「バーテンダーが向いている」と言われたのを機に、飲食業界へ
店を構えるのは、京王新線幡ヶ谷駅の北側、幡ヶ谷六号通り商店街から1本入った路地裏。界隈はカフェやカレー、ビストロなどジャンルを超えた“いい店”が多いことでも知られるエリアだ。「ラム専門なんてマニアックな店だから、表通りよりもちょっと裏にあるくらいがちょうどいいでしょう」と笑うオーナーの浅沼トール氏の前職は、意外なことに音楽家。23歳の頃、クライアントでもあったクリエイティブディレクターの某氏に、新しく開業する店でDJを担当してほしいと誘われたのをきっかけに、副業として始めたバーテンダーがいつしか本業になっていったという。
当初は、流行っていた日本酒や焼酎をはじめ、ワインやウイスキーなどひと通りの酒について学んではいたものの「バーのお酒は、実はアカデミックな世界。お客さんの方がよほど詳しいし、20代の若造がお客様に自信を持って語れることは何もなかったんです。ただし、ラム酒のことだけは誰も知らなかった。そこから少しずつラムを好んで飲むようになるうちに、詳しくなっていきました」と浅沼氏は話す。
順調だった音楽家としての活動をきっぱりと辞め、「LUG Hatagaya」で働き始めたのは31歳。この頃から世界中のラムを集めはじめる。「音楽の仕事も楽しかったし、はじめの頃は『お前はバーテンダーに向いているから』と言われてもまったく納得がいかなかったんですが、LUGに入る頃にはもう音楽には未練がなかった。バーテンダーの仕事の方が楽しくなっていたんです。そのとき、自分が思っている“自分像”よりも、他人の目に映る自分の方が正しいこともあるんだなと思ったんです」。
ラム酒専門バーの開業を視野に間借り営業やケータリング、イベント開催などを行いつつ、約3年間の準備期間を経て本格的に物件を探し始めたのは2021年2月。土地勘のある幡ヶ谷を中心に、代々木上原や代々木八幡、新宿、三軒茶屋などさまざまなエリアを探すが、最低条件として掲げていた「10坪以下、24時以降もアルコール提供可能」をクリアする物件は見つからない。「だったら自分の足で探すしかない、と。街を歩きながら、シャッターが閉まっている物件を見つけては近所の不動屋さんに話を聞いて……ということを繰り返しているうちに見つけたのがこの物件でした」。
いわゆるオーセンティックな“バー然”とした店にはしたくないとの思いから、内装づくりの参考にしたのはアイリッシュパブやフレンチカフェなど。壁の3面を柔らかなからし色に塗り、1面だけアクセントカラーの赤に塗って仕上げた。カジュアルさを演出しながらも、チープな印象にならないよう、家具やインテリアは上質なものにこだわった。店名のウートンとは、中国語で路地を意味する“胡同(フートン)”に由来。あえて“BAR”とはつけず、明治時代に実在した“ラムホール”から付けたという。「実際のラムホールはお酒ではなくて、砂糖水を飲ませる店だったらしいんですよ」と浅沼氏。
店舗データ
店名 | OOTONG RUM HALL(ウートン ラムホール) |
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住所 | 東京都渋谷区幡ヶ谷2-47-11 Taquchi-bldg1F |
アクセス | 幡ヶ谷駅から徒歩5分 |
電話 | 03-6762-5128 |
営業時間 | 18:00~26:00 |
定休日 | 日曜・祝日(祝前日の日曜は営業) |
坪数客数 | 約8坪12席 |
客単価 | 4000円 |
オープン日 | 2021年12月25日 |
関連リンク | OOTONG RUM HALL(FB) |
関連リンク | OOTONG RUM HALL(Instagram) |