食通が足を運ぶ街、麻布十番。たった0.2㎢の中に大衆酒場から看板を掲げないお忍び店まで、200軒超もの飲食店が軒を連ねる。そんな食の街に8月25日、串揚げと串焼きの店「いいとeat ikkai」がオープンした。同店を手がけるのは、渋谷「食幹」や広尾「小野木」、麻布十番「いいと」など都内に和食店を4軒展開するディスカバリー(東京都港区、代表取締役 佐藤幹氏)だ。
「型にはまらず、和食に楽しく向き合いたい」と代表の佐藤幹氏。新店オープンにあたり、同社として2つの新たなチャレンジを課した。まずは店舗デザイン。新店では、「食幹」や「小野木」に見られる堂々たるカウンターを使わず、列車の連結に着想を得た可動式の杉材テーブルをお客が囲むようなスタイルを選択。客同士の距離が近い親しみのある空間を実現する一方、随所にエジソンランプやアイアンなどインダストリアルな要素を効かせ、ハイセンスなネオ酒場感を演出した。
続いて、立地。今回、グループ初となる路面店で、かつ鮨店「いいとeat」の真上に開店した狙いを佐藤氏はこう話す。「『いいとeat』は魚、『いいとeat ikkai』は肉がメイン。2軒でひとつの“施設“のようなイメージです。海外のレストランにあるウェイティングバーのように、下で食事する前に上で軽く飲む、といった使い方にも挑戦したかったんですよね」。それに伴い、客単価もこれまで得意としてきた1万円から4,000円へと大幅にカジュアルダウン。
中学生の頃から台所に立っていたという佐藤氏。本格的に和食の世界に身を投じたのは19歳のときだった。「なだ万」や「吉兆」など名だたる料亭で研鑽を積み、2006年冬、ディスカバリーを設立するとともに自身の名を冠した1号店「食幹」をオープンさせる。「僕の芯は和食にある」と話す氏。和食を土俵としながらもお客に新たな発見を供するボーダーレスな世界観は、全店に通じる同社の身上だ。「異国の文化のハンバーガーやワインと違い、和食に関しては日本人なら少なからずこだわりがあると思うんです。枝豆ひとつとっても、茹でたてがいい人もいれば、少し置いて全体に塩が回った方がいい人もいる。その中でどうやってお客さんの心に刺さるものを作るか。とくに麻布十番は食の好みがはっきりしている方が多い街なので、厳しい反面、悩み甲斐がありますね」と意気込みを見せる。
品書きに載る料理は、酒場の定番「オニオンスライス」(400円)や「ポテトサラダ」(500円)などのつまみに始まり、「鮎」に「原木椎茸」、「牛メンチ」など12種類もの串揚げが1本300円から、9種類の串焼きが400円から楽しめる。正統派をきっちり押さえつつ、「牛肉と生雲丹」の太巻き(1500円)といった遊び心が見え隠れするものも。
酒もあらゆる要望に応える揃えだ。まず日本酒は「新政 エクリュ」や「日高見 超辛口純米」、「花巴 山廃純米無濾過生原酒」など全国各地から厳選した13種類をいずれも600円(90ml)で提供。ワインは幅広い産地でグラス650円から16種類を用意する。
「まだまだ和食でやってみたいことがたくさんあるんです。先日、スペインでバルを見てきたのですが、これをたとえばおばんざい屋のシステムと交差させたら面白いんじゃないかと思いました。和食という枠の中で僕らのフィルターを通して何が生み出せるか。会社をレーベルだとしたら、お店は個性的なバンド。今後も人を育てながら業態開発に取り組みたいですね」と佐藤氏は展望を語る。地に足を着けたまま、古典にモダンを重ねることは容易ではない。しかし、氏は単なるディフュージョンで満足するような人物ではなく、むしろ、産みの苦しみを楽しんでいるようにさえ見える。次なる仕掛けには、どんなディスカバリー(発見)があるのだろうか。
店舗データ
店名 | いいと eat ikkai(いいと いっかい) |
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住所 | 東京都港区麻布十番1-6-3 テラス麻布十番1階 |
アクセス | 東京メトロ南北線、都営大江戸線 麻布十番駅から徒歩2分 |
電話 | 03-6447-0195 |
営業時間 | 平日 ランチ 11:30〜15:00(L.O 14:00)、ディナー 17:30-24:00(L.O 23:00) 土日祝 15:00〜24:00(L.O 23:00) |
定休日 | なし |
坪数客数 | 25坪(うちテラス8坪)・スタンディング |
客単価 | 4000〜6000円 |
運営会社 | 株式会社ディスカバリー |
関連リンク | いいと eat ikkai(FB) |
関連リンク | いいと eat ikkai(HP) |
関連リンク | ディスカバリー(HP) |