「東急東横線祐天寺駅が最寄り駅。上目黒小学校の裏手、目黒区五本木の住宅街にある看板のない古民家レストラン」といえば、食のアンテナ感度が高い人であれば思い浮かぶ場所。2015年10月1日、ここに3度目の業態転換を経て誕生したのが4人以上のグループ客限定利用の完全予約制レストラン「スーソマヤジフ」だ。この場所のこの建物にこだわり続けるのは、ユニークなコンセプト展開で半歩先の食探しをするイイコ(東京都目黒区、代表:横山貴子氏)の女社長・横山貴子氏である。同氏は、これまでも「外食=非日常の空間で味わう体験を提供すること」をテーマに、女性らしい視点で“発酵食文化”や“ジンギスカン”など、“美容と健康”にこだわった尖ったコンセプトで数々の外食ブームを仕掛けてきた。
横山氏は、今回の業態転換の理由を「外食の原点に立ち返り、自分が考える外食の楽しさを表現したら山盛り料理とセルフサービスの店になりました」と話す。同店のコンセプトは、みんなでわいわいとお腹いっぱいおいしい料理を食べること。そのコンセプトは大皿大盛りの「おまかせコース5000円」のみという、潔くも挑戦的に体現されている。気のおけない仲間と楽しんでもらい、おいしいものをしっかりと食べてもらいたいと用意される全5品のコース料理は、フレンチ出身のシェフ・野島二郎氏が手掛ける。瓶詰めにしたカラフルな自家製ソースとともに、料理は直径40cm以上ある巨大なパエリア鍋に大盛りという、斬新な発想と強烈なインパクトで提供される。
最初に出てくる料理は、緑色のソース(ほうれん草ベース)をかける「サラダ」。次いで、白いソース(ヨーグルトベース)で食べる「ムール貝」。「お肉」には、大皿に鎮座する塊肉に黒いソース(胡椒ベース)。「お米」には、オレンジ色のソース(ムール貝のだしベース)で仕上げるパエリア。最後に「おまけ」のデザ—トへと続く。ここを訪れたお客の誰もが、テーブルに運ばれる大きな鍋に歓声を上げ、瓶詰めのソースが目の前で贅沢なほどにかけられる姿にシャッターを切るのだ。ひと皿の重量はサラダが1kg、ムール貝は2kgある。この重量をみんなでわいわいと取り分けて楽しむ提供スタイル故に、必然的に4人以上のグループ客という縛りがでてくるのは納得だ。そして、この大皿料理をみんなで取り分ける一体感こそが、ここにしかないコミュニケーションの醍醐味でもある。
ドリンクは、「セルフサービス」スタイルを採用する。お客は、ビールにワイン、日本酒と、ひと通り揃った店内の冷蔵庫とワインセラーから自分の飲みたいものを選び、飲みたいタイミングで好きなだけ飲む。「持論ですが、お客様の会話を遮ってまで行うサービスは過剰ではないかと思っています。無駄なサービスを省き、必要なサービスのみを提供することが、お客様が楽しいと感じられるサービスであり、結果的に人件費やサービス料を抑えることとなり、お客様に還元できるのです」と横山氏。セルフサービススタイルも利用客から「楽しい」と好評だという。
「スーソマヤジフのお料理はソースが中心です。食材をひきたてるためのソースではなく、ソースを摂取することを目的としています。スタッフと会話をするなかで、私が何気なく言ったひと言。これをみんながかたちにしてくれました。けっして、私がひとりで考えたお店ではありません。スタッフを信じて任せることができるようになってからは、自分が経営者だからと全てを行うのではなく、自分の得意なことだけに注力できるようになりました」と横山氏。店にとって最大の味方である“リピーター”を生み出し、話題を呼ぶ店をつくる横山氏の感性と探究心が、わざわざ足を運ぶこの場所でまた光を放っている。
店舗データ
店名 | スーソマヤジフ |
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住所 | 東京都目黒区五本木1-6-3 |
アクセス | 東急東横線「祐天寺駅」から徒歩5分 |
電話 | 完全予約制 080-9415-9111(3日前までに要予約) |
営業時間 | 18:00〜23:00 |
定休日 | 不定休 |
坪数客数 | 20坪・30席 |
客単価 | 6500円 |
運営会社 | 株式会社イイコ |
関連リンク | イイコ(HP) |
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