クラフトビール業界に長年携わる2人が新たな業態を出店
「台湾火鍋 精醸啤酒 アクビ」(以下、アクビ)を運営するまるまる日和(東京都渋谷区)は、クラフトビール業界に長く携わる早坂歩美・山本恭士の両氏が共同創業した新しい企業だ。代表の早坂氏は学生時代に虎ノ門「デリリウムカフェ トーキョー」でのアルバイトをきっかけに海外ビールの魅力にハマり、以来アメリカやドイツビールを扱う店などで10年以上業界に携わってきた。2018年には道玄坂に北欧クラフトビール中心のビアバー「HABURASHI-BEER AND POTATO-」をオープンしている。取締役の山本氏は2年ほど映像関係の仕事に就いたのち飲食業にシフト。バーテンダーからスタートし、パブ、ビアバーなど幅広い業態で経験を積んできた。英国風パブチェーンの「HUB」では店長を務めた後、新店舗の立ち上げや人材育成に担当。退社後はHUB時代の同期とアイリッシュパブ「ザ ワールドエンド」、「麦酒と日本酒と蕎麦TOWA」の2店舗を上野に開業している。また、欧米のビールを輸入するAQベボリューションに入社しインポーターとしても経験を積んだ。2018年に個人で独立し神田に「KARAKURI」を開業。おでん中心の創作料理に加え、クラフトビールと日本酒は山本氏がセレクト、自然派ワインは山本氏の妻が担当している。
多角的な事業展開を見越し、仲間を増やすため会社設立を決意
個人でそれぞれの店を経営する早坂氏・山本氏がなぜ新会社を立ち上げたのか。山本氏は「今でこそクラフトビールの店が増えていますが、知り合ったのはまだ少なかった10年ほど前。意気投合し『いつか一緒に店をやろう』と話をしていたんです」と話す。しかしその後具体的に詰めていくと、北欧ビールを扱いたい早坂氏と、日本酒も扱いたい山本氏で方向性が分かれたため、いったんは各意向に沿った業態を開くことに。その後2年が経ち、早坂氏は「実際に経営者の立場になり、個人として事業展開していくには難しい局面も多々あると分かってきました。一緒に取り組んでくれる仲間を増やすため、会社を興そうと山本に声をかけたんです」と設立の経緯を語る。火鍋×クラフトビールを二本柱に据えた「アクビ」のコンセプトは早坂氏のアイデア。そのため今回の出店は早坂氏が中心となり、山本氏は出店サポートに従事する。
看板メニューは無添加・無化調にこだわった台湾火鍋と小皿料理
同店の看板メニューは白湯・麻辣湯の2色鍋(2800円)のスープをベースに、オプションとして具材セットやオリジナルのつけだれを注文する台湾火鍋。2色鍋のスープに好みの具材を足していき、少しずつ味が完成していく仕組みだ。具材の組み合わせ次第でも旨味の広がり方が変わっていく。
ベースの火鍋スープは、鶏ガラや手羽先、モミジなどと香味野菜を10時間以上かけて炊き上げる白湯と、鶏・豚のダブルスープに15種類以上の薬膳スパイスを加えた麻辣湯。麻辣湯は3種類から辛さも選べる。
具材はモヤシ、ネギ、ニンジン、紅心大根などが入る野菜セット(2人前1280円)や、鶏・豚・牛・ラムの「4種肉盛セット」(2人前2080円)など4種類を揃えるほか、「お一人様用鍋」や「具材セット」(各1500円)も用意。さらに味変として、白菜を塩だけで乳酸発酵させた「酸菜」(380円)を途中で白湯鍋に加え、発酵火鍋として楽しむアイデアを提案する。台湾流の火鍋の食べ方に合わせオリジナルのつけだれも4種考案。上に挙げた酸菜入りの火鍋にはニラたっぷりの「韮醤」(100円)を勧めており、台湾通のお客からも好評だという。
