすぎないことだ。20種類の商品・サービスがあるのなら、2・3種類の商品に絞る必要がある。そもそも最初から高額な商品・サービスを買う人はいない。むしろ、買いやすかったり、選びやすかったり、不安が少なかったりするものを掲載した方が集客につながりやすい。顧客に店に足を運んでもらうにはどうするか。そこに注力して、掲載する商品・サービスを考えていかないといけない。
また、見た人に何をしてほしいのかを、しっかりと伝えることも重要だ。「お問い合わせください」や「HPをご覧ください」などの一文を加えだけで、顧客の反応は違ってくる。以上を踏まえて、同氏は、「見る人の感情を変化させる要素」について解説した。
顧客が商品・サービスに興味を持てから購入に至るまでには、上記のように一定の感情の変化がある。各段階で効果的な施策を講じながら、「購入・来店」という最終目標を実現していく。例えば、チラシを見る人は、無意識的に「この商品・サービスは大丈夫だろうか」と考えている。そこで、実績事例や保証、権威などを示して、不安を解消させないといけない。「よくある質問」で顧客の声などを紹介するのも、不安を解消するために活用される方法の一つだ。また、最終的な購買・来店のフェーズでは「○○個しかありません」というメッセージが力を発揮する。希少感をあおられると、人は脳が刺激されるので、行動を起こしやすくなるのだ。成果のでるチラシは、こうした感情の流れを起こさせている。だからこそ、チラシを作成するときに参考にする価値があるだろう。
最後に、小澤氏は「『何を』『誰に』~心を掴むキャッチコピー」というワークで書き込んだキーワードを当てはめていけば、キャッチコピーが完成するフォーマットを3つ紹介した。
その上で次のように話すと、セミナーを締めくくった。
「自分がお客さんだったらと考える。そこに自分が求めているものがあるはずです。本日、公開したノウハウを少しでも取り入れてもらえれば、いい結果が生まれるでしょう。ぜひ取り組んでみてください」
■Airレジ ミニセミナーに関する情報は下記から
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