- 渋谷宇田川町、いわゆる「奥渋谷」エリアにある「㐂宵(きよい)」は、常時40~50種類をそろえる日本酒と素朴な家庭料理が楽しめる、粋な小料理屋だ。近隣で働く40代~50代の男性を中心に、遠方から目的を持って訪れる日本酒好きまで、夜な夜な多くの人でにぎわいを見せている。2017年9月に開業し、翌年5月に、2人の女将が日替わりで立つスタイルにてリニューアルオープンを果たした。
代表の村井優梨氏は現在29歳、一児の母として店の経営と育児の両立に奮闘中だ。村井氏は美容師を経て2012年12月、23歳のときに飲食業に転身。独立を目標に、スペイン料理店にダイニングカフェ、ワインバルの3つのアルバイトを掛け持ちし、経験を積んだ。その後、知人の紹介で、現在の「㐂宵」が入居することとなるビルの2階にある「酒処さくら」にて働きはじめる。そして2013年12月には「酒処さくら」の女将として店を切り盛りし、4年間ほど営業を続けた。
自身が妊娠したことなどをきっかけに、2017年4月に「酒処さくら」の経営からは離れた村井氏。出産後の開業に向けて移転先を探していたところ、ちょうど同じビル1階のこの物件が空くタイミングが重なった。馴染みの場所であることから、ここで新たな店を開業することを決意。妊娠中に開業準備を進め、出産から3週間後に、「㐂宵」(開業時の店名は「㐂なり」)をオープンさせた。
産後まもないため、当時は週2回ほどの営業だった同店。「当初は、知り合いや『酒処さくら』時代の常連さんが集まる、こぢんまりした店にできればいいと思っていました」と村井氏は振り返る。しかし、人通りの多い奥渋谷エリア、1階の路面の好立地ということで、「より多くのお客を取り込むべき」と周囲からのアドバイスを受けて方向転換。まずは営業日数を増やそうとスタッフを探していたところ、常連の紹介で出会ったのが、現在、女将を務める関友美氏だ。普段は日本酒ライターとして活動し、多くの酒蔵を訪れるなどして日本酒の造詣が深い。飲食店での接客経験もあり、同店の女将として恰好の人物だった。こうして、村井氏と関氏が週に各2~3日ずつ日替わりで店に立つスタイルを確立させ、営業日数は週4~5日に増やすことになった。
ドリンクは日本酒がメイン。村井氏と関氏でセレクトした全国各地の酒が常時40~50種類そろう。「2人とも日本酒の好みがまったく違うので、2人で選ぶことで全体のバランスがよいラインアップになります(笑)。私はフルーティで甘口、ワインのような味わいが好き。友美さん(関氏)は、燗酒やお米の旨味を感じられるお酒が好み。とくに兵庫県など西日本のお酒推しで、訪れたことのある蔵のお酒など、思い入れのあるお酒も多くセレクトします」と村井氏。料理は村井氏が担当。和のおばんざいを日替わりで15品ほど用意。小料理屋らしく、カウンター上の大皿に盛ってディスプレイする。レギュラー商品の「牛すじの煮込」(800円)や、取材時は「手作り 揚げ出汁豆腐」(600円)、「イタリア系 茄子の素揚げ」(500円)などを用意。季節の素材を使いながら、日本酒に合う、ほっこりした家庭料理がそろう。
関氏が店に立つようになり、客層がぐっと広がったという。メインの客層だった40代~50代の男性客に加え、口コミを聞いた日本酒好きが遠方から目掛けて来店するようになり、以前は少なかった若年層や女性客の姿も目立つという。女将との会話を楽しみに、一人で訪れるお客も多い。「最初は友美さんに会いに来ていたお客さまが、私が立つ日にも来てくれるようになったりと、人ではなくお店そのものにお客さまが定着していることが嬉しいですね」と村井氏。「今後もさらに店の営業日を増やすのが目標。女将として立ってくれる人を募集中です!(笑)」とも話す。
渋谷の雑踏から少々離れた、あたたかなこの場所で、今日も多くのお客が思い思いに日本酒を楽しみながら、日々の疲れを癒す。さながら奥渋谷のオアシスだ。
店舗データ
店名 | 㐂宵(きよい) |
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住所 | 東京都渋谷区宇田川町36-16PLAZAマリーナビル103 |
アクセス | 渋谷駅から徒歩7分 |
電話 | 03-6427-0748 |
営業時間 | 17:30~23:00(LO22:30) |
定休日 | 土日+不定休 |
坪数客数 | 7坪13席 |
客単価 | 5000円(一軒目利用) |
オープン日 | 2017年9月17日(リニューアル2018年5月25日) |
関連リンク | 㐂宵(FB) |