株式会社シャルパンテ 代表取締役 藤森真氏
2011年上半期ヘッドライン記事のPVアクセスランキングで、見事トップに輝いたワイン居酒屋「VINOSITY(ヴィノシティ)」のオーナーでシニアソムリエの藤森真氏。意外にも以前はワインが苦手だった?!運命の出会いから「全ては人と人との信頼関係」という哲学を学んだ!
――改めて、「VINOSITY」は、どんな店ですか?
「VINOSITY」とは、ラテン語で「ワイン中毒症」、「ワイン好き」という意味です。店のコンセプトのひとつにはワイン&ファンというのがあります。ワインを通して、お客さまも、スタッフも、業者さんも、みんなが笑顔になれる店をつくりたいと考えています。
お客様が楽しく飲食するためには、ワインだけではなく、全てが必要だと思います。だからこの店には、ビールも、焼酎もあります。ソムリエはワインの専門と思われがちですが、そうではない。飲料の全てを網羅し、そのゲストの今日のニーズに合った最適な飲料を提供する。ワインは、もちろんひとつの武器ですが、それだけじゃない。飲料サービスを通してお客様の良きアドバイザーでなくてはならないと考えています。
――名物の「こぼれスパークリングワイン」(600円)、フォアグラのソテー(1500円)など、コストパフォーマンスも注目されていますね。
僕は、店のメニューの値段を決める時、スタッフに「原価率ではなく、ひと皿から出る利益の金額を見なさい」と言っています。問題は、店の総売上ではなく、月末にいくらお金が残ったかです。有料広告を出さないのも、その分のコストを下げ、お客様にとって満足度の高いものを、安く美味しく提供したいと考えています。
同様に、家賃部分で固定費を下げたいとも思いました。この店の立地は、駅を挟んで繁華街から離れているビルの地下にあり、条件は不利に見えますが、人通りが多く、駅に向かう人たちの流れがあるので、場所の利がありました。また、この店は居抜きですが、居抜きは効果的に使った方がいいと思っています。ひとつは、使えるものを最大限利用出来てエコだからです。もうひとつは、内装コストを掛けずに開業できるからです。お金を掛けたいのなら、利益を出してから。店は、長く続けることが大事です。
-ワイン居酒屋のオーナーでソムリエでもある藤森さんは、ワインのプロというイメージが強いのですが、実はお酒の中でもワインが一番苦手だったとか?
学生の頃からバーテンダーになりたいと思っていたので、20代の頃は街場やホテルでバーテンダーとして勤務していました。ある時バーテンダーとしての自分の将来に不安を感じるようになりました。自分のキャリアを振り返ってみて、バーテンダーとしてカクテルが作れてそれなりにお酒を知っている程度のレベルで、1つも他人に誇れる自分の強力な“武器”がありませんでした。
それからはバーテンダーの仕事を続けながら、3ヶ月くらいの間に、ビール、蒸留酒、日本酒に関する資格を次々に取得しました。ビール、日本酒と勉強してくると、その先にワインが見え隠れしてくる。バーテンダーは様々な酒類を幅広く知っていなくてはいけませんし、星の数ほどあるカクテルのレシピも記憶しなければならない。同じく星の数ほどあるワインは勉強することを無意識に避けていましたが、さすがに避けて通れないと思いました。
ですから僕のワインのスタートは、好きだったからというより、ソムリエの勉強をしようと思って飲み始めました。最初の頃、赤ワインは渋くて飲めず、シャンパーニュや白ワインは酸っぱくて飲めませんでした。初めて美味しいと思えたのは、ドイツの甘口の白ワインでした。
-苦手だったワインを克服しながら、ソムリエの勉強をするうちに、運命的な出会いがあったそうですね?
ソムリエの資格取得を目指していた頃、ワインのセミナーや勉強会を精力的に受講していました。その時に僕に目を止めて下さり気にかけて下さったのが日本のソムリエ界の重鎮で、現在は神楽坂にあるフレンチレストラン「ラリアンス」総支配人、勝山研二氏でした。声を掛けて頂き、色々なお話をお聞かせ下さり飲みにも連れて行っていただきました。その後、勝山氏から直筆の手紙を頂戴しました。そこには「男には、人生の中で3回ターニングポイントがある。君は、今そのターニングポイントにいると思う」と書いてありました。この手紙で僕はホテルを辞めてソムリエになる決心をしました。勝山氏は、ホテル勤務の僕が、バーテンダーからソムリエを目指すために転職する背中を押してくれた恩師です。
勝山氏の紹介もあり、今も師匠として大変尊敬する現・国際ソムリエ協会会長の田崎真也氏の下で働きながら勉強をし始めました。驚いたのは、田崎さんの下で働く人はみんなソムリエの資格を持っていたことです。事務担当の人まで、全員ソムリエ資格取得者でした。