小田急線の豪徳寺エリア。世田谷線山下駅とも重なるエリアだが、商店街や住宅街が広がるのどかな場所だ。そんな豪徳寺エリアに2018年11月、「ketoku(ケトク)」がオープンした。店主の松岡悠氏は、三軒茶屋を代表するワインの名店「uguisu(ウグイス)」で、10年にわたって勤務し、シェフも務めた人物だ。カフェやワインバルのような洒落た店がまえとは裏腹に「実はこの店のテーマは居酒屋なんです」と話す松岡氏。「uguisu」仕込みのビストロ料理に、酒場テイストを絶妙に織り交ぜた料理、サワーやビール、焼酎、日本酒、ワインまでの「なんでもあり」なドリンクラインナップが楽しめる、進化系居酒屋だ。さっそく近隣住民を中心に話題となっている。
独立を目指して10年修業。小さな店で多くを吸収
松岡氏が本格的に料理の仕事を始めたのは11年前、25歳のとき。漠然と「将来は自分の店を」という思いを抱き、修業先として選んだのが「uguisu」だ。「今となっては自然派ワインの名店として知られる『uguisu』ですが、当時はまだオーナーとスタッフの2人で回している小ぢんまりしたお店でした。規模の小さな店なら、接客、料理、経営などあらゆることを直に学べると思い、働くことにしました」と松岡氏は話す。それから、系列の西荻窪「organ(オルガン)」も含め、約10年にわたって勤務。接客から調理まで幅広く携わり、最後の6年間はシェフとして腕を振るった。開業のための資金が貯まり、松岡氏自身も「独立に足りるスキルや心構えが身に付いた」と思えるようになったことから退職し、開業準備に取り掛かった。
1人営業を前提にした立地選び、“住宅街の入口”もポイント
およそ1年かけて物件を探し、巡り合ったのがこの豪徳寺の物件だ。「物件はいろいろなエリアを見ましたが、一人で営業しようと考えていたので、三軒茶屋など酒場激戦区でスピード感が要求されるような場所は避けました。豪徳寺は商店街や住宅街があってのんびりとした雰囲気。真面目な仕事を続ければ評価してもらえるのではないか、と感じてここに決めました」。
さらに重視したのが、“住宅街の入口であること”だ。同店は駅から徒歩1分と至近ながらも、後方には住宅地が広がる。「長年働いた『uguisu』も、住宅街の入口に立地していた。その経験から、家に帰る前の人と、その街の外から来る人の両方が取り込めるというイメージがあったのも決め手です」。
ビストロベースに居酒屋要素を散りばめ、“ズレ”を表現
メニューは常時20品前後。「イカの塩辛 コブミカンの香り」(400円)、「梅味味玉、鯖の生ハム、じゃが芋 バジルマヨネーズ」(700円)、「仔羊のカツレツ いちじくみそディップ」(1200円)、「キャラウェイシードの豚まん」(400円)などが揃う。「目指すのは、フレンチ、ビストロ風と思わせながらも、ひそかに居酒屋テイストの素材や技法を織り交ぜ、ギャップあるメニュー。そこに生じる微細な“ズレ”を楽しんでほしい。言うならば、“非日常の中の日常”、でしょうか」と松岡氏。
ドリンクはサワーからビール、ワイン、日本酒、焼酎など、居酒屋的な垣根のないラインアップ。「サッポロラガー中瓶」(600円)から瓶のクラフトビールが各種、「レモンサワー」(600円)、焼酎は「芋 大和桜」「黒糖 まんこい」(各種500円)、ウイスキーは「角」(そと200円、なか400円)など。日本酒はグラス600円、一合900円、ワインはグラス700円~で、そのときどきで銘柄を用意。ビール、日本酒は店内の一角にあるショーケースからお客がセルフで取り出すラフなスタイルだ。
一人営業で自らのセンスを存分に表現、「ずっとある居酒屋」を目指して
「この店を『ずっとある居酒屋』と思ってもらえるよう、長く続く店にしていきたい」と松岡氏。当分は松岡氏一人で店を切り盛りしていく予定だ。「自分のイメージや想いを自由に表現したくて、あえて人は雇わず一人で営業しようと決めました」と松岡氏。居心地の良い空間、松岡氏の直実な人柄の現れた料理や接客、さらにゆったりとした時間の流れる豪徳寺という立地、これらのピースがぴったりとはまって完成した「ketoku」は、松岡氏が自らを表現をすべく作り上げたステージ。末永く愛される居酒屋になるべく第一歩を踏み出したばかりだ。
店舗データ
店名 | ketoku(ケトク) |
---|---|
住所 | 東京都世田谷区宮坂2-26-4豪徳寺コーポラス1F |
アクセス | 豪徳寺駅、山下駅から徒歩1分 |
電話 | 03-6413-7569 |
営業時間 | 17:00-24:00 |
定休日 | 日曜 |
坪数客数 | 10坪16席 |
客単価 | 3000~5000円 |
オープン日 | 2018年11月16日 |
関連リンク | ketoku(FB) |
関連リンク | ketoku(Instagram) |