赤坂の繁華街のなかに佇む、築70年ほどの古民家。かつては置家だったというここに、4月13日、和食と燗酒がウリの「酒亭赤坂かねさく」が開業した。同店は、1981年創業の和食居酒屋「神田新八」などを展開するエヌイーフーズ(東京都千代田区)のオーナー・佐久間丈陽氏と、「金子屋」「大衆イタリアンかね子」など繁盛居酒屋を手掛けるGCCP(東京都新宿区)の代表取締役・金子和央氏がタッグを組んで、運営会社として佐久金(東京都中央区、代表取締役:佐久間丈陽氏)を設立し、オープンさせた店だ。
「もともと金子さんとは5年ほど前からの知り合いで、いつか2人で一緒に何かできれば、と考えていました」と佐久間氏は話す。2017年9月ごろに金子氏がこの物件と巡り合ったことが開業のきっかけだ。2階建ての一軒家で、広さは各フロア10坪ずつ。木のあたたかみが古民家ならではの風合いを醸すこの場所で、飲食業界で注目の経営者である2人の手腕を生かした店づくりが始まった。
商品は主に佐久間氏が担当。ドリンクは「神田新八」グループの得意とする日本酒、とくに燗酒が目玉だ。「この店に限らず、“燗酒の追求”というのが私のテーマ。燗酒を司る『お燗番』として、日本酒の温度帯によって変化する燗酒の魅力を、お客さまに知ってもらいたい」と佐久間氏。蔵元で熟成期間を経て出荷された純米酒を、湯に漬けて一本一本、ベストタイミングで提供する。これまでの店舗経営のなかで蔵元とのつながりを培ってきた佐久間氏が、親交のある蔵元から厳選した日本酒ばかりをそろえており、埼玉の神亀酒造の酒を筆頭に、燗酒は約20品(150ml、780~1380円)、また冷酒は約20品(150ml、780~1480円)を用意する。ほか、同様に温度や注ぎ方にこだわった焼酎の湯割りや自然派ワインなどをそろえる。
一方、料理については、「『神田新八』の料理をベースに、海鮮をメインとした、本格的でありながらも遊び心を加えた和食を用意しました」と佐久間氏。名物の全長30cmもある、能登直送ののどぐろの「特上のどぐろ塩焼き(煮つけ)」(9500円)をはじめとした品々がそろう。「久留米直送馬刺し」(1180円)や、千葉県成田市周辺で生産された無農薬の「三里塚ワンパック野菜」を使った「和風バーニャカウダ」(980円)のように産直素材を多く取り入れ、調味料も厳選したものを使用。無化調であることもポリシーだ。
店内設計は、主に金子氏が担当。飲食店のほか、店舗や住居の設計デザインも手掛けるGCCPのノウハウが生かされている。同店は、1階と2階で利用用途を分け、ひとつの店内で2つの表情を見せる空間づくりが特徴だ。1階にオープンキッチンを置き、テーブル席を配置。ビジネスマンの会社帰りの会食など、気軽な利用を促す。2階はテーブルごとに仕切りを付けた個室を2室設え、接待向けの空間としている。「ターゲットは赤坂のビジネスマンですが、1階と2階でそれぞれ異なる利用ニーズに対応します」と金子氏は話す。「赤坂には外資系企業も多く、和を感じる古民家は海外からのゲストの接待にも喜ばれるはず」とも。客単価は1階が5000~7000円、2階は12000円を想定している。
「当店を通じて赤坂の地で日本酒、とりわけ燗酒の魅力を広めていきたい」と佐久間氏は意気込む。金子氏も、「佐久間さんからは日本酒をはじめとするさまざまな知識を学び、刺激を受けています。これからも2人で互いの得意分野を掛け合わせた事業を仕掛けていけたら」と話す。現在も2者で新たな事業計画が進行中という。今後の展開にも注目だ。