新旧さまざまな飲食店が賑わいを見せる、五反田駅西側。その裏路地で、2016年12月19日にオープンしたのが「大衆酒場Lily」だ。店主は、楽コーポレーションのDNAを受け継ぐ「よだれ屋」グループ(YDR、代表取締役 大村孝雄氏)で6年半勤めた矢ケ崎寛氏。「元々大衆酒場をやりたいと考えていましたが、まずは大箱で宴会ニーズをとろうと2012年10月、東五反田の『KUSHIYAKI & WINE Lily』で独立しました」(矢ケ崎氏)。独立店は串焼きとワインを主力に、客単価4000円の業態としてオープンし、連日満席を記録する繁盛店へと成長している。2号店となる「大衆酒場Lily」は、8坪15席の狭小店にお客がひしめき合う酒場という独立時から描いていた業態を実現させたかたちだ。
一方、五反田駅西側には競合となる大衆酒場が多い。そこで矢ケ崎氏がコンセプトの一つに掲げたのが“女性が一人で来られる店”だ。ポイントはスタッフとの会話ができるカウンターメインの空間であること、そしてメニューのほとんどをマメ皿100円〜提供できるようにしたこと。また、カウンターに設けられた“どぶ漬け”から好きな割材(ドリンク)を取り、セルフでドリンクが作れるのも特徴だ。駄菓子屋感覚で好きな割材を選ぶことで、一人客でも楽しんでもらえるようにしている。「どぶ漬けは、いろいろな大衆酒場をベンチマークして設置しました。多くのお店が氷水で冷やすのですが、意外とコストがかかる。そのため水冷のウォーターバスケットを、カウンターに合わせて特注で入れました」(矢ケ崎氏)。
フードメニューは全44品で、価格レンジは100円〜790円と3桁に抑えている。看板として打ち出すのは「骨付チキン」680円。昆布茶やガーリックなどの調味液に漬けた鶏モモ肉を、ツーオーダーで揚げる。モモ肉を食べて残ったたれは、「塩おにぎり」180円をつけて食べるのがおすすめだ。オーダー率ほぼ100%を記録するのが2種の「ポテサラ」。「クリームチーズたくあんポテサラ」は、白ワインを隠し味に入れることで、女性からの支持を集める。一方、酒のアテとなる「岩のり塩辛ポテサラ」は、男性客から好評だ。また、おでんは通年オンメニューする予定で、1ネタ120円。ネタは築地で有名な「佃権」から毎日仕入れ、関東風のだしで提供する。「おでん」「鶏水炊き」「牛肉豆腐」はカウンター上で加熱しており、器の大きさに応じて180円〜580円で提供。少しだけ食べたいニーズをキャッチする。「大衆酒場人気から、そうしたお店に行くのに抵抗のない女性も増えたと思います。それでもまだ行きにくいという女性が『Lilyならいいよね』と言ってくれるのが理想です」と矢ケ崎氏は話す。
アルコールは「金宮ボトル」780円、「宝焼酎ボトル」830円が主力。これに青リンゴやうめ、トニックなどの割材各200円を入れて楽しむスタイルだ。お客は自分の好きな濃さが調整できる楽しみがあり、店側はドリンクを作る作業を減らすことができる利点がある。また日本酒にも力を入れており、西小山の「地酒専門創り酒屋 かがた屋」から仕入れる。旬の日本酒を中心に常時10種を用意し、1杯120mlで680円均一とお値打ち価格に設定。客単価は2500円と、毎日でも通える価格で推移する。
飲食店が建ち並び、人が集まる一等立地にあるものの、店の場所は表通りから完全に死角の二等物件。それでも口コミで徐々にお客を集め、現在では近隣で働く30〜40代の会社員を中心に集客し、すでに立ち客が出るほど人気が高まっている。「五反田では3軒まで広げたいですね。次は串焼きと大衆ドリンクのお店を考えています」と矢ケ崎氏は話した。
店舗データ
店名 | 大衆酒場Lily |
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住所 | 東京都品川区西五反田2-10-8 ドルミ五反田ドゥメゾン102 |
アクセス | JR五反田駅 西口より徒歩4分 |
電話 | 03-3494-7977 |
営業時間 | 17:00~23:30 |
定休日 | 不定休 |
坪数客数 | 8坪・15席 |
客単価 | 2500円 |