全国で広がりを見せるたばこの規制に関する条例。2010年4月には、全国初となる「受動喫煙防止条例」が神奈川県で施行された。次いで、兵庫県でも「受動喫煙防止条例」が、2013年4月から施行される。大阪府もこれらに倣い、2013年1月8日に、公共の場での禁煙を徹底する「受動喫煙防止条例案」を公表。同年2月6日まで府民からの意見募集を行ない、府議会への提出を行なう。
大阪府の条例制定の背景には、2008年から2012年度までの5カ年計画で進めてきた、公共施設の全面禁煙100%を目指す「大阪府健康増進計画」がある。計画期間は既に終了したが、目標が未達だったことから「新たな対策が必要」と、同条例案を公表するに至った。これに対し、2012年9月に行なわれた大阪府議会で、大阪維新の会・みつぎ浩明議員は「大阪府の受動喫煙防止条例対策は随分進んでおり、これまでの取り組みで十分ではないか。法制化することで喫煙者や民間の事業者に対し負担を強いることになるのでは。現在の取り組みに加え、分煙の推進を図るので十分ではないか」と、急ぐ条例制定を危惧した。一方で、松井一郎知事は「府民の健康被害が出ない、受動喫煙にならないような対策を考えていかなければならない」と話し、法制化するのか、新たなガイドラインをつくるのか、啓発にとどめるのかなど、決定的な解答には至らなかった。
気になるのは条例の内容である。府の審議会で飲食店については、ガイドラインによる対策推進を掲げている。全面禁煙の義務化ではなく、努力目標にとどめた。しかし、2013年1月に公表された条例案では、飲食店などの民間施設について、ガイドラインによる推進としながらも、条例にガイドラインを定める旨を規定し、段階的には条例による全面禁煙義務化の対象としている。つまり、いずれかの段階で飲食店の全面禁煙が義務化される可能性があるということだ。全面禁煙化が前提ともなれば、民間施設事業者の運営や経営に関する自由を大きく制約することになるだろう。
また、今回の条例の基本的な施策の中で「分煙による受動喫煙防止効果は不確実なため、分煙の義務化は行なわない」としている。つまり、受動喫煙の防止策として、分煙は認めないということだ。厚生労働省が認定した「分煙効果判定基準」で、分煙を国で認めているにも関わらず、だ。義務化対象施設は、建物内を完全に禁煙とし、その敷地内においても全面禁煙努力義務を課することとなる。
実際に、大阪府の飲食店経営者に条例について聞いてみると、条例施行に賛成できないという意見が聞こえた。「規制が厳しくなると、これまでたばこを意識していなかった人まで意識し始める。露骨に喫煙者を嫌がる方も出てくるような気がします。」(居酒屋経営・男性)。また「兵庫で飲食店をやっている友達からは、条例の内容にあいまいな点が多く困惑しているって聞きました。大阪の条例も同じなのでは?」(バル経営・男性)と、条例内容の不明瞭さを嘆く声も。
受動喫煙防止対策を進めるという府の計画に基づき、この度、条例案が公表されたが、この条例案は「分煙」が認められていない点を考えると、受動喫煙防止対策ではなく、喫煙の自由を法制化で押さえつけようとしているようにも思える。また、たばこを吸う人・吸わない人のどちらもお客様である飲食店にとっては、今後の経営環境に大きく影響を与える懸念がある。実際に飲食店は、それぞれの店の状況に応じて、たばこを吸う人・吸わない人ともに気持ちのよい環境をつくるべく様々な取組みを行なっている。そういったことを考えても、一律的に条例で押さえつけるのではなく、個々の経営者が自店の喫煙ポリシーを決めて、店の実態に即した対策が行なえるよう、行政・経営者が一体となって考えていくことが必要ではないだろうか。
大阪府受動喫煙防止条例(案) 府民意見を募集中!
募集期間: | 2013年2月6日(水)まで |
---|---|
応募方法: | 下記URLをクリックし「提出方法」詳細をご覧ください (インターネット、郵送、FAXでの応募が可能) http://www.pref.osaka.jp/kenkozukuri/tabacco/publiccomment.html |
問い合わせ先: | 大阪府健康医療部 保健医療室 健康づくり課 生活習慣病・歯科・栄養グループ |
電話番号: | 06-6944-6694(直通) |