受動喫煙防止について、東京都は条例化せず「現状に即した対応を!」
2011年10月1日、東京都は「受動喫煙防止ガイドライン」の改訂版を発布。”公共の場所は原則全面禁煙であるべき”とする基本的な方針を示す一方で、受動喫煙防止について現在条例化へ向けた動きはないことを明らかにした。
近年、飲食店における喫煙の在り方は大きく変化している。きっかけとなったのは、神奈川県における受動喫煙防止条例の制定(2009年3月)だ。日本で最初に制定された同県の受動喫煙防止条例は、”飲食店=公共空間であり全面禁煙、もしくは規定に沿った分煙をすべし”と定め、それまで当たり前のように”タバコ=嗜好品で喫煙は店や客の自由”と考えていた飲食店関係者らに大きな衝撃を与えた。
条例が施行された神奈川県では、タバコが吸える店を探し歩く喫煙難民の姿、そして喫煙者・禁煙派双方の客からの指摘に戸惑う飲食店関係者らと混乱を招いている。事態はその後も急速に展開。神奈川県に続き、兵庫県、千葉県でも受動喫煙防止条例制定の検討会が立ち上がり、兵庫県においては急激な喫煙環境変化による営業への影響などを懸念する関係者ら反対派の声をよそに、厳しい内容の条例制定が今もなお検討されている。
一方で、いざ県民アンケートなどで飲食店オーナーなど当事者の声に耳を傾けてみると、客の半数以上が喫煙という店も少なくなく、既に施行されている神奈川県などでは、特に居酒屋や喫茶といった喫煙率が高い店における売上の下落が顕著である。今回の東京都の発表はそんな中での動きである。
「平成19年の第2回締約国会議において”たばこの煙にさらされることからの保護に関するガイドライン”が採択され、平成22年2月厚労省から出された”公共の場所は原則全面禁煙であるべき”という通達も受け、平成16年に制定した東京都のガイドラインについて文言など一部表現の修正を行ないました」と都の保健政策部健康推進課の広松恭子さん。こう聞くと一見厳しくなったように感じるが、実際は、分煙の方法については限定しておらず、施設の種類、態様や利用者のニーズ等に応じ喫煙可能区域を設定することができる内容となっている。
「東京都としては、今後、より一層受動喫煙防止に努めていくものの、現時点で条例などによる強行的な規制の予定はありません。経営面や客層など、それぞれの店の実情に即した形で取り組んでいただきたいと考えております」(同)
確かに条例が既に施行されている神奈川県、及び条例の検討がなされている兵庫県においても飲食店の業態やその規模、また店舗の構造などはまちまちであり、一律の規制導入に対する反対の声も大きい。東京都では今回のガイドラインの改定に先立って、2010年2月に『「飲食店の受動喫煙防止対策検討会」まとめ』と題する報告書が出されており、その中においては、対策の必要性や取組み事例をわかりやすく伝える等の普及啓発施策を積極的に行なうことや、対策推進のための方策の一つとして利用者が禁煙・分煙の店を選びやすくするために店頭表示促進を図ることの有効性も表記されている。 これらの流れを汲んで、東京都はより飲食店の現状に則した内容を示したとも言える。
「平成16年”東京都受動喫煙防止ガイドライン”制定時から年2回のペースで催してきた受動喫煙防止対策研修会(http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kenkou/kenko_zukuri/tk_jouhou/j_kitsuen/kensyu/)等の啓発活動は今後も継続予定です。講習会ではバーや居酒屋など取組みが難しいと思われる業態などの模範例などもご紹介しながら、効果的な分煙法など成功事例をお伝えしていきますので参考にしていただければ幸いです」(同)
今回の東京都の方針は、これまで神奈川県や兵庫県が打ち出してきた指針と大きく異なるもう一つのモデルと言えるだろう。来年度以降、他自治体でも同ガイドラインを参考とした動きが広まることは間違いない。「条例化して一律規制する以外の道もあるのではないか。現状を踏まえ改善を!」。そんな東京都が出した指針に飲食店関係者らは”店頭表示の徹底”など、一層のマナー向上に努め、結果を出していきたいものである。
「東京都受動喫煙防止ガイドライン」本文 http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kenkou/kenko_zukuri/tk_jouhou/j_kitsuen/guideline/files/guidline111001.pdf
(PDF 245KB)