目黒駅、権助坂の路地を入った場所に4月1日オープンした「ANOTHER8」(酒八 京都府京都市 代表取締役大東赳彦)は日本酒、クラフトビールを思い思いに自由なスタイルで楽しむことを形にした新しいポジションのバルだ。日本のクラフトを代表する日本酒を京都・東京から世界のスタンダードとして発信していくという大東氏が描くビジョンの基にはじまったプロジェクトのファーストステージを担う店である。
目黒駅西口から山手通りに向かう坂道、権助坂から一歩入った路地にはマンションが建ち並び、表通りの喧噪からは想像できないほど静寂だ。そんな路地でシルバーフレームのガラスのファサードは一見ギャラリーのようなスタイリッシュな存在感を放つ。そのガラス戸の向こう、壁にアートのように並ぶ8本のアルミ製のクラフトビールのタップと木肌の優しい家具が透けて見えている。扉を引けば手前はハイテーブルやベンチの気軽なセッティング。奥はゆったりと寛ぎのソファー席がセッティングされた空間は元ガレージだったという。流れる音楽のリズムに揺られ、会話も行き交うなかで味わうクラフトビールや日本酒の造り手達のマインドまでもが一体化するような自由で伸びやかな環境は新しい飲食スタイルを体感させる。ただ飲食をするだけの場ではなく居心地のいい場=バイブスを楽しむ場であるのだ。
オーナー大東氏がまったく縁のなかった飲食ビジネスをはじめたのは家業を継承することに由来する。自身で6代目となるが遡ること先先代前まで琵琶湖湖東の地域守山で酒造りを行っていた蔵元「酒八」をルーツにした同社は「酒八」ブランドの再構築と酒蔵を再開し、さらに飲食業から製造業までを進めていくという。そこには日本酒の美味しさと継承される日本クラフトの素晴らしさを世界へ発信し、世界のスタンダードにするという大きなビジョンがあるからだ。その具体化のためのファーストステージが飲食店であり、すでに先に地元京都の町家を改装した「BEFORE9」がオープンしている。今回オープンした目黒の「ANOTEHER8」は2号店となる。
店に入るとまずは8種類のクラフトビール、日本酒を選びその場で支払いをするキャッシュオンスタイルから始まる。国産を主に外国産合をわせ「TODY’S TAPS」とした8種類のクラフトビールはサイズが(S700円M850円L1200円)の3種類。その折々で厳選する日本酒は京都の「澤屋 まつもと 守破離」など8種類(650円〜)で爽やかなタイプから熟成タイプまでバランス良く揃えている。ほかはソフトドリンクのみとシンプルで明快な品揃えだ。「スモーク卵のポテトサラダ」(600円)、「上州牛の薫製牛たたき」(1350円)とファサードに置かれた薫製機でスモークした自家製スモーク料理を自慢としたフードはクラフトビールと日本酒どちらにも限定しないことを意識した揃えだ。「ラタトゥイユ」(550円)、「フィッシュ&チップス」(1000円)、「ブルドポークチリビーンズナチョス」(800円)の洋テイスト。「豆腐と茄子の揚げ出し」(700円)、「若鶏の唐揚げ 甘辛山椒風味」(700円)といった和風のテイストも揃える。その日のおすすめ料理も加え、軽い一品からボリュームのある一品までを提供する。
クラフトマインドと音楽シーンをコラボレーションする新しい飲食店、次世代の飲食シーンのあり方を具体的に形にしながら先のビジョンに向け始動する同社。日本酒を日本に留まらずに世界のスタンダードとする新しいステージは真逆のようでありながら日本酒蔵を守り、日本酒文化を次世代に継承することになると考える。大東氏の繊細で斬新な飲食ビジネスの取り組みに今後も目が離せない。
店舗データ
店名 | ANOTHER8 |
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住所 | 東京都目黒区下目黒1-2-18横河ビルヂング101 |
アクセス | 目黒駅から徒歩3分 |
電話 | 03-6417-9158 |
営業時間 | 17:00〜25:00 |
定休日 | 火曜 |
坪数客数 | 20坪・30席 |
客単価 | 2000〜3000円 |
オープン日 | 2017年4月1日 |