国際的な観光地・浅草。国際通りの複合商業施設「浅草ROX」の隣という賑やかな立地に、2017年10月11日「とりビアー」の新業態「水炊き 豊満(とよみつ)」がオープンした。とりビアーは「鶏とビールがうまい店」というキャッチコピーを掲げ、都内に直営・FC合わせて13店舗を展開中。自社工場より空輸する宮崎県産若鶏で、新たなコンテンツ「水炊き」に挑む。運営を任された統括店長の木村国治氏はプレッシャーを感じつつも、浅草という地域特性を活かした店作りに邁進中だ。
親会社であるエビス商事は宮崎県内で2番目の規模を誇る食肉加工・販売会社。約280もの鶏舎を抱え、若鶏を中心に霧島鶏、高原ハーブどりを1日におよそ85,000羽加工する。2009年、東京進出1号店として三軒茶屋に「とりビアー」を出店。皿盛りの焼き鳥が評判となり順調に客足を増やしてきた。自社工場で加工処理からパーツ分けまで一貫し、完全チルドの状態で翌日には店舗に空輸。お客様に提供されるまで人の手に触れる回数を最低限にすることで新鮮さを実現する。そんな魅力ある商材を、ここでは水炊きに活用するのである。
店はなんと外貨両替所と建物をシェア。これは出店の経緯と関係している。「おつき合いのある両替業者が出店することになった物件。前テナントが割烹料理店でした。『うちは2、3坪で足りるし、キッチンが使えるから一緒に使いませんか?』と持ち掛けられたのがきっかけです。当初は『とりビアー』での出店を考えていましたが、スペースが狭くダクトも増設できない。そこで水炊きだ! となったわけです。客席の熱源も家庭用IHクッキングパネルにしたため、店も初期投資はミニマムです」と笑う木村氏。両替所併設で外国人旅行者が多い立地ながら「インバウンド需要はまったく考えていません」と潔い。
それもそのはず、店作りのコンセプトは「隠れ家感」。両替所の看板は派手だが「水炊き 豊満」の看板は民家の表札よりも小さい。「一度来たら印象に残り、誰かに話したくなるような店にしたいと思っています」とのこと。水炊きは名だたる老舗や高級店こそあれど、関東ではまだなじみが薄い。ライバルは多くないうえ、鶏の味と価格には自信がある。ボリュームたっぷりでコスパ重視の水炊きを提供すれば勝機ありと確信した。「大事なのはこの地で長く続けられる店作り。浅草に有名店は多いですが、地元の方からは『観光客向けの味や店構えになってしまっている店が多く残念だ』という声もあります。我々が目指すところは、この地で商売をさせていただくうえで近隣の方々、地元の方々を第一にすることです。時流に乗った宣伝はせず、地元で愛されるお店にしたいと考えています」と木村氏。ビジネスゆえ数字は大事だが、店として、飲食人として人とのつながりを大事にしたいという想いは会社トップとも共通の認識である。
料理はいたってシンプル。「水炊き鍋」はモモ肉、つくね、薬味2品がついて2人前3800円。鶏肉は1人前総重量300グラムでなかなかのボリュームだ。いずれは海外にてハラルフードとしての展開することも視野に入れているため、すべて無化調。ポン酢も自家製。鍋の追加メニューとして、もも肉、むね肉、つくね(各500円)、野菜セット(300円)を用意。水炊きの締めの料理として「地獄炊きそうめん」か「雑炊」が各500円。一品料理も鶏尽くしで、「とりわさ」(500円)、「鶏レバにら」(600円)、「ももたたき」(600円)など。
水炊き鍋は単品で満腹になる量のため、現在コース料理は設けていないが、今後の宴会需要を見込んで飲み放題つきで4500円のメニューを考案中。ドリンクについては課題があり、ミニマムな店舗の都合上サーバーが設置できないためビールは瓶での提供となっている。だが、これをマイナス要素とせず、水炊きに合わせて同じ九州の焼酎の拡充に努めるつもりだという。
新店舗の運営は、会社より木村氏にすべて一任されている。自由に店作りをする楽しさもあるが、もちろんプレッシャーもある。だが、当初の狙い通りに口コミ効果で地元客の来店が増え、オープン1か月弱で手応えを感じている。ここでしっかり実績を積んだら、ゆくゆくは銀座や赤坂といった一等地でも勝負したいという未来予想図も描きはじめたというから頼もしい限りだ。
店舗データ
店名 | 水炊き 豊満 |
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住所 | 東京都台東区浅草1-24-7 |
アクセス | つくばエクスプレス線浅草駅から徒歩1分 |
電話 | 03-5246-4405 |
営業時間 | 【月~日】16:00~23:30 |
定休日 | 無休 |
坪数客数 | 約9坪・19席 |
客単価 | 3500円 |
運営会社 | 株式会社とりビアー |
オープン日 | 2017年10月11日 |
関連リンク | 株式会社とりビアー(HP) |