動画制作の道から一転。大学在籍中に独立を決意
オーナーの安藝氏は京都の立命館大学 映像学部出身。当初はCMや番組制作など動画関係の職を志し、広告代理店でのインターンも経験したという。転機は3回生のとき。友人に連れられ、京都の居酒屋「日本一学生を応援する居酒屋 ここでのめ!」を訪れたのがはじまりだ。「いつのまにか店員が隣に座って、酒を飲んでいる不思議な店でした。店にいる人が楽しそうで、体育会系ノリの飲食店でアルバイトしていた私には衝撃的でした。好奇心が湧いて、すぐにアルバイトとして雇ってもらいました」と同氏。同時期に広告代理店の関係者から「何を目的にCMや番組制作がしたいのか。動画制作がしたいなら、YouTubeでもいい」とアドバイスを受け、自身の目標と手段に立ち返った。「動画制作はあくまでメッセージを伝える手段だと知りました。こうして将来を考えるうちに、飲食店を立ち上げ、身近な人を幸せにしていくのが向いていると考えたんです」と同氏。
第一次産業と飲食業の魅力を発信するYouTuberと飲食店アルバイト。二足のわらじで奮闘
卒業後は、自分の知らない世界を知りたいとの想いで、世界一周の旅に挑戦。フランス、スペイン、ヨーロッパを中心に17カ国を渡り歩いた。「スコットランドのウイスキー蒸溜所で職人たちの情熱に感動し、トルコのレストランで働き、飲食が繋げる人の温かさを学びました」と同氏。これを原動力とし、帰国後すぐに「ゆとり会議室」のYoutubeアカウントを立ち上げ、ゆとり世代から日本を変えるバラエティとして動画配信を開始。”2019年に居酒屋をはじめるフリーター・ニート”というキャッチフレーズで、第一次産業と飲食業の魅力を発信してきた。並行して、お酒の知識を深めるため、祇園の名店といわれるバーなど飲食店で修行を積んだ。
”自己投資=ゆとり”の時間を過ごせる酒場を目指す
店名は”幸せを何かと考える会議室”という意味合いで名付けられた。同氏は「私たちは”ゆとり”と揶揄されることも多い世代。ゆとり教育は、自分のやりたいことに熱中したり、家族や仲間とつながりを深める、ゆとりある時間を自己投資に使う教育方針だったと理解しています。同世代でまだ目標がなくくすぶっている人にこそ、うちの店でゆとりある時間を過ごしてもらって、色んな人に出会って、新しい道を開いてほしい」と話す。店ではコミュニケーションを重視。異業種交流会などのイベントも企画し、自己実現へ向けた時間が過ごせる未来の酒場作りを目指した。
全てDIY!内装費用は50万円
同氏が京都から上京してきたのは、開業の2ヶ月前。東京に店を構えたのは、関西よりも自身のメッセージが拡散されやすいと考えたためだ。物件探しの条件は、社会人が集まるエリア、コの字カウンターが設置できる物件、控えめな家賃の3つ。「条件に見合う物件を絞り込んだところ、東京で3箇所しかなく、そのうちのひとつの学芸大学に来てみたら、駅周辺の酒場はお客さんとスタッフの距離が近く、私のやりたいコミュニケーション重視の接客をしている店が多かったんです」と同氏。学芸大学エリアは、店の構想や客層とマッチすると考え、契約に至った。
店内は11坪14席。ネパール料理店の居抜きで、内装はクラウドファンディングで募った内装費50万を使い、床や壁などすべてをDIYで仕上げた。厨房はそのままで、カウンターや棚は手作り。店内の圧迫感をなくし、外からでも様子が伺えるよう、入り口横の壁をくり抜いて窓を作ったというから驚きだ。
名物はピンチョス。修行店のキラーメニューも
