「炉端焼き一歩一歩」など北千住を中心に9店舗の飲食店を手掛ける一歩一歩(東京都足立区、代表取締役:大谷順一氏)と、20年にわたり海産物の卸売り業を展開してきたかいせい物産(東京都中央区、代表取締役:宮崎成人氏)がタッグを組んで居酒屋を開業した。それが4月2日、門前仲町にオープンした「〇魚(まるっと)」だ。2014年に発足した「もったいないプロジェクト」の理念に基づいた同店。「海の恵みを“まるっと”提供する」をコンセプトに、2社の持つノウハウを掛け合わせ、今までにないかたちで魚の魅力を伝える業態だ。
かいせい物産では、日々、多くの海産物を扱うなかで発生する一般に流通できない品、いわゆる「もったいない魚」の活用方法に悩んでいた。「ポーションが小さい魚や、殻が欠けてしまった貝など、品質には問題がないものの引き取り手がない商品をなんとかおいしく食べてほしいという思いがありました。それらの魚を使った飲食店を開業しようと考えたものの、私たちは飲食店の運営については専門外。そんな折、数々の繁盛店を展開する一歩一歩の大谷社長と意気投合したことで、ともに開業計画を始動させました」と、かいせい物産代表の宮崎氏は話す。一方で、大谷氏にとっても同店の開業には大きなメリットがあった。「かいせい物産の長年培ってきた目利きにより仕入れる『もったいない魚』は、従来では考えられないような大胆な使い方ができる。たとえば、時季外れという理由で『もったいない魚』になった高級魚のハモ。大胆にフライにしてパンに挟んでサンドイッチにしました。こんなことができるのも、『もったいない魚』だからこそ。新たな調理法の開拓ができるのがありがたいですね」と大谷氏は話す。
どんな魚が「もったいない魚」として店に配送されるのかは当日にしかわからない。その日に届いた魚を、その日のうちに調理法を決めなくてはならないことが、この業態の難しさだ。しかし、これまで数々の魚業態を手掛けてきた一歩一歩だからこそ、そのハイレベルな調理ノウハウによって、規格外の魚をその日のうちに魅力的な商品へと仕立てることを可能にしている。その日ごとの「もったいない魚」は、主に「本日の焼魚」「本日のフライ」(時価、780円~1280円)などの日替わりメニューとして調理。規格外の魚ということがあり、量やクオリティに対して価格は驚くほどリーズナブルに設定される。「お刺身!7点盛」は、その日の鮮魚7点をぜいたくに桶盛りにし、場合によってはウニが1箱入ることもあるという。これを2480円という他店では考えられない破格で提供するから驚きだ。加えてグランドメニューとしては「マグロの血合い 竜田揚げ」(480円)、「ゲソの天ぷら」(480円)など、通常スポットが当たりにくい魚の部位や素材を活用したメニューを中心に約40品そろえ、とことん魚を堪能できるラインアップとなっている。
ドリンクは、魚に合わせて用意した日本酒が目玉。「満寿泉」「菊姫の姫」など、通常はその蔵元のある都道府県外には流通しない銘柄を計5品そろえ、こぼれグラス500円均一で提供する。そのほか、サワーやハイボール、ビールなどが充実。「たくさんの人に魚を味わってほしいというのがこの店の大前提。メインターゲットは30代~40代ですが、幅広く集客したい。とくに女性や若い世代の人にも来てもらうための施策として、レモンサワーのバリエーションを出したり、見た目にもインパクトのあるドリンクもそろえています」と大谷氏。その一例が、スパイシーな「レモンピリピリ山椒ドライサワー」(450円)や、お客の目の前で抹茶を立てて注ぐ「南山園 金の抹茶ハイ」(480円)などだ。
「今後も同業態の展開ができれば」と宮崎氏。ただし、店舗展開をするにしろ、目的はあくまで「もったいない魚」の有効活用。「同じ魚を同じメニューで出すのでは本末転倒。規格外で少量ずつ余っている魚を、店舗ごとに調理して付加価値を高めることがこの業態のミッションですからね。そこに従来の魚業態にはない難しさがあり、面白さがあります」と大谷氏は話す。飲食業界のみならず、水産業にとっても大きな意義を持つ同店。新たなビジネスモデルとして、飲食業界の内外問わず期待が高まっている。
店舗データ
店名 | ○魚(まるっと) |
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住所 | 東京都江東区富岡1-25-4 |
アクセス | 門前仲町駅2番出口から徒歩3分 |
電話 | 03-5875-8557 |
営業時間 | 16:00~23:00 |
定休日 | 日曜 |
坪数客数 | 22坪39席 |
客単価 | 3700円 |
運営会社 | 株式会社一歩一歩 |
オープン日 | 2018年4月2日 |
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