●神奈川、罰則期限に向けて迫られる厳しい決断
タバコの条例化にいち早く取り組み始めた神奈川。今年4月、受動喫煙防止条例が施行されると、それまでどこか他人事だった人々も含め、業界内は今、その対策に奔走している。株式会社エイト(横浜市・代表取締役近藤一美)によると、条例通りに店を改修した場合、1店舗にかかる改装費は人件費等含め300から400万。全21店舗のうちカラオケや居酒屋など10店舗に手を加えると数千万規模の負担が強いられることになる。しかし、コストをかけずにすむ全面禁煙はありえないと近藤社長。「既に喫煙者のお客様から“タバコが吸えなくなったら来ないよ、頼むね”とお声がかかっています。半数以上がタバコを吸っている状態で禁煙にしたらお客様が離れてしまいますのは当然のこと。きつかろうと、長い目で考えると完全分煙しか選択肢がありません」と話す。ある飲食関係組合会長も「神奈川の飲食店は半減する勢い。これは大げさじゃない。行政は現場のことをちっとも分かっちゃいない」と行政主導の強行なやり方に憤りを隠せない。
●2番目の条例適用県となるか!? 兵庫の検討会の行方
神奈川の動向に注目が集まるなか、ここにきて兵庫でも受動喫煙に関する検討会が発足。次年度以降の方針を定めるべく6月より論議が始まっている。二番手となる兵庫がどう舵を切るのかは、この後続く全国自治体の動きに多大な影響を与える。この重要なタイミングで当事者である飲食店の意見は聞いているかと行政に尋ねたところ「各方面の意見を慎重に聞き、条例ありきではない最善策を考えたい」との公平な回答。ところが関係者に取材を進めていくうち、明らかに条例化前提という見方が強まってきた。
●“完全に条例ありき”。飲食関係者らの不安の声
飲食関係者代表として第一回検討会から出席している兵庫県飲食業生活衛生同業組合理事長の入江眞弘さん曰く、「検討会に出席して驚いた。議論の余地もない。なんせ委員の15名中13名が医者や薬剤師、看護士など反喫派。しかも、WHOの組織の人間や九州の大学教授など、兵庫県とまったく関係のない人々が参加して県内のタバコ問題について話し合っている。あげくの果て、リーマンショックの前は経済上向きで当然にも関わらず、NYでは禁煙にしたおかげでTAXが上がったなどと2007年頃までのデータを持ち出してきて力説するわ、行政で兵庫県民にアンケートをとった結果10%しか喫煙者はいなかったという偏った数字を掲示するなど、どう考えても条例化ありきで論旨付けをしたいだけとしか見えない」と話す。「なにも禁煙反対というわけではない。公共施設などは禁煙にすればいいが飲食店は別。我々にとってタバコは好き嫌いの範疇でなくお客を来店へと動機づける大切なアイテムのひとつ。実際に、現場をみてて喫煙者10%という数字はありえないし、一服したいから来店するという方は非常に多い。それでも検討したいなら、まず飲食店における公共性とは?といったことから始めるべきでは? とにかく一律規制は論外だし、オブラードに包んだだけの努力義務なんていうのも辞めて欲しい。結局、追いつめるための前段に過ぎない。私たちは数年前から店外にステッカーを貼るなど努力している。飲食店については表示がゴールでいいじゃないか。禁煙店もあれば、分煙、喫煙店もある。お客側が選べると。1~5店舗という中小企業経営者が大半の業界に、これ以上、負担を与えないでくれ」と話す。
入江さん同様、兵庫県喫茶飲食生活衛生同業組合の林理事長も第二回検討会に呼ばれ、その偏った構成に驚いたという。「検討会というのは名ばかり。実際は、規則のアウトラインを形成するヒアリングのようで完全に条例ありきでした。全国喫茶飲食生活衛生同業組合連合会では昨年からこの問題について話し合ってきましたが、神奈川、兵庫と続いたら、それこそ、あとは全国に雪崩式に広がっていき体力のない店は次々に潰れてしまうことに。大変な時期だからこそ、皆で死守しなければならないんです」と林氏。「現在、兵庫県下の飲食店には、このことはなにも知らされていない。HPで公表しているとはいえ県のHPをチェックするなんて滅多にしないですから。まさか自分たちの県でタバコの規制が入るとは夢にも考えてないでしょう。早々に広く伝えていかなければなりません」と話す。
行政としては、8月、9月に一回ずつ検討会を催し、方針案を打ち出す予定。それに対し生活衛生同業組合らサービス業関係者は8団体がタッグを組み、8月上旬、理事長らを集めてミーティングを開催。現場の署名活動などを実際に働きかけていく。当事者である飲食店の声がどれだけ集まるかによって条例化が大きく動く可能性もある。