吉祥寺でおしゃれなカフェや雑貨店が並ぶ「中道通り」をかなり奥まで進んだ、ひっそりとしたエリアに7月18日、イタリアンバール「egna(エーニャ)」がオープンした。店名はイタリア北部にある、ごく小さな村の名前から取った。立地や店名そのままに、「ワイン好きの大人が、奥まった隠れ家のように通える店にしたい」というコンセプトが込められている。「egna」の運営母体は、兵庫にある輸入雑貨専門商社だ。現オーナーが、もともと新宿御苑で人気の自然派ワインビストロ「カスミストア」でシェフをしていた佐藤圭介氏の味に惚れ込み、物件を探しながら佐藤氏を引き抜いて、「egna」の開業を実現させた。オープンから2カ月経った現在では、狙い通りワイン好きの女性客を中心に、近隣に住むシニアの夫婦など落ち着いた年齢層が、静かに通い詰める地元の人気店となりつつある。
天気のよい日は正面のガラス戸が開け放たれて、テラス席が現れる。アンティークの家具が並んだシックな内観は、道を歩いているだけで自然と目に止まる。次に見えるのが、店の中央にある広く開放的なオープンキッチンだ。
料理はイタリアンをベースとした、炭火焼メニューとワインに合うアンティパストを提供する。佐藤氏は「エノテカ・ドォーロ」(半蔵門)をはじめ、都内の有名リストランテで20年以上のキャリアを積んできた。塩の使用を極力おさえ、食材本来の旨味と持ち味を引き出した、体に優しいメニューが特徴だ。
アルコールはワインが中心。佐藤シェフの繊細な料理に合わせ、農薬や化学肥料を控えたぶどうで造るナチュール(自然派)ワインを、世界中から各種取りそろえる。前職の「カスミストア」をはじめ、長らくワインにも携わってきた佐藤氏だが、3年前から「重たすぎず、しかし旨味が口の中でじわっと広がる」ナチュールワインの魅力に取りつかれ、自身でセレクトしたワインを並べている。
おすすめのマリアージュは「2種のレバー盛り合わせ」(850円)と、スペインの白ワイン「カサ・ベナサル・ビアンコ」(ボトル3,700円)だ。華やかな香りながらドライでさっぱりした飲み口のゲヴェルツトラミネール(ぶどう品種)が、レバーペーストと合う。また「大山どり胸肉の低温調理」(680円)と京都・丹羽産のスパークリングワイン「てぐみ」(グラス850円/ボトル3,800円)も、自家製の鶏ハムと微発泡の国産ワインで、ぴったりの組み合わせだ。
料理は前菜のほか、パスタも「ボローニャ風ミートソース トルテッリ」(1,480円)、「サルディーニャ産カラスミたっぷりペペロンチーノ スパゲッティ」(1,400円)、「和牛ホホ肉の白ワイン煮込みソース ほうれん草のスペッツェレ」(1,580円)などイタリアの郷土料理を踏襲した本格的なメニューが並ぶ。要望があれば乾麺を提供できるが、基本は手打ちパスタにこだわり、イタリア料理に詳しいお客にも好評だという。
「おいしい、とお客さまに言っていただくのはごく普通のレベルだと思っています。そこからさらに期待を上回るおいしさ、繰り返し食べたくなる味を生み出し、常にご提供したいです」と佐藤氏。さらなる技術の向上を目指し、帰宅後は疲れていても毎晩イタリア料理の専門書を必ず読み返し、過去に作った料理を記憶の中で復習するなど、ブラッシュアップに努めている。
またサービス面でも、微差の違いにこだわり「他店で当たり前にやっていることの、その先を追求しよう」とスタッフに言い聞かせている。今後は引き続き、「家の近所にありながら非日常で特別な体験ができる場所」を目指したい、と話す佐藤氏。
「オープンから現在まで特に告知はしていなかったものの、リピーターのお客さまも付き、次のフェーズに入る時期だと思っています。まずはスタッフを増やし、定休日もなくして年末年始以外いつでも使っていただけるようにしたい。そして現状は僕が料理とサービスを両方見ていますが、将来的には僕に代わるスタッフもきちんと育てて、『egna』という店のブランド自体をしっかりと作り上げていきたいです」(佐藤氏)
店舗データ
店名 | egna(エーニャ) |
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住所 | 東京都武蔵野市吉祥寺本町4-7-2 1F |
アクセス | JR線中央・総武線、京王井の頭線 吉祥寺駅から徒歩10分 |
電話 | 0422-27-6268 |
営業時間 | 15:00〜23:00(炭火焼メニューL.O. 21:30、その他フードメニューL.O. 22:00、ドリンクL.O. 22:30) |
定休日 | 不定休 |
坪数客数 | 20坪 32席(テラス席4席含む) |
客単価 | 6000円 |
オープン日 | 2019年7月18日 |