駅前には大手チェーンの飲食店が進出する一方、少し歩くと昭和を感じされる大衆酒場や立ち飲み店、スナックなどがひしめく。新小岩駅周辺は、まるで昭和と平成が交錯したようなエリアとして知られている。そうした特徴を持つ新小岩駅に3月12日オープンしたのが「京都 炭焼浪漫家」だ。運営するのは、浪漫家グループ(京都府京都市、代表取締役社長 福井将一氏)で、本社がある京都を中心に「串だいにんぐ炭焼浪漫家」や「とり匠 ふく井」、「お野菜と串Bar 炭焼 ろまん家」といったブランドの展開を行う。東京進出一号店となる同店では、京都の食文化を発信していくため「京都」の二文字を店名に入れて勝負に挑む。
東京進出の地に新小岩を選んだ理由について、代表の福井氏は「うちの店がある京都の伏見区と同じ雰囲気を感じたからです。情が深くて、下町気質に溢れている。そんな土地柄だからこそ、私たちの接客方法や店舗コンセプトなどが受け入れられると思って、出店を決意しました」と語る。氏が話す同店のコンセプトは“大人が楽しめる酒場”だ。建物も京都町屋風にして、風格を感じさせる造りに仕上げている。施工を担当したのはアッシュ(東京都中央区、代表取締役 五野上征司氏)で、飲食店を手掛けた豊富な実績を活かしながら、京都の店まで視察に訪れて徹底的に作り込んだ。スタッフも京都から呼び寄せているため、店内では京言葉が飛び交う。そうした空間を最大限楽しんでもらうため、「京都弁講座」という冊子を設置して、遊び心ある演出も行っている。
そもそも福井氏が飲食業界に飛び込んだのは、21歳のころ。当時、すでに将来は社長になろうと決めていたという。決断の背景にあるのが父親の存在だ。氏が小学校3年生のころ、父親が染工場を立ち上げて社長になった。その姿を見て、かっこいいと感じると同時に、いつかは自分も社長になろうと決心する。しかし、それまで医療器械を製造・販売する会社や中央市場の青果卸などで働いており、飲食の経験はない。そこで株式会社店舗事業センター(京都市下京区、代表者 上田伸二郎氏)が運営する「炭焼やきとり一番」の門を叩く。FCに加盟した後は、赤字店の立て直しを実現するなどして、店舗も4つまで拡大させる。やがて本社の研修を任されるようになり、幹部へ出世していくコースも開けたが、氏は新しいフィールドへ飛び立つ。このまま同じことをしていてもワクワクできないから、と。そして「この店に来て、マスターの顔を見ると元気がもらえる」という客の言葉に導かれて、35歳のころに「浪漫家グループ」を創業。オリジナルブランドを立ち上げて、京都で知らない人はいない飲食店をいくつも作り上げた。
同店のキラーコンテンツは、さつま知覧鶏を使用した「さつま黒焼き」と「京おばんざい」だ。さつま知覧鶏とは、450日という長期飼育された鶏で、抜群の歯ごたえとコクのある甘味といった特徴を持つ。同店では、それを店舗でさばいて、新鮮なうちに調理して提供を行う。「さつま黒焼き」のメニューは、「もも黒焼き」(850円/モモクロZ 1350円)や「むね黒焼き」(850円/大 1350円)、「二種盛り黒焼き」(1100円)、「ミックス黒焼き」(1100円)などが並ぶ。また、「自慢の京おばんざい」(380円)は「三種」(680円)と「五種」(980円)、「八種」(1480円)がラインアップされており、京都独自の食文化を体感できるメニューとあって人気を集めている。この他にも、薄口でコクがある味わいの「京都の肉じゃが」(380円)や醤油などの調味料がいらない「濃厚恋豆腐」(380円)、京都から直に仕入れた九条ねぎを使う「京都九条ネギ 鶏味噌ぞえ」(480円)。そして店で鶏を捌いているからこそ提供できる「知覧どり希少部位のたたき」(1200円)といったメニューも見逃せない。ドリンクの中心は、京都と滋賀の蔵元から仕入れている日本酒だ。「飲み比べセット3種」(880円)をはじめ、「月桂冠 伝匠 純米吟醸」や「英勲 吟醸」、「玉川 人喰い岩 本醸造」、「浪乃音 純米」、「喜楽長 辛口純米」(いずれも一合750円)と幅広く揃う。なお、「奄美大島黒糖焼酎ツバス」(400円)を注文すると、売上の一部を福祉施設に寄付できる取り組みなども行っている。
今後のビジョンについて、福井氏はこのように語る。「東京のマーケットは京都に比べると、とてつもなく大きいので魅力的に感じています。しかし、出店はあくまでも人ありきです。これまでもうちのビジョンに共感するスタッフと一緒になって成長してきました。だからこそ、これからも人を大切にしながら、東京での展開を考えていきたいですね」。同社の経営理念には「笑売」という言葉があり、それを体現するかのようにスタッフは賑わいを演出して、客を楽しませている。福井氏のDNAが末端まで浸透した浪漫家グループが、東京のマーケットを席巻する日も近い。
店舗データ
店名 | 京都 炭焼浪漫家 |
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住所 | 東京都葛飾区新小岩2-7-2 |
アクセス | JR新小岩駅から徒歩3分 |
電話 | 03-5879-2510 |
営業時間 | 17:00~25:00(L.O 24:00) |
定休日 | 不定休 |
坪数客数 | 25坪・45席 |
客単価 | 4000円 |
運営会社 | 有限会社浪漫家グループ |
オープン日 | 2017年3月12日 |
関連リンク | 浪漫家グループ(HP) |