JR大森駅のほど近くに7月9日、昭和の大衆酒場をイメージした甲殻類の料理がウリの「東京シェル石魚(トウキョウシェルフィッシュ)」が開業した。オーナーは田丸商店の田丸実氏。1995年にワーキングホリデーで海外へ渡り、現在、バンクーバー、トロント、シアトルで居酒屋や定食屋など日本のテイストを打ち出した飲食店を6店舗展開する人物だ。田丸氏にとって日本初出店となる「東京シェル石魚」は、田丸商店が海外で育てた日本の居酒屋ブランドを、いわば“逆輸入”したかたちとなる店舗。今回、日本で出店した狙いについて、同店の店長の春原雅俊氏はこう話す。「田丸商店のサービスを日本でも多くの人に届けたいということはもちろんですが、代表の田丸がワーキングホリデー経験者だけあり、田丸商店ではワーキングホリデーをしている人の支援をしています。その拠点となる場所を日本にも作るべく、当店を開業したんです」。海外の田丸商店の店舗では、ワーキングホリデーで来た日本人をスタッフとして積極的に受け入れ、現地での働き口を提供するなどのサポートを行っている。例えば、ワーキングホリデー希望者は、まず「東京シェル石魚」で働いて資金を貯め、それから海外へ渡って現地の系列店で働くことも可能。グループ店のためノウハウを共有しており、即戦力として活躍することができるので、双方にとってメリットになる。このようにしてワーキングホリデー支援のネットワークを強化したい考えだ。「当店もスタッフの多くはワーキングホリデー経験者。ワーキングホリデーに興味のある人は、気軽に飲みに来がてら相談に来てほしいですね」と春原氏は話す。
店内はミッドセンチュリーを基調とした中に、アイドルのブロマイドやラジカセ、公衆電話など昭和を感じさせるアイテムを随所に散りばめた。BGMには昭和の歌謡曲を流し、ノルスタジックな雰囲気を演出。95年に海外に渡って以来、バンクーバー在住の田丸氏にとって、彼が知る日本のイメージである80年代の雰囲気を再現している。「当時を知る50代以上の方にはなつかしさを、若い方には『ネオレトロ』として新鮮さを訴求し、楽しんでもらえたら」と春原氏。
同店のウリは甲殻類を使用した料理。季節ごとに産地を選んで仕入れる生牡蠣や、刺身盛り合わせなどの日替わりメニューに加え、「牡蠣のおかん鍋焼き」(842円)、「いろんな貝のワイン蒸し」(1058円)などが人気を博す。伊勢海老一匹を丸ごと使用した「伊勢海老のアクアパッツア」(1598円)は、原価率は90%のキラーコンテンツともいえる一品だ。このほか、貝の出汁を使ったおでん、海外店舗で人気の「SHUSI」と銘打ったロール寿司、サラダや揚げ物などをラインアップする。
ドリンクはジンベースのものをイチオシとして、「梅ジントニック」「柚子ジントニック」などを用意。「レモンサワー」(以上、各レギュラー540円、ハイオク756円)もジンベースだ。このほか、ワインやビール、ハイボール、日本酒などをそろえ、焼酎やウイスキーのボトルキープも可能となっている。
中でも同店で特筆すべき特徴は、店内の一角に設置されたセルフサービスのコーナー。焼酎の「キンミヤ」、日本酒「タツリキ」、ドライジンの「ボンベイ」の3台の自動販売機を用意し、お客が硬貨を投入してセルフでコップに注ぐ。その横には9種の割り材を用意するほか、「明太子ポテトサラダ」、「漬け物盛り合わせ」などすぐに食べられる日替わり総菜を置くショーケースを設置。これらは備え付けの貯金箱に代金を入れてセルフで手に取る仕組みになっている。自動販売機の酒は「タツリキ」が200円、ほか2種が100円、割り材は各200円、総菜は各300円と、いずれも通常のテーブルサービスのメニューよりも手頃な価格設定で、遊び心のある演出となっている。
現在、平日は会社員、休日は近隣住民を中心に集客し、男女比は7対3で男性が多い。今後は常連客を増やし、地域の隠れ家的コミュニティーの役割も担いたいと考える。集客をより伸ばし、カウンターの席を取り払ってスタンディングとして収容人数を増やすのも目標のひとつだ。グループとしても、今後も世界で店舗展開を検討中。グループ内での人材の流れを作り、国内外にネットワークを形成したい考えだ。
店舗データ
店名 | 東京シェル石魚(トウキョウシェルフィッシュ) |
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住所 | 東京都大田区山王2-3-8 大森ビル2階 |
アクセス | JR大森駅から徒歩3分 |
電話 | 03-3775-8855 |
営業時間 | 17:00~24:00 |
定休日 | 無休 |
坪数客数 | 30坪37席 |
客単価 | 3000円 |
運営会社 | 田丸商店株式会社 |
オープン日 | 2017年7月9日 |
関連リンク | 東京シェル石魚(FB) |