料理開発は安藝氏と、イタリアン、スパニッシュバルで働いた経歴をもつ料理人ののすけ氏が担当。毎日のように通える店を目指し、おつまみからご飯ものまでを揃える。料理のジャンルはあえて絞らず、安藝氏がこれまでに刺激を受けた料理をラインナップ。名物はスペインのサンセバスチャンで刺激を受けたピンチョス。定番の「パン・コン・トマテ」、「生ハムとピスト」、「ローストポーク」(各280円)など、9種類。また、修業先だった「ここでのめ!」キラーメニューの大根の天ぷらをアレンジした「大根のフリットとポルチーニ茸のクリームソース」(680円)、新メニューの牡蠣のコンフィに素揚げにしたケールをのせた「自家製牡蠣のコンフィ〜ケールに抱かれて〜」(880円)、「馬肉のコロッケ」(380円)なども人気だ。「ムール貝のクリームリゾット」(980円)「ハッシュドビーフの一口ハヤシライス」(680円)など、〆料理や晩御飯になるメニューもあり、流行前からメニュー化を決めていた「自家製バスクチーズケーキ」(680円)などデザートまで揃う。
ウイスキー、日本酒、ワイン、サワーにこだわり、作り手の情熱を伝える
ドリンクは、ウイスキー、日本酒、ワイン、サワーのそれぞれにこだわる。「お酒を売る人間として、職人の情熱をお客様にを伝える責任があると考えています。リスペクトを込め、第一次産業を盛り上げていくのが、飲食店の使命の一つだなと」(安藝氏)。中でも自身が得意とするウイスキーは力を入れている。銘柄は46種類ほど揃え、スコッチを中心に1杯480円から3380円の価格で提供する。お客にウイスキーの楽しみ方を提案するため、3種類を自由に選べる「ウイスキー飲み比べセット」(1280円)や、A4一枚に各銘柄の特徴や歴史解説する資料も用意する。
日本酒は”滋賀の日本酒が今アツい”と銘打って、滋賀県の酒蔵をメインに用意。安藝氏おすすめの福井弥平商店の「萩の露 純米大吟醸黒ラベル」(1580円)、「萩の露 葵つぶらか」(1280円)、笑四季酒造の「センセーション黒 おりがらみ」、「恋をするたびに 最終話」(各880)の4種類は常時置く。ワインは、完全無農薬の自然派ワインセレクトした、かない屋のマキコレ・ワインのみを仕入れ、赤、白、泡を各4種類ほどラインナップ。グラスは880円から、ボトルは4800円から提供する。サワーは「氷彩サワー」(380円)の他に、グレイグースのウォッカを使用した「グレイグースオリジナルカスタムサワー」を用意。ベースがスタンダード、オレンジ、シトロン、洋梨の4種類から選べ、シロップやレモン、ライムの有り無しを自由に選べる。また、「コーヒー」(380円)も京都の「珈琲焙煎所 旅の音」のコーヒー豆を使用する。ドリンクメニューにはそれぞれの酒の解説も書かれており、注文するだけで知識につながるメニュー構成となっている。
今後について、安藝氏は「スペインバルなの?と聞かれることも多いので、居酒屋らしいメニューを増やしたい」と話す。居酒屋とバー、両方の側面を持つ店になり、色んなシーンで利用してもらうのが理想だという。店での勉強会や交流会のイベントも随時企画中だ。
また、次に展開する事業は飲食店に限らない。「最初は自分の好きな飲食業を選びましたが、私は人を幸せにしていくのが最終目標なので、必ずしも飲食店を立ち上げるだけが手段ではありません」と安藝氏らしいビジョンを語った。
店舗データ
店名 | Pinchos y Whisky ゆとり会議室 |
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住所 | 東京都目黒区鷹番3-12-3 真田ビル 1F |
アクセス | 学芸大学駅から徒歩3分 |
電話 | 080-6121-8427 |
営業時間 | ランチ11:30~15:30、ディナー17:00〜0:00 |
定休日 | 年中無休 |
坪数客数 | 11坪14席 |
客単価 | 2000~4000円 |
オープン日 | 2019年11月3日 |
関連リンク | Pinchos y Whisky ゆとり会議室 (HP) |
関連リンク | Pinchos y Whisky ゆとり会議室 (Instagram) |
関連リンク | ゆとり会議室(YouTube) |