株式会社ナチュラ 代表取締役 河合 倫伸
1979年、神奈川・川崎生まれ。ヨーロッパで見たバルに衝撃を受け、2007年、川崎の向河原にイタリアン酒場「ナチュラ」を開業。地元住民に支持され行列の絶えない人気店になった。現在は、武蔵小杉と新丸子で「ナチュラ」を計3店舗運営するほか、すしやパン、ケーキの業態が集結した「ナチュラマーケット」も展開中。
店内営業は自粛、コロナ以前から構想していたマルシェを開始
当社では、通常営業は一部店舗のランチを除いて自粛中です。3月下旬から新型コロナウイルスの影響が深刻化し、こんな状況ではお客様に飲食店としての価値を提供できないと考えたからです。一方で、4月7日頃から「ナチュラマーケット」の店舗内にて、マルシェ「ナチュラストア」をオープンさせました。惣菜やパン、すし、野菜、加工食品などを地元の人に向けて販売しています。
もともと、こうしたマルシェや小売りの構想はコロナ以前からあったんです。従来のイートイン主体の“箱型飲食店”には限界を感じており、これからはコラボの時代が来るのではないか?と思っていました。例えば、物販×飲食、スポーツ×飲食……のような、飲食と何かを掛け合わせたビジネスモデルに挑戦したいとかねてから考えていました。ですので、「ナチュラストア」をやろうと決めてからの行動は早く、1週間ほどで形になりましたね。
スーパーの混雑緩和&共存共栄してきた地元業者の救済がマルシェの目的
「ナチュラストア」を始めたのは、市中の小売店の混雑緩和と、地元業者の力になりたいという2つの理由から。スーパーやドラッグストアが大混雑し、マスクをはじめ様々な生活必需品が手に入らない事態になった。一方で、業者からは「飲食店の仕入れが激減し、このままでは潰れてしまう」という悲痛な訴えが聞こえてきました。それならば、うちで商品を買い取り販売することで問題解決をしようと考えたんです。
当社では、創業時から付き合いのある地元・川崎の業者との“共存共栄”を大切にしており、新規で取引先を増やすことはここ数年していません。小さな酒場から出発したものですから、当時、大手には相手にされないこともありました。今となっては大手と取引した方が価格面を考えると良いのかもしれませんが、地元の業者あってこそ私達もここまでくることができたと思っている。そんな業者が困っている中で、私達は行動せずにはいられませんでした。
コロナショックで見えた新時代のニーズ、進むべき方向性
お陰様で「ナチュラストア」は好評をいただき、ブラッシュアップしながら6月以降も継続していく予定です。この取り組みを通じて、新しい時代のニーズをひしひしと感じています。
私達が展開する川崎、武蔵小杉は時代とともに変化している。近年はマンションが増えてファミリー層が増えていますし、13年前、創業時の「ナチュラ」のターゲットはサラリーマンでしたが、当時は独身で夜な夜な飲んでいたお客様も、数年が経てば結婚して子供が生まれて……とライフスタイルが変化。それで当店のファンとして終わってしまうのは悲しい。飲食業というのはお客様との信頼関係で成り立っていると思うので、何十年と付き合い続けたい。「ナチュラストア」では、「子供がいて外食に行きづらいので、家で食べられる惣菜はうれしい」という声が聞こえてきました。街やお客様の変化に合わせて、店も変わる必要があることを改めて実感。例えばファミリー向けの業態を強化していくことなどを考えています。
緊急事態宣言は解除されましたが、営業再開については慎重に判断したいですね。幸い、今すぐ会社が危ないというわけではないので、スタッフには給料を100%補償し、よい機会なのでゆっくり過ごしなさいと伝えています。当然、コロナショックでお金は減っていくし大変なことも多いです。でも、悪いことばかりではない。先ほど述べたように、今回のことで、会社をどう変化させていくべきか、進むべき方向が改めてクリアになりました。
次回のインタビューは、尊敬する経営者であるバイタリティの岩田 浩さんに。「鳥番長」はじめ東日本橋を中心に、国内外に数々の店舗を展開しています。よろしくお願いします!