もともと台湾や香港で食べ歩きするほど火鍋が好きで、自宅でもよく作っていた早坂氏。「高級素材を使っているから美味しいという店もある一方、手頃な店では中華調味料がメインで、後からすごく喉が渇いたり翌日にむくんだりする場合もあります。自分の店で出すなら無化調・無添加で体に優しい味にこだわりたかった」と話す。その想いを受け、フレンチ出身の同店料理長・和田広記氏がイチから考案した。
その他、1人客でも注文しやすい小ポーションの小皿料理が充実。「老酒風味のよっぱらい鶏」(500円)や台湾由来のスパイスである馬告(マーガオ)入りの「パテドカンパーニュ」(500円)など、フレンチのエッセンスも入った台湾冷菜・温菜は20種以上から選べる。
タイフーブルーイングを含む10タップ、樽代わりでバラエティ豊かに提供
もうひとつの売りであるクラフトビールは、台湾のブルワリー「タイフーブルーイング」を主軸に10タップを備える。金柑を使った爽快な味わいの「Taihu Kumquat」(200ml/1100円、350ml/1300円、1pt/1500円)など5タップが「タイフーブルーイング」。残り5タップには、香港の「グワイロ」「カーボン ブルース」や、日本では神奈川「バーバリックワークス」、静岡「リパブリュー」などのブルワリーのものを樽代わりで提供。どれも生産者の人柄やブランドストーリーに共感したブルワリーを揃えており、どの樽をタップにつなぐかはスタッフに一任。バラエティに富むラインナップを心がけ、アルコール5%~8%を中心に、8~10%を置くこともあるという。
ドリンク類は他に、干支の名を付けた12種の台湾カクテルや、山本氏の妻が火鍋に合う銘柄をチョイスした自然派ワインが並ぶ。カクテルのイチオシは、若い梅の実を燻製にした「烏梅(ウバイ)」の自家製シロップで作るカクテル「寅」(780円)。梅の酸味にスモーキーさが加わり、独特な味が楽しめる。さらに自家製ジンジャーエールやクラフト薬膳コーラも作製中で、薬膳のさまざまな楽しみ方を発信していく予定だ。
スタッフの将来と可能性を鑑み、新たな事業にも着手
オープンからおよそ1ヶ月。木を基調とした空間に、白湯の白、麻辣湯の赤を刺し色に加えたポップな空間は女性も入店しやすく、現在の客層は女性7:男性3の割合。緊急事態宣言が明けた後は、飲食同業者が店を閉めた後でも訪れやすいよう深夜帯までオープンする予定だ。
まるまる日和では、「アクビ」運営の他、海外ビール輸入やクラフトビールの製造・販売、宿泊施設の運営など幅広い事業展開を行っていく。同業態を展開せず新たな分野に着手するのは好奇心旺盛な早坂・山本両氏の気質にもよるが、スタッフの将来や可能性を考えての構想でもある。「ひとつの店が合わなくても、異なる業態なら能力を発揮できる場合がある。誰もが楽しく働ける居場所を作りたいんです」と早坂氏。
「アクビ」というユニークな店名は「誰かがアクビをすると、周りにもうつっていく。感情の共感を示すサインでもあると言われている通り、幸せの連鎖反応を起こしたい」との由来。団らんに象徴される鍋料理を介して、誰もが笑顔になるような店づくりを目指すという。
店舗データ
店名 | 台湾火鍋 精醸啤酒 アクビ |
---|---|
住所 | 東京都渋谷区猿楽町2-13 F93daikanyama 1F |
アクセス | JR渋谷駅南口から徒歩7分、東急東横線代官山駅から徒歩10分 |
電話 | 03-6433-7987 |
営業時間 | 17:00〜24:00(※緊急事態宣言中は12:00~20:00) |
定休日 | 不定休 |
坪数客数 | 21坪28席(カウンター6席、テーブル22席) |
客単価 | 5000~6000円 |
運営会社 | 株式会社まるまる日和 |
オープン日 | 2021年2月12日 |
関連リンク | 台湾火鍋 精醸啤酒 アクビ(Instagram) |