大勢の人で賑わい、どこか懐かしさを感じる中野は「庶民的な街」のイメージが強いが、再開発後は駅前が一新したことでお洒落な飲食店も多くなった。伝統的なものと新しいものが混じり合うこの街は、新しいカルチャーにも寛容だ。中野駅北口を出てサンモール商店街の一画に、9月20日、“新感覚の鶏バル”をコンセプトに掲げる「丸鶏FUJI」がオープンした。経営は、Planter(東京都港区、代表取締役 冨士田俊洋氏)。代表の冨士田氏いわく「もともと鶏料理とお酒を合わせるのが好きだったんです。いろいろ他のお店もまわっていると、『鶏の丸焼き』が人気だな、って感じたんですよね。そこで、鶏メインのバルにチャレンジしてみようと思いつきました」。もともと純喫茶だった物件を居抜きで借り上げ、アイリッシュ感溢れる内装へと一変した店内は、気軽に使えるバルとして男女問わず幅広い年齢層が集まる場所だ。
「何かしらの形で独立したい」と考えていた冨士田氏は、25歳のときに飲食業界へと一歩を踏み出す。アントレストが経営する海鮮炉端の居酒屋「さくらさく」で業務委託として店長などを経験したのち、自社で運営する飲食店として「飛騨産直食堂おりんち」と「酒場ふじ」をそれぞれ虎ノ門にオープンしている。「各店舗ごと、時流に合わせてコンセプトを変えています。たとえば、2店舗目のときは産直ブームだったので、僕が生まれた地域の飛騨地鶏と地酒をメインにしました」。店舗を増やすに従い、冨士田氏の中では飲食に対する考え方に変化もあったという。「ひと目見て、『メインの食材は何なのか?』と扱っている食材が分かりやすくないとお客様には響かない。だから、できるだけメニューは分かりやすくお客様に提示して、他の店に埋もれない工夫をしています」。店名にも、その思いは反映されている。何をコンセプトとしているのか一目で分かるように、「丸鶏」の文字と冨士田氏の「FUJI」をかけ合わせた。
同店の目玉は、大山鶏のひな鳥を使用した「丸鶏の素揚げ(ハーフ)」と「ローストチキン(ハーフ)」(各1380円)だ。「唐揚げ」か「ロースト」どちらかの調理方法に限定する店が多い中、同店では鶏に特別な下準備をすることで、両方の調理ができるメニューを考えだした。そうすることでドリンクと合わせて鶏の調理方法を選べる。「ビールやサワー系ドリンクであれば唐揚げ、ワインであればローストが合います。2種類の調理方法を用意することで、今回は素揚げが美味しかったから次回はローストチキンを食べてみよう、と再来店していただける動機にもつながります」。さらに、同店ではワインボトルを2000円代から用意し、「トリュフとモッツァレラのマッシュポテト」(780円)など原価のかかるメニューを比較的手の届きやすい価格で提供している。「やはりお客様には、安くてたくさん食べられるメニューが喜ばれます。うちで提供している料理はレストランと変わらない質のものばかりですが、企業努力や赤字覚悟で安く提供できるんです」。凍らせたフルーツを入れたサワードリンク「FUJIレモン」や「FUJIグレープフルーツ」(各500円)なども1杯目から美味しく飲んでもらえるようにと、ドリンクの中に入れるフレーバーの調合を工夫しているそうだ。壁の黒板には来店するたびに楽しめるメニューがずらりと並び、食事する気分を高めてくれる。
冨士田氏は、「今後もフランチャイズで展開できる業態をつくりたい」と意欲的だ。そのためには、食材としてよく使われる鶏を使いながら、同店をさらにブラッシュアップさせたいという。「メニューが少ない店は難しくなります。しかしいずれは、いろんなメニューがある店ではなく、『これしかないんだけど』と人の心を打つメニューだけで勝負できるような店をつくってみたいんです。極限まで無駄なものを削ぎ落として、良い部分だけ肉付けできる店が理想ですね」。冨士田氏のその想いは、鶏の半身をメインとして打ち出したメニューのラインナップにも現れている。新しいカルチャーを歓迎するこの街で、冨士田氏の挑戦は続く。
店舗データ
店名 | 丸鶏FUJI |
---|---|
住所 | 東京都中野区中野5-56-11 白百合ビル 1F |
アクセス | JR中野駅より徒歩4分 |
電話 | 03-5942-6212 |
営業時間 | 11:30〜14:30 (L.O 14:00)、17:00〜23:30 (L.O 23:00) |
定休日 | なし |
坪数客数 | 14坪・32席 |
客単価 | 3000~4000円 |
運営会社 | 株式会社Planter |