出産・育児を機に、デザイナーの傍ら日本酒バー経営に乗り出す
西荻窪駅からJR中央線沿いに進んで徒歩5分の場所にオープンした「へなちょこ」は、週末だけ開く日本酒バー。オーナーの篠山可南子氏は、グラフィックや映像関係のデザイナーを本職としており、飲食に関しては専門外だったという。「出産・育児を経験し、このままデザインの仕事だけを続けていくことは難しいと感じ、何か新しいことに挑戦したいと考えていました。もともと日本酒は大好きで、いつか日本酒専門店を開けたら、とチャンスを探っていました」と篠山氏。あるとき、懇意にしている酒販店に相談したところ紹介されたのが、現在、同店で店主を務める森 礼奈氏だ。
森氏は、以前は大学受験予備校で働いていたが、結婚・出産を機に退職。子どもの授乳期間が終わったタイミングで、「純米酒専門店YATA 新宿三丁目店」でアルバイトを開始。育児と両立しながら週末に勤務し、日本酒を学んでいた。子育て中という同じ境遇もあって、森氏と篠山氏は意気投合。森氏に負担のない週末限定のかたちで、日本酒バーを開くこととなった。
場所は篠山氏や森氏が通いやすい場所を考え、中央線沿いの阿佐ヶ谷~西荻窪周辺で探した。飲食経験がないため、なかなか物件取得に至らずに時間がかかってしまったというが、11坪ほどの同物件を契約。地元の人が通る生活路沿いののどかな場所で、元は電機店だった場所。スケルトン状態から店を作り上げた。
多くの人が楽しめる幅広い日本酒の品揃え。日曜18時からは「飲みきりタイム」
メニューはもちろん日本酒が主役だ。「純米酒専門店YATA」では5年ほど経験を積んできた森氏がセレクトする。週替わりの冷蔵酒や、常温酒を合わせて約20品をラインナップし、1杯90mlを600~900円で提供。一部45mlで900円などの高級ラインも用意。「多くの人にも楽しんでもらえるよう、味わいは偏らず幅広く選んでいます」と森氏。冷蔵用日本酒は、発泡の銘柄が必ず1品あることに加え、選ぶ際には、爽やか系、薫り系、芳醇系、高級ラインのカテゴリに分けて、それぞれ2品ずつをチョイス。オーダー時は、お客の好みや気分に応じてコミュニケーションを取りながら提案する。土曜・日曜の週末のみの営業のため、「一度開栓した冷蔵酒は、酒質の強いものを除いて翌週に持ちこしたくない」(森氏)と、仕入れたその週で提供しきれるよう、日曜の18時からは「飲みきりタイム」として量を多めに注ぐサービスを実施している。
日本酒を引き立たせるアテも、10品少々を週替わりで用意。取材時は、「ゆで鶏ムネ肉としょうゆ麹添え」(600円)、「炙りからすみ一切れ」(600円)、「チーズ2種」(500円)など。耐熱ガラス瓶に入った、「サーモンクリームチーズ クラッカー添え」(400円)や、「瓶づめ湯豆腐」(500円)などの「瓶づめおつまみ」シリーズは、あらかじめ瓶に入れておくことで、オーダー後にすぐ提供できるオペレーションの負担を考えた品々で、見た目にも可愛らしく好評だ。
自身の経験から、子連れ歓迎の店づくりを意識
店内はカウンター5席に、窓際のベンチ席、奥には個室風の小上がりを用意している。壁際のカウンターで立ち飲みも可能だ。「回転率よりも、ゆっくりと日本酒を楽しんでほしい」(篠山氏)と、テーブルはゆとりをもった広さにしている。トイレにはおむつ交換台とチェンジングシートも設置し、通路はベビーカーが通れる幅に設計している。「自分が子育てに追われていた時、昼から子連れで入れるお店が欲しかったという思いをかたちにしました」と篠山氏と森氏は声を揃える。13時オープンにしているのは、昼飲み需要の獲得以上に、子連れの入りやすさを考えてのことだ。子ども用の食べ物も持ち込みOKで、子育て中の人もほっと一息つける店を目指している。
狙い通り、早い時間帯は子ども連れも入り交じり、それ以外にも、近隣の人が通りがかりに立ち寄ったり、SNSで同店を知った日本酒好きが遠方から来店したりと、順調な滑り出し。今後は平日の営業形態も模索中。メニューをブラッシュアップし、店の認知度向上にも努めていきたい考えだ。
店舗データ
店名 | へなちょこ |
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住所 | 東京都杉並区西荻北2-1-8 |
アクセス | 西荻窪駅から徒歩5分 |
電話 | 050-7120-8644 |
営業時間 | 13:00〜22:00(LO21:00) |
定休日 | 月~金 |
坪数客数 | 11坪12席+スタンディング数名 |
客単価 | 3000円 |
オープン日 | 2020年2月22日 |
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